闘魂を持たなあかん——稲盛和夫氏が日本航空副社長・清水新一郎氏にかけた激励の言葉

長年弊誌を応援してくだった京セラ創業者・稲盛和夫氏への感謝の思いを込め、編集部が総力を挙げて制作した月刊『致知』2022年12月号「追悼 稲盛和夫」。本号は11月1日の発刊以来、非常に多くの反響と感動の声をいただき、いまなおその熱は収まることはありません。その追悼号より、稲盛氏と共に破綻したJAL再建に邁進した日本航空副社長・清水新一郎さんの記事の一部をご紹介します。

稲盛氏に学んだリーダーシップの神髄

〈清水〉
稲盛さんが初めて当社にいらっしゃった日のことは、いまでも鮮明に記憶しています。集まった役員・幹部を前に、稲盛さんはJALが置かれている状況や再建を引き受けた理由などを、言葉を選びながら静かに教え諭すように語られました。自分の主張を押しつけたり、言葉を荒げて檄を飛ばすといったことは全くなく、終始、凛としたお姿が印象的でした。

そのように再建は静かにスタートしたのですが、以後、私は稲盛さんから多くのことを直接教えていただく機会に恵まれました。

まずはっとさせられたのは、幹部として日々の数字や採算性をしっかり自分の目で見て、把握することの大切さです。例えば、朝から夕方まで3日間にわたって行われた部門別の業績報告会で、稲盛さんは全社の数字でびっしり埋まった何十枚ものA3用紙にさっさっさと目を通しながら、一つひとつの項目に対して、「この数字はなぜこうなっているんだ」と疑問点や問題点を的確に指摘していかれました。

3日間ともなれば疲れも出てくるはずですが、稲盛さんはその素振りを全く見せず、最初から最後までまさに〝ど真剣〟に数字と向き合っておられました。

その気迫・迫力たるや凄まじいものがあり、おそらくご自身の姿勢を通して、私たちに改めて経営というものの根本、数字の見方を仕込むんだとの気持ちがおありだったのでしょう。確かにこれまでのJALでは、細かい数字は部下任せという風潮がありました。

それから、間もなくして始まった役員・幹部を中心としたリーダー勉強会&コンパでも、稲盛さんの素晴らしさを身を以て実感させられました。稲盛さんの講話もさることながら、コンパの際に稲盛さん自らテーブルを回って、「どうだ、呑んでいるか?」「ほら、おにぎりもっと食べなさい」と、参加者一人ひとりを気遣ってくださったのには、驚くと共に非常に心励まされました。

私も背中をばんばん叩かれて、「闘魂を持たなあかん」と励ましの言葉をいただいたことが印象に残っています。しかも合宿などを除き、稲盛さんが中座することはありませんでした。

稲盛さんの仕事への気迫、愛情溢れる励ましが、破綻して元気を失っていたJALの社員をどれだけ勇気づけてくれたことでしょう。「俺は覚悟を持って、皆と一緒に再建をやり遂げるんだ」という強い思いが、日々の言動からビシビシ伝わってきて、日を重ねるごとに稲盛さんにグワーッと引き込まれていくのを感じました。

そこには理屈を超えたリーダーシップがありました。


(本記事は月刊『致知』2022年12月号 特集「追悼 稲盛和夫」より一部抜粋・編集したものです)

◎本記事には、

 ・「暗闇の中に差した一筋の光」
 ・「稲盛さんに学んだリーダーシップの神髄」
 ・「明るく前向き、謙虚にして驕らず」

など、清水さんが稲盛氏と身近に接する中から掴んだ人生、仕事の極意が満載です。本記事の詳細・ご購読はこちら
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◇清水新一郎(しみず・しんいちろう)
昭和37年東京都生まれ。60年日本航空(JAL)入社。客室企画部長、常務執行役員人財本部長、取締役専務執行役員秘書室長などを歴任し、令和2年より現職。


◇追悼アーカイブ
稲盛和夫さんが月刊『致知』へ寄せてくださったメッセージ

「致知出版社の前途を祝して」
平成4年(1992)年

 昨今、日本企業の行動が世界に及ぼす影響というものが、従来とちがって格段に大きくなってきました。日本の経営者の責任が、今日では地球大に大きくなっているのです。

 このような環境のなかで正しい判断をしていくには、経営者自身の心を磨き、精神を高めるよう努力する以外に道はありません。人生の成功不成功のみならず、経営の成功不成功を決めるものも人の心です。

 私は、京セラ創業直後から人の心が経営を決めることに気づき、それ以来、心をベースとした経営を実行してきました。経営者の日々の判断が、企業の性格を決定していきますし、経営者の判断が社員の心の動きを方向づけ、社員の心の集合が会社の雰囲気、社風を決めていきます。

 このように過去の経営判断が積み重なって、現在の会社の状態ができあがっていくのです。そして、経営判断の最後のより所になるのは経営者自身の心であることは、経営者なら皆痛切に感じていることです。

 我が国に有力な経営誌は数々ありますが、その中でも、人の心に焦点をあてた編集方針を貫いておられる『致知』は際だっています。日本経済の発展、時代の変化と共に、『致知』の存在はますます重要になるでしょう。創刊満14年を迎えられる貴誌の新生スタートを祝し、今後ますます発展されますよう祈念申し上げます。

――稲盛和夫

〈全文〉稲盛和夫氏と『致知』——貴重なメッセージを振り返る

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