2024年10月12日
「常に考える」を標語に、社員の主体性や提案力をぐんぐん引き出すユニークな社風で、「日本一社員が幸せな会社」と称される未来工業。創業者のご子息として同社を牽引してきた相談役の山田雅裕氏に、事業発展の要諦について語っていただきました。
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社員の〝やる気〟こそ事業発展の根源
──社員の主体性、やる気を引き出す社風で、1965年の創業以来赤字なし、毎年10%を超える経常利益を出し続け、「日本一社員が幸せ」と称される会社が岐阜にあると伺いやってまいりました。
<山田>
当社の標語(企業理念)は非常にシンプルでして、創業者たちがつくった「常に考える」以外にないんですよ。
世界的なIT企業であるIBMの標語も「Think(考える)」ですけれども、私たちには「常に」がついていますから、その上を行くんだくらいの思いで一秒、一分でもいいから多く会社のこと、仕事のことを考え、実践してほしいと社員に伝えています。
そのために、当社では社員からの提案に対して採用・不採用に拘かかわらず一律500円を支給する提案制度を取り入れているんです。さらに年間の提案数が200件を超えると、提案数の報奨金とは別に5万円を支給しています。
お金で社員を釣るのかと言われそうですが、実際にこの制度によって社員の仕事へのモチベーションは非常に高いものがあり、特に男性社員は車を買う、結婚する、子供が生まれる、家を購入する時期になると、ダーッと提案数が伸びる。
ですから、周りに何と言われようと、常に考え提案する習慣、社員のモチベーションアップに繋つながるのであればやるべきだと思って続けてきました。
──常に考える習慣を身につけることが何よりも大事であると。
<山田>
また、社員の提案にお金を支給するのは、逆に会社として負担じゃないかとおっしゃる方もいます。
しかし、例えば、本社工場で改善提案が出れば、それは他の工場にも水平展開で取り入れられていって、結果的にどの現場でも効率、生産性が向上し業績にもよい影響を与えていくんです。
これは25年ほど前の話ですが、熊本工場で年間提案数が200件を超えた社員が出て、自分も負けてたまるかと工場内で提案合戦が始まったことがありました。
すると、同時期に岐阜の養老工場でも同じような提案合戦が始まったんです。
最初は偶然だと思っていたのですが、熊本工場の工場長はもともと養老工場から異動してきた人で、両工場の社員を鼓舞していたわけです。つまり熊本工場VS養老工場になっていた(笑)。
──工場同士で提案競争が。
<山田>
いまは年間5,000件ほどになっていますけれども、競争が盛り上がっていた頃は2万3,000件以上の改善提案が現場から出てきていました。
2万3,000件も出てくれば、もちろんかなりのお金を支給しましたが、やっぱり社内も活気に溢あふれてきますし、それが業績にも反映されてすぐに元が取れました。
──ちなみに、具体的にはどのような提案が多いのでしょうか。
<山田>
当社は建物の電気・設備資材メーカーですが、ほとんどが工場内の改善提案ですね。
何十年か前の機械の入れ替え時期には設備投資に関する提案が結構多くありましたけれども、最近は既存の設備をいかにうまく使うか、いかに運搬などの作業効率を高めるかといった提案が多くなっています。
一方、食堂のテーブルが汚れた時にすぐ拭けるよう、近くに布巾を備えておくといった提案もあり、実際に採用されました。
当社では、どうでもいいじゃないかと思われる些さ細さいな提案でも絶対に否定せず、一度受け入れる。
これも大事にしている私たちの企業文化であり、不採用でも500円を出す理由もここにあります。やっぱり人は否定されると、どんどんやる気も下がってしまうものです。
──現場からの提案をまず受け入れる。とても大事な姿勢ですね。
<山田>
それに関連して、当社では管理職が部下に命令するのを基本的に禁止しているんですよ。
「とにかくこの仕事をやれ」と命令されて、「さあ、頑張るぞ!」という気持ちになる人はあまりいないでしょう。
それよりも、「この仕事にはこういう意義があって、あなたのこの特性を生かせるからぜひ任せたい」と説明し、納得してやってもらったほうが、よほどモチベーションは上がると思うんです。
上司は自分の考えを説明して納得してもらう、部下はそれを理解し納得して取り組む、ここにも「常に考える」が背景にあります。
とにかく私たちは現場で働く社員の主体性、やる気こそが事業発展の根源的なパワーであると見なして、いろんな取り組みをしながらここまで発展してきたんです。
(本記事は月刊『致知』2024年10月号 インタビュー「常に考える 創業精神の継承が会社の未来を創る」より一部抜粋・編集したものです)
~本記事の内容~
◆社員の〝やる気〟こそ事業発展の根源
◆生き残るためには常に考えるしかなかった
◆社員を信じるから社員に信じられる
◆創業のDNAの伝承が人と会社を生かす道
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◇山田雅裕(やまだ・まさひろ)
昭和38年岐阜県生まれ。大学卒業後、未来工業に入社。松本営業所長、製造企画課長、山形工場長、監査室長などを歴任する。平成20年に子会社・神保電器に出向し社長に就任。経営再建に取り組み、24年には最高益を達成。25年未来工業の代表取締役社長。令和6年より現職。
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