「おいしいものをお値打ち価格で」——菓子の製造小売業として国内最大規模を誇るシャトレーゼの強み

菓子の製造小売業として国内最大規模を誇るシャトレーゼは、今年創業70周年を迎えました。現在は国内820店舗、海外9か国180店舗の計1000店舗を展開し、400点以上の和洋菓子を手掛けています。 20歳の時に地元・山梨で僅か4坪の焼き菓子店からスタートし、1,000億円企業に育て上げた会長・齊藤 寛さんに、モットーである「おいしいものをお値打ち価格で」 を実現させるシャトレーゼ最大の強みについて伺いました。※記事内容は2023年3月に取材したものです。

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シャトレーゼの強み「ファームファクトリー」

——シャトレーゼは菓子の製造小売業として国内最大規模を誇るそうですね。

〈齊藤〉
当社では新鮮な素材を使用して、安全・安心なお菓子づくりに取り組んでいます。必要な素材を契約農家から直接仕入れ、自社工場で製造した商品を店舗に直送する。この製造・物流・販売を自社で一貫して行うファームファクトリーという独自の流通システムを武器に、400種類以上の商品を手掛けています。

店舗はフランチャイズを主体にして国内に730店舗、海外に9か国160店舗あります。日本の人口が減っていく中で、我われがいま力を注いでいるのはアジアなんです。

アジアの国々の平均年齢は20代と若く、これから結婚して子供を育てていくわけですから、シャトレーゼのお菓子を必要としているんですね。2015年にシンガポールに出店して以来、台湾、マレーシア、中国、UAE、香港、タイ、インドネシア、ベトナムと進出してきました。

——日本の工場で製造した商品を瞬間冷凍して輸送し、現地で解凍して販売することで、行列のできる人気店になったと伺っています。

〈齊藤〉
従来はその方法を取ってきましたが、それだと輸送コストや関税の影響で、日本では安い商品が向こうでは高くなってしまう。それでも富裕層を中心に売れているんですけど、シャトレーゼらしくないと。それで昨年(2022年)インドネシアに工場をつくり、現地生産を始めたんです。今年(2023年)はベトナムでも工場が稼働します。

国内の工場も10か所ほどに増えていましてね。何のためにそうしているかというと、やはりつくりたてのケーキを食べたいじゃないですか。これまではどんなに努力しても、前の日につくったものを夜運んで並べていたので、製造から1日経っていました。これではダメだということで、各地に工場を増設して店舗に直送し、その日につくったものをその日に食べられるように改善しています。

いかにおいしいものをお値打ち価格で提供するか、いろいろ工夫しているわけです。

——昨年(2022年)5月、原材料高騰による食品の値上げラッシュが続く中、シャトレーゼはいち早く価格据え置きを表明し、話題になりました。

〈齊藤〉
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、小麦は10%、油脂は40%と、原材料の高騰が続いています。それでも、当社は商品の値段を上げることはしませんでした。

「値上げしないことへの挑戦」をスローガンに掲げ、お客様が安心して買い物できるよう、我われが自助努力で無駄を省いていこうと。同時期に、社員の給料を10%上げることも発表しました。

——商品の値上げをせず、給料を10%アップするとは驚きです。

〈齊藤〉
それが実現可能なのはまず大前提として、先ほど申し上げたようにファームファクトリーという独自の流通システムを確立していること。その上、社員たちが身の回りにある無駄を見つけて月に500点くらいの改善項目を出してくれ、何とコストが約10億円も浮いたんです。

そのおかげで、宣言通りこの3月までは値上げせずにやってくることができました。

ただ、今回の鳥インフルエンザの流行で深刻な卵不足に陥ってしまい、4月からは値上げせざるを得ない状況です。それでも値上げは数十円程度に留め、できるだけ我慢しようと。ですから、同業他社とはだいぶ差が出ていますよ。


(本記事は月刊『致知』2023年5月号「不惜身命 但惜身命」より一部抜粋・編集したものです)

◉本記事には、「追い詰められないと知恵は出ない」「両親の教えに基づいた『三喜経営』」「若手リーダーを育てるプレジデント制」など、3度の大きな試練を乗り越え、89歳となったいまなお気力漲る齊藤氏の足跡とともに、人生・事業発展の要諦が詰まっています。本記事の【詳細・購読はこちら】

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◇齊藤 寛(さいとう・ひろし)
昭和9年山梨県生まれ。29年20歳の時に焼き菓子店「甘太郎」を創業。5年後、㈲甘太郎を設立し、代表取締役に就任。39年大和アイス㈱を設立。42年2社を統合し、㈱シャトレーゼに社名変更。平成20年代表取締役会長に就任。22年シャトレーゼをはじめ、ワイナリー事業、リゾート事業、ゴルフ事業などを統括して㈱シャトレーゼホールディングスに商号変更し、代表取締役社長に就任。30年より現職。著書に『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』(CCCメディアハウス)。

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