時に傷つけられ「帰れ!」と怒鳴られても——精神科訪問看護師・西島暁子が訪問を続ける理由

精神病患者の回復と地域での自立を促すため、訪問看護師として活動する西島暁子氏。症状は多岐にわたり、一筋縄ではいかないケースも多いといいます。時に身の危険にも晒されながら訪問を続けてきた西島氏を突き動かすものは何か。その信念に迫りました。

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患者の自宅を訪問し病気の真因を突き止める

<西島>
私はいま、東京で精神科訪問看護の活動を行っています。12年前に「ナースサポート.アリス」という会社を立ち上げ、現在「ソレイユ訪問看護ステーション」という拠点を2箇所運営し、合計約600人の患者様と向き合っているのです。

入院治療が施されることの多い精神科の患者様に対して、訪問看護が行われていることをご存じない方も多いかもしれません。

近年は精神科医療の先進国である欧米に倣い、患者様が地域で共に暮らせる社会の実現が求められていますが、行政の力だけでこれを推進することは困難です。

患者様一人ひとりと面会を重ね、回復へ導いていく精神科訪問看護師の存在が不可欠なのです。

とはいえ、患者様の症状は十人十色であり、ひと口に訪問看護といっても決して容易なことではありません。

幻覚、幻聴、妄想から暴力行為を繰り返し、停車してあったバイクに火をつけてしまった高齢男性。高校の同級生から嫌がらせを受けていると思い込み、夜中に先方の自宅へ押しかけるなどの迷惑行為を繰り返す統合失調症の方。自身の排泄物をビニール袋に入れ、団地のドアの前に置く80代の女性。

生活保護を受けながら長年古いアパートで一人暮らしをなさっていた60代の患者様は、統合失調症から認知症を併発しました。

部屋の中ではネズミが行き来し、出しっぱなしのこたつの布団を捲ると、ザーッと大量のゴキブリが飛び出してきましたが、ご本人はペットだと思い込み、意に介す様子はありませんでした。

発症の原因は様々であり、病院の問診だけでそれを突き止めるには限界があります。けれどもご自宅を訪問すれば、家族関係や趣味、ライフスタイルなどが明らかになり、患者様が病気になった本当の理由に気づくことも可能なのです。

患者様が訪問を嫌がって行方をくらまし、何度伺ってもお目にかかれなかったり、「帰れ!」と怒鳴られ水をぶちまけられたりすることもあります。

それでも私たちは患者様の回復を信じて、倦まず弛まず訪問を続けているのです。


いまでこそ強い信念を持ち、訪問看護に当たる西島氏。本記事では、「両親の期待に応え切れずに」「病院の保護室で目覚めた日」など、ご自身の生い立ちや、精神科患者としての壮絶な過去などを振り返りながら、不屈の信念が形づくられた背景に迫ります。逆境を乗り越え、患者様を支える西島様の歩みには、倦まず弛まず歩む先に初めて開ける人生の景色を教えられます。

◉『致知』2024年5月号 特集「倦まず弛まず」◉
一人称〝「患者様一人ひとりの回復を信じて」

西島暁子(ソレイユ訪問看護ステーション所長)

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◆患者の自宅を訪問し病気の真因を突き止める
◆両親の期待に応え切れずに
◆病院の保護室で目覚めた日
◆この仕事なら残りの人生をすべて費やしてもいい
◆些細な変化にも大きな喜びを感じて

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◇西島暁子(にしじま・あきこ)
昭和50年東京都生まれ。平成7年帝京大学医学部入学、8年都立府中看護学校入学。11年調布総合病院、横浜丘の上病院精神科に勤務。24年ナースサポート.アリスを設立、ソレイユ訪問看護ステーションをオープン。著書に『魂の精神科訪問看護』(幻冬舎)がある。

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