誰に対しても対等に接する人——ユニクロ創業者・柳井正はなぜ稲盛和夫を尊敬するのか

家業の紳士服店を、世界的衣料品企業に育て上げたファーストリテイリング社長の柳井正さん。現在(記事掲載時)、ファーストリテイリングはアパレル製造小売業で売上高が世界第3位、時価総額は世界2位を誇ります。そんな柳井さんが尊敬する経営者が、2022年8月にお亡くなりになった京セラ創業者の稲盛和夫さんです。

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稲盛さんに学んだコミュニケーション力

〈柳井〉
半世紀もの長きにわたり強力なリーダーシップで日本の経済界を牽引し、我が国の経済発展に大きく貢献され、これからのポスト・コロナ時代にますます存在感を発揮されるものと思っていただけに、突然の訃報は残念でならない。

国内外の情勢がますます混迷を深めるいまこそ、稲盛さんは必要な人物だったと思う。政治家や官僚や企業経営者が自分の利益のためだけに発言し、行動していては、日本は針路を誤ってしまう。

彼はその時々の状況に合わせて真正面から常道的な正論を述べ、国全体のことを思って仕事をする数少ない企業経営者だった。

私が稲盛さんと初めてお会いしたのは、いまから9年前である。雑誌社からの依頼を受けて一時間ほど対談をした。その時に抱いた印象は、とにかく好奇心が旺盛な人だということだ。

かねてユニクロは中国を生産拠点とし、世界各国に店舗展開していた。稲盛さんが主宰する盛和塾は中国の経営者にも大変な人気で塾生が増えていた。そんな背景もあってか、「中国で成功した要因は何ですか」と頻しきりに質問された。

このような理由で成功しましたと申し上げても納得されず、何回も違う角度から聞いてこられたのである。学んで吸収しようとの思いが強くあったのだろう。

稲盛さんと私は17歳の年齢差がある。普通は年下の人にそんなことを聞かないし、反対に質問してこいという態度を取るものだ。稲盛さんは年齢や立場などに拘わらず、誰に対しても分け隔てなく対等に接する方だった。

職階に関係なく、あらゆる人と直かにコミュニケーションしていくことが企業経営者には必要だが、いまの日本の大企業の社長を見ていると、往々にしてそこが抜けている。トップの言葉が平社員まで伝わっていない。

それどころか、中間管理職が自分の都合のいいように解釈し、トップがAと言ったら次の人にBと伝わり、最終的にはZになっているという有り様だ。

稲盛さんのように経営者が社員と直にコミュニケーションしない限り、全社を挙げて改革することはできない。その上、「アメーバ経営」によって平社員も含めて一人ひとりに責任を求め、役割と権限を与えた。

そこが稲盛さんの奇特なところであり、尊敬している。


(本記事は月刊『致知』2022年12月号「追悼 稲盛和夫」より一部抜粋・編集したものです)

◎『致知』2022年12月号「追悼 稲盛和夫」には、ユニクロ創業者・柳井正さんのインタビューを掲載。本記事には、

・「好奇心が旺盛で誰にでも対等に接する人」

・「人生を懸けてど真剣に経営に当たる」

・「成功は毎に窮苦の日に在り」

など、柳井さんが稲盛氏に学んだ人生、仕事の極意がぎっしり詰まっています。あなたの人生、仕事をひらく本記事の詳細・ご購読はこちら「致知電子版」でも全文をお読みいただけます】

◇柳井正(やない・ただし)

昭和24年山口県生まれ。46年早稲田大学卒業後、ジャスコ入社。47年同社退社後、父親の経営する小郡商事に入社。59年カジュアルウェアの小売店「ユニクロ」第1号店を出店。同年社長就任。平成3年ファーストリテイリングに社名変更。11年東証1部上場。14年代表取締役会長兼最高経営責任者に就任。いったん社長を退くも17年再び社長復帰。現在、アパレル製造小売業で売上高は世界第3位、時価総額は世界第2位。著書に『一勝九敗』(新潮社)などがある。


◇追悼アーカイブ
稲盛和夫さんが月刊『致知』へ寄せてくださったメッセージ

「致知出版社の前途を祝して」
平成4年(1992)年

 昨今、日本企業の行動が世界に及ぼす影響というものが、従来とちがって格段に大きくなってきました。日本の経営者の責任が、今日では地球大に大きくなっているのです。

 このような環境のなかで正しい判断をしていくには、経営者自身の心を磨き、精神を高めるよう努力する以外に道はありません。人生の成功不成功のみならず、経営の成功不成功を決めるものも人の心です。

 私は、京セラ創業直後から人の心が経営を決めることに気づき、それ以来、心をベースとした経営を実行してきました。経営者の日々の判断が、企業の性格を決定していきますし、経営者の判断が社員の心の動きを方向づけ、社員の心の集合が会社の雰囲気、社風を決めていきます。

 このように過去の経営判断が積み重なって、現在の会社の状態ができあがっていくのです。そして、経営判断の最後のより所になるのは経営者自身の心であることは、経営者なら皆痛切に感じていることです。

 我が国に有力な経営誌は数々ありますが、その中でも、人の心に焦点をあてた編集方針を貫いておられる『致知』は際だっています。日本経済の発展、時代の変化と共に、『致知』の存在はますます重要になるでしょう。創刊満14年を迎えられる貴誌の新生スタートを祝し、今後ますます発展されますよう祈念申し上げます。

――稲盛和夫

〈全文〉稲盛和夫氏と『致知』——貴重なメッセージを振り返る

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