2023年11月18日
人々の最期に寄り添う「看取り士」のパイオニアとして知られる日本看取り士会会長・柴田久美子さん。月刊『致知』12月号にて、人気連載「第一線で活躍する女性」にご登場いただきました。看取りの道に至るまでの艱難辛苦に包まれた半生と共に、250名を超える方々を看取る中で掴まれた死生観、幸せな人生を送る秘訣には、あらゆる年代に通ずる人生訓が詰まっています。今回はその取材秘話を担当編集者が綴ります。 ◉《期間限定の特典付きキャンペーン開催中》お申し込みくださった方に、『小さな幸福論』プレゼント!各界一流の方々の珠玉の体験談を多数掲載。総合月刊誌『致知』はあなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。 ▼詳しくはバナーから!
20余年ぶりの〝再会〟
ほのかに秋の訪れを感じながらも異例の残暑が続いた10月初旬、取材は東京と岡山を繋ぎ、オンラインで行われました。やむを得ずとはいえ、遠隔地にいる柴田さんのお人柄や深い人間学のお話を引き出すことができるのか、一抹の不安を抱えていました。
しかし、「こんにちは!このたびは貴重な機会を本当にありがとうございます」と屈託のない笑顔を浮かべる柴田さんと画面越しに対面した瞬間、不安はどこかに消え去ったのです。穏やかな口調と身に纏うオーラからは、人を包み込むやさしさが溢れ出ているようでした。まさに、多くの人々の死に寄り添ってきた柴田さんだからこそ纏える温もりが、画面上からもヒシヒシと伝わってきました。
現在、「抱きしめて看取る」を理念に掲げ、自宅での最期を支援する「看取り士」の有資格者は全国各地に2300名を超えています。60歳の時にたった一人で「日本看取り士会」を立ち上げ、今日の全国的な広がりの礎を築いたのが、会長を務める柴田久美子さんです。
柴田さんは30余年前に介護師として看取りの実践を重ね、2002年には人口数百人の小さな離島・知夫里(ちぶり)島にて「看取りの家」を設立され、抱きしめて看取る実践を重ねた後、2011年に日本看取り士会を設立。現場で培ってきた看取りの作法や心得を「看取り学」として体系化することで、看取りの輪を着実に広げてきました。
冒頭の挨拶に続いて、柴田さんはこうおっしゃいました。「私も一読者なので大変光栄です。いつも『致知』に学ばせてもらっています」と。
実は、柴田さんと弊誌のご縁は遡ること21年前。柴田さんが「看取りの家」を立ち上げて間もない頃、『致知』2002年11月号特集「人の心に光を灯す」でご登場いただきました。その頃から長年に亘って弊誌を愛読し、応援してくださっていたのです。
『致知』2002年11月号誌面
今回の取材では、21年前の誌面を担当した編集者も同席。その事実を知るや否や、柴田さんは満面の笑みで喜んでくださり、和やかな雰囲気の中で取材は始まりました。
ここで、『致知』愛読者である柴田さんから今回特別にコメントをお寄せいただいたので、ご紹介します。
〝月刊『致知』との出逢いは20年以上前に遡る。600人の離島で看取りの家の運営をしている時、一人の村民に「大人の教科書」として読むように勧められた。私はその当時、取材を受けた。20年以上の時を経て再び取材を受けたが、その取材には20年以上前に取材をして下さった記者さんも同席。私の活動の歴史を思うと、胸が熱くなった。
『致知』を拝読させて頂いていたからこそ継続出来た志。『致知』を1人でも多くの方に手に取っていただきたいと心から願っている〟
——柴田久美子
誰もが尊厳ある最期を迎えるために
そもそも、看取り士とは一体どのような役割を果たしているのでしょうか。柴田さんに説いていただいた内容を抜粋して紹介します。
〈柴田〉
看取り士の役割は主に3つあります。
1つ目は相談業務です。ご本人やご家族のご意向を伺い、必要に応じて在宅医や訪問看護師等の手配をさせていただきます。
2つ目は、24時間いつでも駆けつける寄り添い業務です。在宅死を望まれる場合は必然的に24時間介護が求められ、ご家族への負担は計り知れません。そのため、約10名の無償のボランティアで構成された「エンゼルチーム」が見守りを致します。
そして3つ目が、ご臨終の立ち会いです。私が30年かけて編み出した独自の看取りの作法を行うと共に、ご家族に手取り足取りお伝えします。こうして余命宣告から納骨まで、尊厳ある最期を迎えるサポートを行っているんです。
独自の看取りの作法について伺うと、最も大切なことは〝触れ合い〟だと柴田さんはおっしゃいます。肌と肌で触れ合い、心を通わせ合うことで命のバトンを繋いでいく。「看取りは命のバトンリレー」という言葉が印象的でした。
旅立つご本人のみならず、ご家族を含めて誰もが納得のいく最期を迎えるサポートを行う看取り士。2022年日本の死者数は約158万人で過去最多を更新したように、看取り士の需要は年々高まりを見せている一方、本人が在宅死を望んでいるにも拘らず、終末期には病院に移され、延命治療を受けるケースが後を絶ちません。柴田さんはこの現状を憂い、こうおっしゃっています。
〈柴田〉
内閣府が2019年に実施した調査では、5割以上の方が自宅で最期を迎えたいと願っているにも拘らず、実際の在宅死は1割程度に留まっています。
ですから、古くから日本にあった自宅で看取る文化を取り戻すことが、私たちの使命なんですね。私は看取り文化を社会に広めることが、ひいては家族の在り方や一人ひとりの生き方を見つめ直すきっかけになると信じています。
看取り文化を周知することが、社会の幸せを再考する一助になるという柴田さん。なぜ、柴田さんは強固な信念の元、看取り文化を広めるために奔走する日々を送っているのでしょうか。その陰には幼い頃に経験した父との別れ、仕事・家族・人生……すべてを失い、絶望の淵に沈んだ過去、介護の現場で直面した望まない死の現実、そして自身のがん宣告がありました――記事では一つひとつのエピソードを詳らかに紹介しています。
柴田さんの夢、そして看取り士の夢
取材では終始笑顔でお話しくだった柴田さんですが、ご自身の原点となるエピソードや看取りの活動に懸ける想いを語られる際は、思わず言葉を詰まらせる場面がありました。時折涙を堪えながらも、それでも懸命に、かつ丁寧に言葉を紡いでくださるお姿には心を震わされました。
中でも、250名以上の方々を看取ってきた柴田さんが、最も心に残る看取り体験として語られたエピソードには、柴田さんが看取りの現場で掴まれた独自の死生観、幸せな人生を送るヒントが凝縮されています。
すべての人が最期の瞬間に、愛されていると感じて旅立てる社会をつくる――。
これが私の夢であり、看取り士たちの夢です。
取材の中で頻りに語られた柴田さんの夢、そして看取り士の夢。この社会で生きる一人ひとりが縁ある人の最期を受け入れ、寄り添うこと。この大きな夢の実現が、一人ひとりの幸せ人生と後悔のない生き方、そして豊かな社会に繋がるのでしょう。
本記事では全4ページにわたって、看取りの現場で30年以上生と死を見つめてきた柴田さんの体験談をお話しいただきました。愛する人の最期を受け止め、幸せな人生を送る秘訣とは――。
◉『致知』12月号 連載「第一線で活躍する女性」◉
インタビュー「誰もが愛されていると感じて旅立てる社会をつくる」
柴田久美子(日本看取り士会会長)
↓ インタビュー内容はこちら!
▼看取りは命のバトンリレー
▼「愛こそが生きる意味だよ」
▼生きてこそ看取りができる
▼死の尊さは命の尊さ
▼最期の1%が幸せなら人生は幸せなものに変わる
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