「心掛け一つで、どんな場所も自分を高める道場になる」——なでしこジャパンを世界一に導いた名将・佐々木則夫の原点

2011年、サッカー女子W杯でなでしこジャパンを世界一の栄光に導いた名将・佐々木則夫氏。2023年8月に開催された女子W杯では、日本サッカー協会女子委員長としてチームづくりに注力し、ベスト8入りに大きく貢献しました。日本サッカー殿堂入りを果たした氏の指導哲学はいかにして育まれたのでしょうか。若き日々を振り返っていただき、指導者としての原点に迫ります。

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指導者としての原点

〈佐々木〉
指導者人生を振り返ると、出逢ってきた恩師一人ひとりの存在が、いまの私を形づくっているのだと実感します。

その一人が、帝京高校の古沼貞雄監督です。古沼監督は陸上出身だったこともあり、選手の自主性を重んじる指導方針を貫かれていました。「サッカーをやるのはお前たちだからな」が監督の口癖で、戦術や練習の意味などの細かい点は一切指示されません。

ですから常に自分たちで考え、選手同士で話し合う他ありませんでした。3年生でキャプテンを任された際も率先垂範でチームの指揮を執り、ピッチ上でその都度コミュニケーションを図ることで、臨機応変に戦術を変える風土が育まれていったのです。

このチームづくりが奏功し、インターハイ優勝を成し遂げました。

また、選手の心境を洞察する大切さも学びました。監督から叱咤され、気が滅入っている時に「これで昼飯でも食って来い」と、1,000円札を手渡されたような経験は数え切れません。

選手の心が浮ついている隙を見逃さず、パッと掴む。こうした選手一人ひとりを観察し、自主性を尊重する方針は、なでしこジャパンのチームづくりにおいても大切な核となりました。

もう一人、指導者の原点として欠かせないのが父の存在です。大学時代、現場監督を務める父の仕事を手伝った際、その背中の大きさをまざまざと感じました。

上からものを言うことはせず、危険な仕事も長として自ら引き受け、部下を大事に守る。人の上に立つ者としての在り方を仕事の中で見せてもらったことはかけがえのない財産です。

加えて、父から教わった「歩歩是道場」という禅の言葉は私の座右の銘です。心掛け一つで、どんな場所も自分を高める道場になる。この言葉を胸に、大学卒業後に入社した日本電信電話公社(現・NTT関東)では、日頃の業務もサッカーに通じているという心掛けで仕事に向き合っていきました。

配属された電話料金の徴収業務においては、目の前のお客様の感情や考えを理解し、いかに納得した上でお支払いいただけるか。試行錯誤を重ね、交渉に当たりました。あらゆる人や経験から、新しい気づきを吸収しながら走り続けることが大切だと思うのです。


(本記事は月刊『致知』202312月号連載「二十代をどう生きるか」より一部抜粋・編集したものです)

【本記事の内容】
 ▼サッカーとの出合い
 ▼チャンスは自ら掴み取る
 ▼目の前の運命を受け入れる
 ▼無駄な経験は何一つない

本記事では全3ページにわたって、佐々木さんの若き日々を振り返っていただきました。サッカーとの出逢いから奥様の闘病経験に至るまで、ありとあらゆる経験を人生の糧にしてきた佐々木さんの足跡には、運命を拓く要諦が詰まっています。【詳細・購読は下記バナーをクリック↓】。

 

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◇ 佐々木則夫(ささき・のりお)
昭和33年山形県生まれ。帝京高校3年次にインターハイ優勝。明治大学卒業後、日本電信電話公社に入社。NTT関東サッカー部(現・大宮アルディージャ)でプレー。平成19年サッカー日本女子代表監督就任。23年ドイツ女子W杯でチームを世界一に導き、FIFA年間最優秀監督賞(女子部門)受賞。28年代表監督を辞任。令和元年日本サッカー殿堂入り。3年より現職。著書に『なでしこ力』『なでしこ力 次へ』(共に講談社)など。

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