【編集長取材手記】大成する人の人生心得帖——ファンケル池森賢二×ドトールコーヒー鳥羽博道

~本記事は月刊『致知』2025年1月号 特集「万事修養」掲載対談の取材手記です~

30年来の親友、立志伝中の名経営者が初めて語り合う

共に昭和12年生まれの87歳、若き日に資金も人脈もない徒手空拳から志を抱いて事業を興し、一代で日本を代表する企業へと導いてきた二人の立志伝中の人物がいます。

ファンケル名誉相談役・ファウンダーの池森賢二さんとドトールコーヒー名誉会長・創業者の鳥羽博道さん。

ファンケルもドトールも、その名を聞いたことがない人はいないでしょう。しかし、それぞれの会社がどのような思いで創業されたのか、かつては零細企業だったところからいかにして今日の発展を遂げたのか、創業者はどのような考え方で経営してきたのか、意外と知られていないかもしれません。

30年以上にわたり親交を深めてきた間柄でありながら、対談するのは今回が初めて。87歳のいまなお意気軒昂で、溢れんばかりのバイタリティーに大変感銘を受けました。

「常識の壁を破れ」「本気にも段位がある」といった珠玉の言葉の数々から、一人ひとりの人生もまた経営であり、人生や経営を繁栄へと導く要諦を教えられます。

月刊『致知』最新号(2025年1月号)特集「万事修養」に池森さんと鳥羽さんの対談記事が掲載されています。テーマは「何が人を大成に導くのか」。

万事修養とは、苦難や不条理も含めてあらゆる出来事が自分を成長させてくれると捉えることが大切であり、その心構えで努力精進を重ねていくことによって深奥な世界が開ける、という意味です。

『致知』は私にとって人生の羅針盤

この対談を企画したきっかけは、6月に弊誌連載「20代をどう生きるか」の取材で池森さんに初めてお目にかかった時のこと。

池森さんの若々しい立ち居振る舞いや熱い語り口にすっかり心を打たれ、「一回きりのご縁にしてしまっては勿体ない。いずれまた特集の企画を立てて、ぜひ表紙を飾っていただきたい」と感じました。

ひと通りお話を伺った後、雑談の中で何気なく「懇意にしている経営者はいらっしゃいますか」と尋ねると、「ドトールの鳥羽さんが一番の親友です」と即答され、お二人の対談を企画するに至りました。

鳥羽さんにはこれまで何度も弊誌にご登場いただき、なおかつ8年に及ぶ『致知』の愛読者でもあったため、双方のご快諾を得て、10月初旬に対談取材が行われました。

なお、鳥羽さんからは弊誌創刊45周年に際し、このようなメッセージを頂戴しました。

「『致知』は私にとって人生の羅針盤のような雑誌。どのような状況にあろうとも、人間としての正しい基本に導いてくれる雑誌です。私と同じように、45年という永い時間の中でどれだけ多くの方々がこの本に触れ、多大な影響を受けてこられ、正しい人生航路を見出す力となったことでしょう。それを考える時、『致知』が50年、60年、100年と人々の足元を照らし続け、発展されることを心から願います」

1冊の書籍になるほどの内容が凝縮されている

当日、取材時間は2時間に及び、その内容を凝縮して誌面11ページ、約14,000字の記事にまとめました。主な見出しは下記の通りです。

 ◇名経営者が語るリーダーの4条件
 ◇ターニングポイントを支えてくれた言葉
 ◇飛行機で偶然隣の席に 夢中で語り合ったあの日
 ◇自社の繁栄よりも日本の国益を優先する
 ◇「倒れても倒れない。それが経営者だ」
 ◇2400万円の借金を2年半で完済できた理由
 ◇不幸な人を絶対につくらない
 ◇「常識の壁を破れ」ファンケル飛躍の原点
 ◇ドトールコーヒーショップ知られざる誕生秘話
 ◇最大の逆境 その時どう動いたか
 ◇大成する人の人生心得帖

「お二人の出逢いと交流」に始まり、「仕事・人生の原点」(この道で生きると覚悟を決めた時、事業を軌道に乗せるために積み重ねた実践と心懸け、特に深い薫陶を受けた人とその教え)、さらには「飛躍への転機となった出来事、試練をいかに乗り越えてきたか、それらの体験を通じて練り上げられた経営哲学・人生信条」や「経営の第一線に立ち続けて見えてきた世界、何が組織を強くするか、大成する人としない人の差」など、一冊の書籍になるほどの内容がギュッと凝縮されています。

 

 

「常識の壁を破れ」――池森賢二

お二人の共通点は年齢や業績だけに留まらず、奇しくも創業の志が同じだということも特筆すべきことです。冒頭に少し触れましたが、お二人のお話の中でとりわけ心に響いた言葉をここで紹介します。それぞれご自身が大切にしてきた人生心得帖といえる名言です。

まずは池森さん。

「世の中の不を解決していくところにビジネスが生まれる。だから、〝常識の壁を破れ〟と。常識はクリエイティブの邪魔になりますよ。常識の壁を破ると、そこに面白いものが見えてくる。考えればアイデアは出てきますし、知恵は尽きることがない」

池森さんがファンケルを創業したのは42歳の時でした。ある日、ふと奥様の顔を見ると、肌が荒れていることに気づいたそうです。それがきっかけとなり、化粧品トラブルで苦しんでいる人を助けたいという一心で、当時誰もやらなかった無添加化粧品の開発に乗り出しました。

創業期はお金がなかったため、とにかく知恵で稼いだといいます。具体的な手法は本誌の対談の中でたくさん紹介されていますが、そういう実体験をもとに生まれた言葉だけに重みがあります。

「本気にも段位がある」――鳥羽博道

次に鳥羽さん。

「〝本気にも段位がある〟。名人まで届かないにしても、少なくとも本気八段の努力をしないと物事は成就しない。勝つか負けるかではなく、勝つか死ぬか。負けた時は死ぬ時というくらいの気概で努力することが大事ですね」

ある時、フランチャイズのオーナーが「商売がうまくいかない」と嘆いてきた時に、鳥羽さんは「あなたはいま自分の精いっぱいの努力をしていると思うかもしれない。でも、僕から見たらまだ五段だ。名人まで届かないにしても、少なくとも本気八段の努力をしないと物事は成就しない」とアドバイスしたそうです。

鳥羽さんは高校を中退して上京し、飲食店に住み込みで働き、20歳の時に船で42日間かけて単身ブラジルに渡り、3年間の武者修行。帰国後、自分が社長になりたいとか儲けたいという野心は全くなく、ただ理想の会社をつくりたいとの思いから、24歳で会社を興しました。

この言葉もまた、これまで数々の成功と失敗を重ね、死線を乗り越えながら歩まれてきた鳥羽さんならではの本音の実感がこもった言葉といえます。

池森さんと鳥羽さんがその波瀾万丈な人生体験を通して掴まれた「何が人を大成に導くのか」には、私たちの日常の仕事や人生に活かせるヒントが満載です。お二人の名経営者が初めて語り合う人間学談義に興味は尽きません。ぜひ本誌の対談記事をお読みください。


◇池森賢二(いけもり・けんじ)
昭和12年三重県生まれ。34年小田原ガス入社。48年退社。55年無添加化粧品事業を個人創。翌年、ジャパンファインケミカル販売(現・ファンケル)を設立。平成11年東証一部上場。令和元年会長退任。現在、未来を担う経営者の発掘・支援を積極的に行っている。著書に『企業存続のために知っておいてほしいこと』(PHP研究所)など。

◇鳥羽博道(とりば・ひろみち)
昭和12年埼玉県生まれ。29年深谷商業高等学校中退。東京の飲食店勤務、喫茶店店長を経験し、33年ブラジルへ単身渡航。コーヒー農園で3年間働いた後、帰国。37年ドトールコーヒー設立。平成12年東証一部上場。17年会長に就任。18年より現職。著書に『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』(日経ビジネス人文庫)など。

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