中学受験志願者10年連続1万人越え——栄東中学・高等学校が選ばれ続ける理由

東京大学をはじめとする国公立大学、早稲田や慶應義塾といった難関私立大学に多数の合格者を輩出し、中学受験志願者数が10年連続1万人を超える進学校、栄東中学・高等学校。その教育改革に創設者の佐藤栄太郎氏と共に奮闘し、今日の確固たる評価を築いてきたのが田中淳子さんです。世界銀行の通訳から教育界に転身した異色の経歴を持つ田中氏に、生徒たちの能力を引き出す教育の秘訣、自らの運命を力強く切り拓いていく要諦をお話しいただきました。

強みは生徒、教職員の多様性

 

〈――田中さんが校長を務める男女共学の中高一貫校、栄東中学・高等学校(埼玉県)は、中学受験の出願者数が10年連続で1万人を超え、これは日本一だそうですね。多くの生徒たちを惹ひきつける御校の魅力や特徴を教えてください。〉

〈田中〉 

一つには、いろんな生徒が通っていること、その多種多様な生徒たちが、それぞれ個性的な活動をとことん追求できる環境が整っているということです。

例えば、鉄道研究部の生徒たちは、夏休みなどを利用して北は北海道から南は沖縄まで自分たちで出掛けていって、全国の駅の発車メロディを調べ、それをチェロやピアノで演奏しているんですよ。文化祭の時には、山やトンネルまで精巧に造ったNゲージ(鉄道模型)を走らせてね、鉄道マニアが押しかけてきて、生徒が入るスペースがないほどの人気なんです。

あと、クイズ研究部の活動も非常に活発で、TBSの「東大王クイズ甲子園2021」では、300チーム以上がエントリーしている中、栄東高等学校のチームが見事優勝を掴つかみました。それから、行政書士試験に最年少の15歳で合格した生徒、鮫(ナガサキトラザメ)の研究に没頭して鮫が自宅で孵化する瞬間を世界で初めて映像に収めた生徒、さらに国際地理オリンピックで銀メダルを獲得した生徒や世界水泳ジュニア選手権で世界一になった生徒もいます。

〈――世界レベルで通用する生徒がどんどん育っていっていると。〉

〈田中〉 

他にもたくさん事例がありますけれども、そうした生徒たちによる多種多様な活動、探究学習を「アクティブラーニング(AL)」と呼んでいまして、本校ではかなり早い時期から導入し、全校を挙げて取り組んできたんですね。

それに国公立・理系大学・医学部に重きを置いたカリキュラムを充実させていること、帰国子女クラスを設けていることなども、本校の特徴であり魅力です。実際、今年(2023年)は東京大学に13名合格、東京理科大学の現役合格者数でも全国トップですし、北は福島市、南は神奈川県藤沢市から通ってくる生徒もいるくらいです。

〈――生徒たちの多様な興味関心を引き出し育はぐくむには、教師の力量も求められるのではないですか。〉

〈田中〉 

生徒と同じように、教職員も多様性に富んだ人材を採用し、適材適所で活躍してもらっています。オールマイティにできる人というよりも、数学を教えるのがずば抜けているとか、生徒の気持ちに寄り添うことに非常に長けているとか、それぞれの持ち味を生かしながら、生徒の多種多様な関心に向き合っているという感じです。

現代は、ほんの数年先を予測することさえも難しい、「正解」がない時代です。既成の価値観や過去の成功ルートがそのまま通用するとは限りません。ですから、私たち教える側も、生徒を「こうしなさい」と上から指導するのではなく、一人ひとりの夢や志望を後ろからうまくフォローしていくというスタンスを大事にしています。

〈――生徒たちのために先生も大変な努力を重ねているのですね。〉

〈田中〉 

有り難いことに、本校を昭和46年に創設した佐藤栄太郎元理事長の教えが、いまもDNAとして教職員にしっかり根づいているんです。例えば、建学の精神である「人間是宝」。つまり人間は誰もが素晴らしい資質を持った宝の原石であり、その原石を磨き上げ、本当の「宝」として育てることが本校の教育の使命であるということです。

校訓の「今日学べ」は、今日という日は一度だけなのだから、今日のことは今日やり、勉強も仕事も明日に残さない生活態度を身につけよということです。

この建学の精神、創設者の心があるから、いまもその志を受け継いだ現場の先生たちは皆生徒をとことん大事にし、団結して物事に取り組んでいけるのだと思います。


(本記事は月刊『致知』2023年7月号「学を為す 故に書を読む」一部抜粋・編集したものです)

◎田中淳子さんの記事には、

・挫折から得た三つの気づき

・僻地教育で学んだ生きる力

・東栄の教育改革へ

・愚直に徹して、その道を進め

など、教育改革の軌跡が余すところなく語られます。詳細はこちら致知電子版でも全文がお読みいただけます】

 

◇田中淳子(たなか・じゅんこ)  

京都府京都市生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業後、世界銀行に就職。通訳兼秘書として東欧を中心としたヨーロッパ各国、アメリカ合衆国などに赴任。帰国後は教員の道に進む。京都、静岡で教壇に立ち、埼玉県では教育委員会の管理職や社会教育施設・青年の家の所長、校長などを歴任。2001年、栄東中学の教頭に着任。2008年12月より栄東中学・高校の校長。2021年4月より同学園の第4代理事長を兼務。

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