「万人に喜びを」──神戸市を拠点に住宅事業を手掛けるヤマト住建が貫いてきた信念(西津昌廣会長)

本記事は月刊『致知』2024年11月号掲載記事を一部編集したものです~

ないない尽くしの創業時に唯一あったもの

当社の住宅を通じて、お客様に喜んでいただきたい──私どもは、創業時に抱いたこの思いを「万人に喜びを」という経営理念に昇華し、全社を挙げて追求しています。

私が住宅事業を志したきっかけは1961年、5歳の時に遭遇した第二室戸台風でした。統計史上最大規模のこの暴風雨は、当時私が住んでいた大阪にも大打撃をもたらしました。幸い私の家は被害を免れましたが、あの時の恐怖心はいまだに拭い切れません。私はその体験から頑丈で安心な家に住みたいと願うようになり、そうしたよい家を提供することが、いつしか己の生涯の使命になったのです。

ところが、就職した住宅会社で若造がいくら理想を訴えてもまともに相手にしてもらえません。9回転職を重ねた挙げ句、最後は自分でやるしかないと肚を決め、神戸市で当社を起業したのです。1987年、31歳の時でした。

とはいえ、お金も信用も人もない若造に、家という高額な商品を注文してくださるお客様など稀です。ないない尽くしの私にあったのは、ただ熱意のみ。とにかくお客様に喜んでいただくために、誠実に、真心を込め、一所懸命によい家を提供し、少しずつ実績を積み上げていったのです。

一番の試練は、創業8年で迎えた阪神淡路大震災でした。壊滅した街で何より心配だったのは、お客様のことでした。社員総出で安否を確認して回ったところ、幸いにも頑丈さにこだわった当社の家は、全壊、半壊、共に一軒もなく、それが評判となって引き合いが急増していったのです。

「エネージュAF」で経済産業大臣賞を受賞

日本の住宅品質は、欧米に大きく後れを取っています。国際会議の場で発表された我が国の次世代省エネルギー基準が、世界の失笑を買ったという話もあるくらいです。

当社はこの現状を打開すべく、世界基準の住宅を追求。2007年に発売した「エネージュ」は、健康に優しい高気密、高断熱の住宅で、夏も冬もエアコン一台で家全体を快適な温度に維持できます。そして2021年、後継商品「エネージュAF」で建築界の金メダルにも相当する省エネ大賞・経済産業大臣賞を受賞しました。おかげさまで当社の業績も大きく拡大し、現在従業員760名で売上高321億円を計上。拠点数は近々45か所に達します。

こうした実績のベースにあるのは、お客様に喜んでいただきたいという創業来の思い。そしてそれを全社で共有するための私の信条は、「愛、自由、拡大、変化、光」をもって、

まず社員を幸せにすることです。即ち、社員に愛情を持って接すること。自由に発言・提案できる風通しのよい社風。堅実かつ継続的な事業拡大。常識に囚われず常に変化を追求すること。そして社員一人ひとりに光を当て、各々が自分の持ち場で一隅を照らすことです。

当社は、今後ともこうした社風を堅持し、世界基準のより高品質な家づくりに邁進していく考えです。そして全国、さらにはアジア各国にも事業を展開し、当社の住宅を通じてこれまで以上に多くの方々に喜びをもたらしてまいりたいと願っています。


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