「脳磨き」で脳の可能性をフルに発揮し、誰もが幸せになれる法則【脳科学者・岩崎一郎氏】

写真右が岩崎氏、左が奥様のクレア真由美さん

科学の進歩は、人間の可能性を大きく開いてきましたが、幸福を実現する道について、最新の脳科学がどのようなことを示唆しているのでしょうか。「脳磨き」を提唱する岩崎一郎さんが解き明かす、幸せになるための脳の使い方、鍛え方とは──。

特別な集中状態に入るには

<岩崎>

……脳は何かに一所懸命取り組んでいる時に働いているというのがこれまでの常識でした。しかし最新の脳科学では、何も考えずにボーッとしている時も同じくらい活発に働いていることが明らかになっています。

このことは自分でコントロールできない潜在意識、無意識の部分を有効活用できなければ、人は幸せな生き方ができないことを示唆しています。

電車に例えて言えば、本当は東西の線路を行き来したほうが幸せに生きられるのに、南北の線路の移動ばかりを繰り返していてはいつまで経っても幸せになれません。南北から東西へポイントを切り替える必要があり、そのポイントを司るのが、脳幹や島皮質(とうひしつ)と呼ばれる脳の部位です。

スポーツなどではよく、フロー状態、ゾーンという特別な集中状態に入ると驚異的な力が発揮できると言われますが、近年、そこに入るスイッチが脳幹や島皮質にあることが明らかになってきました。

残念ながら、この脳幹や島皮質は無意識領域にあるため自分で意図してスイッチを入れることはできません。その代わり、普段から脳磨きによって無意識領域を整えていくことによって、フロー状態に入る確率を高めることが可能なのです。

逆に、無意識領域を整えていなければ、リラックスした集中状態であるフロー状態とは真逆のFF状態に入ってしまいます。FF状態とは、動物が外敵に直面した時のような極度の緊張状態であり、脳内の他のあらゆる回路をシャットダウンして、戦うか(Fight)、飛んで逃げるか(Flight)ということだけにエネルギーを使います。FF状態でも一時的に大きな力を発揮できますが、ストレス反応であるために慢性化すると脳を破壊し、無気力や鬱うつ状態に陥ってしまうのです。

昔の剣豪が精神修養に努めたのは、心を整えることで命の危険に晒された時でも、FF状態ではなく、フロー状態に入る確率を高めるためといえます。二刀流で大活躍の大谷翔平選手がゴミ拾いを励行するのも、そこに通じるものがあると考えます。

フロー状態は、最新の脳科学で明らかになってきた「Awe(オウ)体験」の一部だと考えられています。

宇宙飛行士が宇宙空間から青く美しく光る地球を見ると、自分は大いなる何者かに生かされていると実感して深い感謝の念が湧いてくるといいます。こうした心震える感動体験をAwe体験といい、その時の脳は非常に活性化し、エゴが低下して謙虚な気持ちになることが明らかになっています。

Awe体験は大自然の前でちっぽけな自分を感じた時や、徳の高い人の言動に感動した時などにも体験することがあります。以前、ニューヨークの地下鉄で、電車が入ってくる直前にホームから線路へ転落した人を、一人の男性が線路へ飛び降り身を挺(てい)して救助したことがありました。その場にいた人たちは一様に深い感動に包まれ、Awe体験と同様の脳の状態になったといいます。

アリゾナ大学の教授は、釈迦様は悟りを開いた時に強烈なAwe体験をしたのではないかと推測しています。同様に、歴史に名を刻んだ多くの偉人がAwe体験を通じて人生を大きく転換させたのではないかとも言われています。

脳磨きを通じて無意識領域が整うと、このAwe体験をしやすくなるのです。

★この続きは本誌2023年11月号「幸福の条件」をご覧ください。岩崎一郎さんの記事では、

・運命を変えた二つの出逢い

・心を一つにしたチームは驚異的な成果を上げられる

・脳磨きの六つの方法

・心温まる、心を一つにできる人間関係を持ち続ける

など、実体験を交えて、脳磨きを通じて脳が持つ力を最大限に発揮し、よりよい人生を実現するヒントが語られます。人生100年時代を生き抜く知恵が満載の本記事の詳細・ご購読はこちら

【致知電子版】でも全文はお読みいただけます。

 


◇岩崎一郎(いわさき・いちろう)

昭和36年神奈川県生まれ。京都大学卒業、京都大学大学院修士課程修了後、米国ウィスコンシン大学医学部大学院で博士号(Ph.D.)取得。旧通産省の主任研究官、ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所の助教授を歴任。平成18年国際コミュニケーション・トレーニング創業。現在までに200社以上で企業研修を実施。著書に『なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか?』(クロスメディア・パブリッシング)『科学的に幸せになれる脳磨き』(サンマーク出版)など。

各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。

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