ユニクロ・柳井正が考える「一番よい会社」の条件

家業の紳士服店を、押しも押されぬ世界的衣料品企業に育て上げたファーストリテイリング社長の柳井正さん。ユニクロやジーユー(GU)を擁する同社の売り上げはいまや2兆円を超え、アパレル分野で世界第3位の企業へと躍進を遂げています。稀代の経営者が考える「一番いい会社」とは一体いかなるものなのでしょうか?(本記事は月刊『致知』2011年2月号 特集「立志照隅」に掲載された記事を抜粋したものです)

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会社は社員が「自営業」をする場所

僕が考える一番いい会社とは、末端の社員でも自分がトップの経営者だと思っている会社。自分が全部のことを決められるし、この会社を支えている、あるいはコントロールしていると思える社員がたくさんいる会社です。

それが、大会社になってくると、会社に使われるようになるんですね。自分が会社を使うんじゃなく、会社に使われる。そして自分が下っ端だと思った瞬間にダメになる。

我々の会社でいえば、部長級や課長級がそうなんですが、自分の立ち位置にとらわれ過ぎ。それぞれの人が自分の立ち位置で物事を考えるから、ごく限られた範囲内でしか物事が見えない。

そして全部見えていなくて失敗している。ですから一度、自分もトップの経営者だと思って、上からいまの仕事を見直したら、すごく良くなるように思います。

結局、サラリーマン意識じゃダメなんですよ。自分は会社という場所に、「自営業」をするために来ている。自分は給料を貰っている立場だとかじゃなしに、自分が会社を食わせてる、というふうに思わないといけないと思います。

仕事がおもしろいと思うためには、自分がそこに本当に懸けないと、絶対にそうは思えない。中途半端な気持ちでやっていたら、おもしろくも何ともないですよね。

『致知』2021年1月号 特集 運命をひらく
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自分の強みは何かを問え

我々は今後、世界中で事業を展開していこうと考えている。その時には当然、世界中の人たちとコミュニケーションをしなければなりません。

でもその時に外国人が日本語を完全に理解できるかといえば難しいと思うんです。するとビジネスでの公用語は何かといえば、やっぱり英語しかないんですよ。それを、日本を捨てて西洋の国に支配されるように捉えてしまうこと自体、非常に狭い考え方だと思うんです。

我々は日本の企業で、日本のDNAを持っていて、思考や文化の基準はあくまでも日本なんですよ。結局、我々が世界に出ていった国で最終的に聞かれるのは「どこ出身で、どういう人間で、どういう企業か」ということです。すると我々の強みも弱みも、日本出身であるという一点にしかない。

ドラッカーは「あらゆる者が、強みによって報酬を手にする。弱みによってではない。最初に問うべきは、我々の強みは何かである」と述べています。

人間でも企業でもそうだと思うんですが、弱い点よりも、強い点をより強くすることが大切で、その強いところを生かしていく。世界で評価されるのは、やっぱり強い点ですよね。だから我々の強み、あるいは日本や日本企業の強みはどこにあって、どうしたら世界中の人々に理解してもらえるかを、日本人や日本の企業は考えなくてはいけないと思うんです。


◇柳井 正(やない・ただし)
昭和24年山口県生まれ。早稲田大学卒。46年早稲田大学卒業後、ジャスコ入社。47年ジャスコ退社後、父親の経営する小郡商事に入社。59年カジュアルウエアの小売店「ユニクロ」第1号店を出店。同年社長就任。平成3年ファーストリテイリングに社名変更。11年東証1部上場。14年代表取締役会長兼最高経営責任者に就任。いったん社長を退くも17年再び社長復帰。著書に『成功は一日で捨て去れ』『一勝九敗』(ともに新潮文庫)『柳井正 わがドラッカー流経営論』(日本放送出版協会)などがある。

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