日本人が知らない日本人の素晴らしさ【ロバート・D・エルドリッヂ】

‶元気で強い日本〟の実現のために、様々な政策提言を行っているアメリカ人のロバート・D・エルドリッヂさん。「いればいるほど日本が好きになる」という大の親日家であるエルドリッヂさんに、世界の目から見た日本の素晴らしさや可能性、そして「失われた30年」と言われる長期停滞に苦しむ日本を蘇らせる処方箋をお話しいただきました。

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外国人が驚く日本のすごさ

<――初めて訪れた日本の印象はいかがでしたか。>

<エルドリッヂ> 

これは日本の魅力に関係してきますけれども、(大坂の)多可町に来てものすごく感じたのは、地元の方々の「郷土愛」なんですね。例えば、派遣された直後にちょうどお盆祭りがあったのですが、役場の職員がお祭りの準備をしていることに驚きました。

私も役場に任用されていますから、暑い最中に手伝いをさせられたのですが、「これは契約違反ではないか」と(笑)。でも、日本の人々はお祭りの準備が仕事であるとは思っていない。故郷のためを思って自発的に協力していました。そのような郷土愛は、よりよい国を創っていくために絶対必要なものです。

<――郷土愛がよりよい国や社会を創る。おっしゃる通りですね。>

<エルドリッヂ> 

それから多くの日本人が優しくて礼儀正しくて、お互いに譲り合う心を持ち、自分のことより相手のことを優先して考え行動していることにも驚きました。海外であれば自分の主張を押し通そうとするのが普通です。

昨夜も普通のビジネスホテルに泊まったのですが、食事の際、外国人だからお箸はしが使えないと思ったのか、要望を出さなくてもわざわざフォークを用意してくれていました。海外の普通のホテルでここまでのお気遣いやサービスはなかなか受けられないでしょう。

<――日本人からすれば当たり前だと思っていることが、海外の人から見れば驚くことなのですね。>

<エルドリッヂ>

 あと、日本の素晴らしいところは、意外に思われるかもしれませんが多様性です。

日本の魅力に気づいた私は、英語指導助手を勤めた後も日本に留まり、神戸大学大学院で博士号を取得。就職した大阪大学で国際政治、安全保障、危機管理、防災などの様々な分野の研究に取り組み、教えていました。ちなみに、大学院生の時に既に社会人になっていた妻(日本人)と出会い学生結婚をしました。

そして、阪大に勤めた後、沖縄や日米関係の政策研究を発展させるために在沖縄米海兵隊政務外交部次長などを務め、2015年に再び兵庫に戻りました。以後、地方創生の研究に力を入れるようになったのですが、その中ですべての都道府県を見て回りました。

すると、生活習慣や言葉、料理など、どこに行っても必ずその地域ならではの特徴、魅力があるんですね。日本人はよく「全国一律」という言葉を使いますが、日本ほど地域の多様性がある国はありません。これはおそらく江戸幕府が幕藩体制をとり、各藩にそれぞれの地域を治めさせていたからでしょう。この地域性が、郷土愛にも繋つながっているのだと思います。

それに日本は山・川・海、本当に豊かな自然に囲まれています。にも拘わらず、なぜ食料自給率が低いのか、資源がないなどと嘆いているのか全まったく理解できません。

<――多様性や豊かな自然、言われて初めて気づかされることばかりです。>

<エルドリッヂ> 

そして日本は地域の繋がり、家族の絆きずながとてもしっかりしています。特に地方では親子、兄弟姉妹、親戚が近くに住み、お互いに助け合いながら、地域や家族の中で歴史・文化・伝統、あるいは生活の知恵がきちんと継承されている。そのような継承が各地域・各家族でなされているというのは、国や社会の安定、発展にとって極めて重要なことです。その点、都市部でも三世代同居をもっと支援すべきだと思います。

ですから日本がここまで発展してきた要因は、地域の多様性、豊かな自然、家族・郷土愛、何より歴史・文化・伝統をきちんと継承し、その中で育はぐくまれた日本人一人ひとりの資質、つまり〝人〟にあることは間違いないでしょう。

☆『致知』2024年2月号「立志立国」掲載記事の一部を抜粋・編集したものです。

◎エルドリッチさんのインタビューには、

・世界は強い日本の復活を待っている

・日本を蝕む首都一極集中

・家族や故郷のために何ができるかを考える

など、日本を強い国に復活させていく具体的な分析、処方箋が満載です。記事の詳細はこちら

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◇ロバート・D・エルドリッヂ

1968年アメリカ・ニュージャージー州生まれ。パリ留学を経て1990年にバージニア州リンチバーグ大学国際関係学部卒業。その後、文部省JETプログラムで来日。1999年神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。政治学博士号取得。2001年より大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授。2009年在沖縄海兵隊政務外交部次長に就任(~2015年)。現在、国内外の数多くの研究機関、財団、およびNGONPOに兼務で所属しながら、講演会、テレビ、ラジオで活躍している。国際教育、防災、地方創生に関するコンサルタントとしても活動。『オキナワ論』(新潮新書)『トモダチ作戦』(集英社)『教育不況からの脱出』(晃洋書房)など著書多数。

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