「ないなら自分でつくったらいい」——業務スーパー創業者・沼田昭二に学ぶ開拓者精神

2000年の開業以来、現在、全国に1,000店舗以上を展開し、4,000億円以上の売り上げを記録する業務スーパーの創業者・沼田昭二氏は、独自の製造・販売一体型のビジネスモデルを構築し、右肩上がりの成長を続ける同社を牽引してきました。経営母体である神戸物産の経営から離れた現在も、地熱発電を柱とした再生可能エネルギー事業に取り組み、挑戦を続ける氏の歩みから、時代を拓く要諦を探ります。

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ないものは自分でつくればいい

〈濵田〉
ロス、無駄、非効率を徹底的に排除するという業務スーパーで培われたノウハウが地熱発電でも見事に生きてくるわけですね。

〈沼田〉
工事に用いる掘削機は自前のものであり、昨年(2022年)4月には北海道に掘削技術者を養成する専門学校もつくりました。ここでは80名の学生が学ぶことができます。

私が設計した掘削機は自走式で、日本にはこれまでなかったものです。日本は山が多くて道が傾斜して狭い。そこに大型のトレーラーを通すのは容易ではないので、それであればエンジンを取りつけて運転できる掘削機があると便利だと考えたんです。

ないなら自分でつくったらいいというのが私の考えですから(笑)。

〈濵田〉
普通の人が不可能と思っているようなことを、そうやって当然のようにやってのけてしまう。沼田さんは、そういう人です。

〈沼田〉
おかげさまで熊本県小国町で進めている5メガの地熱発電事業は来年(2024年)、操業の目処が立ちましてね。無事に噴気テストが終わり、大手メーカーさんに建設していただいているタービン発電所は、今年中にその引き渡しが終わり、来年3月1日、正式に稼働できる予定です。これによって約8,000世帯の電気供給を賄うことができるようになるんです。

そして来年からは毎年一つずつ、発電所をつくっていく計画で、いまも鹿児島、熊本、北海道で掘削作業が進んでいます。さらに30か所以上の掘削許可を地元自治体から得ています。5年間で100億円というパッケージを実現したことで、これらの計画が可能になっていったんです。

〈濵田〉
町おこしエネルギーという社名からも窺えるように、沼田さんは発電の過程で生まれる熱水を利用して地元の野菜栽培や養殖などを推進し、新たな雇用を生み出すという計画を立てておられます。これも地元にとってはありがたいことだと思います。

残念ながら、地方の衰退にはなかなか歯止めが掛かりませんが、日本の文化を守っているのは地方であり、地方が衰退してしまえば日本の将来はありません。その地方の産業と再生可能エネルギーを掛け合わせることによって産業の生産性もグッと上がる。

生産性が上がれば、若い人が地方に定着し、そのことが地域活性化に繋がっていくはずです。

〈沼田〉
おっしゃる通りですね。いま産業界で大きな課題となっていることの一つに耕作放棄地の問題があるんです。日本の農地面積のうち、実に富山県と同程度の42.3万ヘクタールが耕作放棄地となっている(2015年)。

私たちはこれら耕作放棄地を買い受けて、太陽光発電で有効活用を図る取り組みを進めています。すでに千ヘクタールで実施しており、再生実績は日本一です。太陽光発電と言えば、森林を切り崩してパネルを設置しそれが環境破壊に繋がる悪いイメージをお持ちの方も多いでしょうし、実際、そんなことはやるべきではありません。

工場や大型ショッピングモールの屋根にも取り付けられていますが、再生可能エネルギーの普及拡大という意味では、さほど寄与しているとは言えません。しかし、荒れ放題の耕作放棄地を活用すればまとまったエネルギーが再生でき、日本の未来に大きく貢献できます。

一例として、太陽光パネルの設置場所で同時に放牧をすることによって、除草剤を使わなくても羊などが草を食べて農地が蘇るという一石二鳥の効果も得られるんです。


(本記事は月刊『致知』2023年9月号特集「時代を拓く」より一部抜粋・編集したものです)

◉本記事では、「販管費14%をいかに実現したか」「『私利私欲を捨てて滅私奉公に生きる』」「大義を忘れたら企業家は駄目になる」等、販管費14%の実現をはじめとした偉業達成の裏側と、それを可能にした沼田氏の開拓者精神を紐解きました。本記事の【詳細・購読は下記バナーをクリック↓】。

 

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◇沼田昭二(ぬまた・しょうじ)
昭和29年兵庫県生まれ。兵庫県立高砂高校卒業後、三越に入社。56年食品スーパー創業。60年神戸物産設立。平成12年業務スーパー1号店をオープン。以来、フランチャイズ方式で全国展開を図り現在1,000店舗以上を超える。外食産業や全国に20を超える食品工場も運営。28年神戸物産の経営を離れて町おこしエネルギーを設立。食料、エネルギーの自給率アップを大義に再生可能エネルギー事業に取り組む。

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