2024年09月06日
40年間に及び、東京いずみ幼稚園で実施されている音読メソッドが書籍化されました。タイトルは、「国語に強くなる音読ドリル」。毎年315名の園児たちが『平家物語』『学問のススメ』など漢字まじりの名文をすらすらと読めるようになる脅威の教育メソッドです。本書では、これまで同園に通う園児たちしか学ぶことのできなかった教育メソッドを体系化し、ご家庭でも実施できるようになりました。本書の監修に当たられた同園長・小泉敏男氏の「おわりに」の文章の一部をご紹介いたします。
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幼い頃に培った国語力が自分の人生を支える力になる
本書は「東京いずみ幼稚園」で四十年以上にわたって実践してきた音読指導と、実際に使用してきたテキストを基に、当園が初めて制作に当たった音読用ドリルです。
来園された方々は、『論語』や漢文、百人一首など、大人でも難しい文章をすらすら音読する三、四歳の園児の姿に大変驚かれますが、東京いずみ幼稚園式の音読を、ぜひご家庭でも楽しんでいただければと考え、本書を企画しました。
音読指導は約四十年間で、五千人を超える園児たちと取り組んできましたが、病気などの事情のある子を除き、ほとんどの子が漢字仮名まじりの絵本、古典や漢文を諳んじて読めるようになりました。
子どもたちの心身の成長に適った「適時教育」を実践すれば、できない子は一人もいないというのが私の実感です。
また、「幼児は心身ともに未熟で何もできないのが当たり前」という認識も、大人の決めつけにすぎないことを園児の姿から教えられました。
関西へ引っ越した卒園生が車窓から遠くの淡路島を見て、「淡路島 かよふ千鳥の鳴く声に幾夜目覚めぬ 須磨の関守」という百人一首の和歌を口ずさんだと、親御さんから驚きの声が寄せられたことがあります。
淡路島を見てとっさにこの和歌が思い浮かぶのは、当園での五歳児の教養です。
この子はこれからもこの和歌を思い出し、味わう機会があるでしょう。
「三つ子の魂百まで」と言いますが、小さいときの記憶はずっと消えないのです。
「幼児に古典を読ませる必要があるのですか」という声もあります。
でも、たとえそのときは意味が分からなくても、よい文、美しい言葉を目にし、耳にし、口ずさんでインプットしておけば、子どもが成長するどこかのタイミングで「ああ、これはあのことか」と気づき、理解を深めることができるでしょう。
実際に、中学校で古文・漢文の授業が始まったときに、「文法などを気にせずとも、内容がスラスラ頭に入っていく感覚があった」といった感想を卒園児からいただくことも少なくありません。
とりわけ国際化が急速に進んでいる今日だからこそ、子どもたちにはしっかりした日本語、美しい言葉を身につけてほしいと思うのです。
海外の人に日本のことを尋ねられたとき、それにまつわる古典を引用したり詩句を諳んじられたりするような人ならば、自国の文化を大事にしている教養ある人として尊敬されることでしょう。
幼い頃に培った国語力が自分の人生を支える力にもなるのです。
親御さんにも、ぜひそこまで考えて子どもと向き合っていただきたいと思います。
とはいえ、あまり難しく考える必要はありません。
何よりも大切なのは、親自身が子どもと一緒に楽しむことです。
そして、子どもができたことを心から喜び、心から褒めてあげることです。
そうすれば子どもは自然に伸びていきますし、それが親自身の成長にもつながります。
その意味では、本書は子どもの国語力を高めるための本であると同時に、親の力を高めるための本でもあるのです。
どうか親子で一緒に、声に出して、楽しく本書を読んでみてください。
小泉敏男