2023年06月02日
経営学を始め、様々な分野に多大な影響を与えたピーター・F・ドラッカー。その言葉や教えはいまなお力強い説得力を持ち、私たちの仕事や人生の指針となっています。月刊『致知』では、ドラッカー公認の唯一の学術団体であるドラッカー学会の共同代表理事を務める佐藤等さんの連載を掲載しています。本日はその連載の中から、「自己を刷新するための問い」の大切さを説いていただいた内容をご紹介します。
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日々自己を刷新する問いを持つ
〈佐藤〉
繰り返し用いる問いをもっているだろうか。座右の銘ならぬ座右の問い─「何によって憶えられたいか」はそのような問いです。
この問いをドラッカーが聞いたのは、13歳の宗教の時間でした。先生である牧師は、問いを発した後、このように続けました。
「答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ」
(『非営利組織の経営』)
当時の平均寿命が50歳そこそこであることを考えれば、要は死を迎える頃までには答えられるようになってほしいという意図を伝えたのです。60年ぶりの同窓会でも話題になったといいますから、社会に出る前の生徒たちには相当のインパクトを残したのでしょう。
ドラッカーは、ある歯科医に問いかけ、答えを得ます。
「あなたを死体解剖する医者が、この人は一流の歯医者にかかっていたといってくれることだ」
(『非営利組織の経営』)
「憶えられる」という部分に焦点を合わせると少し打算的な問いにも聞こえますが、本質はまったく異なります。
先の事例でも解るとおり、この問いは自分の仕事の基準に向けられています。しかも評価するのは自分ではありません。それは、専門家をも唸らせる水準の仕事を目指すという自分への宣言です。
解剖はレアケースです。歯科医が生涯でなした仕事の多くは、死後誰にも評価されることはないでしょう。しかし万に一つに備えて精進を重ねる姿が思い浮かびます。
ここに「自己刷新を促す問い」の意味があります。つまり、昨日よりも少しでも良い仕事をしよう、顧客に喜んでもらおうという姿勢で成長し続けるために自分に向けられた問いなのです。
「成長のための偉大な能力をもつ者はすべて自分自身に焦点を合わせている。ある意味では自己中心的であって、世の中のことすべてを自らの成長の糧にしている」
(『非営利組織の経営』)
古くから「学は己のためになす」といいます。しかし成長の結果得た能力は私物化せず、公のために使わなければなりません。このように、「何によって憶えられたいか」に答えることは、志を立てることと同義といえます。ではどうすれば「憶えられる」のでしょうか。
第1に、違いを生み出すために自らを磨き続け、卓越性を追求することです。他人と同じ水準の仕事では憶えられることはないからです。
第2に、その卓越性を用いて日々実践し、成果をあげ続けることです。成果とは自分以外に起こる変化です。成果なしに人が記憶にとどめることはありません。
第3に、その成果が「あの人のおかげで」など何らかの影響を人に及ぼすことです。目的は、憶えられることではなく志を掲げ日々自己刷新を遂げることです。
(本記事は月刊『致知』2019年8月号連載「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」から一部抜粋・編集したものです。)
◎佐藤さんの連載「仕事と人生に生かす ドラッカーの教え」では、毎月ドラッカーの教え・言葉をどう生かすか、マネジメントの要諦を繙いていただいています。
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◇佐藤等(さとう・ひとし)
昭和36年北海道生まれ。59年小樽商科大学商学部商業学科卒業。平成2年公認会計士試験合格。佐藤等公認会計士事務所開設。14年同大学大学院商学研究科修士課程修了。主宰するナレッジプラザの研究会として「読書会」を800回にわたって開催。編著に『実践するドラッカー』シリーズ(ダイヤモンド社)などがある。
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