「やってみなはれ」。サントリー事業会社〈初〉の女性社長が語る、ワインづくりに活かされたDNA

1899年、鳥井信治郎氏によって創業したサントリー。長い歴史を持つサントリー事業会社で史上初の女性社長となったのが、「サントリーワインカンパニー」社長・吉雄敬子さんです。吉雄さんに、サントリーで脈々と受け継がれる「やってみなはれ」精神について伺いました。そこには事業発展、ヒット商品を生み出す秘訣が詰まっています。

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商品のよさを広めるにはまずは社内でファンづくり

——社長という立場になって変わったこと、気をつけられていることはありますか?

〈吉雄〉
当然考える幅は広がりましたが、お客様視点に立つなど仕事の基本は変わりません。

周囲から「社長業は大変でしょ?」と声を掛けられます。大変と言えば大変ですが、入社以来、立場ごとに難題の連続でしたから、社長としていまできることを頑張っている、というのが正直な感想です。

——目の前にあることを頑張り続けるしかないと。

〈吉雄〉
やはりサントリーはメーカーですので、最終的にはどれだけよい商品をつくれるかに懸かっています。

そのためには、こんないい商品があって、こんな願いでものづくりをしているという〝思い〟を伝えていくこと。お客様はもちろん、まずは社内の人間に伝えることが不可欠です。商品開発や生産に携わった人から直接商品のよさを聞くと、より営業や販促に熱が入りますよね。

ですからまずは社内で商品のファンをつくり、我が子のように商品を愛して魅力を語れる人を増やすこと。

その際、自分の言葉で喋れるということがポイントで、社員皆が一人10人に商品のよさを伝えられれば、それだけでシェアは確実に伸びていきます。

それに、魅力的な商品があって頑張っている仲間がいると自分も頑張りたくなりますよね。サントリーにはそういうよい雰囲気がどの部署にもあります。

——まさにヒット商品を生み出す秘訣ですね。

〈吉雄〉
新入社員の時に上司から言われていまでも心に残っている教えがあります。

最初の配属先が法務部だったのですが、生意気だった私はその時の上司に「法律のことは分かりません!」と突っかかったことがあります。

すると上司は「何を言っている。君はメーカーに入ったんだ。サントリーの商品を売るための法務部員であって、専門家の弁護士は別にいる。自分たちの商品を売るために一所懸命仕事をするのは、法務部でも宣伝部でも事業部でも皆一緒だよ」と。

皆がサントリーという会社のためにそれぞれが与えられた場で頑張っている。この教えが私の原点であり、それ以降、どんな場でも意欲的に働けるようになりました。

——素敵な上司に恵まれましたね。

〈吉雄〉
仕事とプライベートの切り替え、オンオフと言いますけど、私は常にオンオンというか、明確な区別がありません。

プライベートの時に仕事のアイデアを閃くことがありますし、子育てや忙しい合間を縫って行う家事からも学ぶべきことが本当に多くあります。

夫婦で育児と家事のマネジメントが上手にできたら、会社のマネジメントもうまくできるのではないかと本気で思っています(笑)。

私はこれまで、子育てをしているからといって、やりたいことの幅を狭めないように挑戦してきました。当然失敗もありましたけれど、失敗を恐れず新しいことにチャレンジすることをモットーにしてきたから今日があります。

その精神こそが「やってみなはれ」の教えであり、サントリーに脈々と流れるDNAだと思います。


(本記事は月刊『致知』2022年11月号 連載「第一線で活躍する女性」より一部を抜粋・編集したものです)

◉本記事では、この他にも「のびのび働けるよき社風のもとで」「お客様目線での商品開発」等、失敗や挫折を恐れることなく、「やってみなはれ」精神で道を切り開いてきた吉雄さんの足跡を辿ります。詳細は下記バナーをクリック。

〈致知電子版 アーカイブ〉でも全文お読みいただけます。

◇吉雄敬子(よしお・けいこ)
昭和43年東京都生まれ。平成3年慶應義塾大学卒業後、サントリー入社。ビール事業部ブランド戦略部課長、サントリー食品インターナショナル食品事業本部ブランド戦略部部長などを経て、令和3年にサントリーワインインターナショナル社長に就任(サントリー事業会社で初の女性社長)。4年より現職。

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