「パッションという言葉は、ラテン語には『受難』という意味もあります」──世界的指揮者・西本智実に学ぶ困難の捉え方

「パッション」、この言葉は主に「情熱」という意味で使われますが、語源であるラテン語には「受難」、つまり困難を受けるとの意味もあるといいます。世界を舞台に活躍する指揮者・西本智実氏は困難をいかにして自らの力に変えてきたのでしょうか。同じく世界で活躍する和紙デザイナーの堀木エリ子氏とともに語り合っていただきました。

尽きることのない情熱

<西本>
気づいたら現在約30か国のオーケストラやオペラ劇場で指揮活動をしています。イタリア語を軸にした音楽用語と楽譜という共通言語があるからこそ、リハーサル時は片言の言葉でも、自分の意志ある言葉で話すと伝わります。

<堀木> 
それはよく分かります。私は言語が全くダメで、世界中どこに行っても大阪弁で喋るんですけど(笑)、図面を広げたら大阪弁でもちゃんと伝わります。図面があると通訳が間違っていることが分かったり、通訳さんが話についていけずに置いてきぼりになるなんてこともあるんです。

<西本>
共有できることがあるのが大切ですよね。私は2012年、国境や国籍の縛りを外したイルミナート(オーケストラ・オペラ・バレエ・合唱団)を結成しました。

既成のオーケストラ組織は本拠地を持ち、地域に根ざして音楽活動を行うため助成金を得ていますが、イルミナートフィルは依頼を受ければ世界中どこへでも行きます。

7年連続ヴァチカンの国際音楽祭に招聘されサン・ピエトロ大聖堂でミサを演奏したり、中国から8公演の招聘もありました。2019年も日本各地、ヴァチカン、中国、ブルネイから招聘されています。

<堀木> 
素敵ですね。気づけば私も和紙の仕事を始めてもう30年以上が経ちました。これまで2000年のハノーバー国際博覧会で実際に走れる「和紙の車」をつくったり、クリスタルブランド・バカラと協力して「和紙のシャンデリア」を制作するなど、様々な挑戦をしてきました。

よく、「天職ってどうやったら見つかりますか?」と聞かれることがありますが、もっと他に相応しい仕事があるに違いないと転職を繰り返していたり、我欲だけで働いているようでは天職には絶対に出逢えません。

天職というのは見つかったり見つけたりするものではなくて、「生涯を懸けてこの仕事をしよう」と覚悟を決めることだと思うんです。私の場合、和紙の世界をなんとかしたいという使命感に突き動かされ、決心と覚悟が定まりました。

<西本>
突き動かされる情熱は尽きることはありませんね。
パッションという言葉は日本では「情熱」と訳すことが多いですけど、ラテン語には「受難」という意味もあります。

情熱があったから受難の苦しみを経験したのか、受難があったから情熱が生まれてきたのか、「卵が先か鶏が先か」の譬えのようです。

<堀木> 
なるほど。受難があるから頑張れる。全部がうまくいっていたら、逆に腹の底から湧き上がるパッションは生まれてこないと思います。

がんはもう完治しているのですが、いまでも遺書は2~3年に一度、公式なものを更新しています。夢や目標をただ漠然と思っているより、言葉にして書き出したほうがより思いに力が宿るような気がしています。

◉続きは2020年2月号 特集「心に残る言葉」をご覧ください。本対談では

・偶然性をどう引き出すか
・腹の底から湧き上がるパッション
・絶対に「できない」と言わない
・余命宣告されて気がついたこと

など、困難をエネルギーへと変換し、道を切り開いていくためのヒントが得られます。本記事の詳細・ご購読はこちら

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◇西本智実(にしもと・ともみ)
昭和45年大阪府生まれ。イルミナートフィル芸術監督。名門ロシア国立交響楽団、旧レニングラード国立歌劇場で指揮者ポストを外国人で初めて歴任。各国を代表するオーケストラ、名門歌劇場、国際音楽祭など約30か国から招聘。平成30年イルミナートフィル中国主要都市8公演を成功に導いた。「出光音楽賞」「国家戦略担当大臣感謝状」他受賞多数。ヴァチカン音楽財団より「名誉賞」を最年少で授与、「広州大劇院名誉芸術家」称号授与。

◇堀木エリ子(ほりき・えりこ)
昭和37年京都府生まれ。高校卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。62年呉服問屋に入社し、和紙事業部「SHIMUS」を設立。平成12年独立し、(株)堀木エリ子&アソシエイツ設立。和紙インテリアアートの企画・制作から施工までを手掛ける。近年の作品は東京ミッドタウン、成田国際空港第1ターミナルのアートワークの他、バカラとのコラボレーションによるシャンデリア、舞台美術等。著書に『挑戦のススメ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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