坂田道信さんが「生き方の道標」と称した〝読めば心が熱くなる教科書〟

シリーズ累計38万部の大ヒットとなっている「読めば心が熱くなる教科書シリーズ」。この2冊をいつも手元に置き、「生き方をいい方向に導く道標」として精読していただいているのが「ハガキ道」の実践者・坂田道信先生です。一道を極めた人々の偽りないストーリーをどのように受け止め、どのように生かすことが大切なのか。混迷の世を生き抜く術としての読書論を伺いました。

登場人物の現実の中に真理を見いだす

〈坂田〉
「仕事の教科書」と「生き方の教科書」、この二冊は本当にいい本だね。私はいつも自分のそばに置いておいて、1日1話というんでなしに暇があると読んどるんよ。

この本で紹介されるのは、一人の人間が全身で打ち立てた生き方ですよね。それぞれの登場人物のね、自分の体験や生きてきた姿が表れとるでしょう。文章の背後から、そういう人たちからの伝言が聞こえてくるようになるんですよね。

つまり、論理でなしに、実際の体験というもんが表れとる。

私は一つひとつの話を読みながら、自分事に置き換えて考えるんだけれども、ほんとうに他人事にならんのだよなあ。私は学校へも行ったことがない身でね、28歳まで読み書きもろくにできんかった。

そんな私がきょうまで生かしてもろうた延長線上に、それぞれの話の主人公たちの物語がつながっとるような感じがするんですよね。そして文章の向こう側にどん底から這い上がってきた私の姿が見えてくるんですよね。

そして、本というんは、1回読んだきりではダメじゃということにも気づいたんですよね。1回目は「ああ、この人はこういう生き方だなあ」というね、表面の文字の羅列を読むんです。

だけど2回目を読みよったらね、新しい発見や教えが次から次に出てくるようになっとるんだね。

今、4回目を読んどるんだけどね、読むたんびに新しい発見、新しい教えに出会えるんですよ。新しい発見、新しい教えに出会えるということは、それだけ文章に広さと深みがあるということですよね。

つまり、本を読むことで自分の日常で新しい行動が起こるような読み方をしないとね。

二宮尊徳が言うとるでしょう。「本の中に真理はないよ、現実の中に真理があるんだよ」って。そんな読み方をしないといけないんだと、新しい本の読み方がこの本で分かりました。

それは何べんも何べんも繰り返して読むうちに、自分の肉体と一緒になるということですよね。

人間は弱いですからね、ぼやっとしとけば心は崩れていくがね、いいものに接し続けていれば、いい人生になるでしょ。そこのところをこの「1日1話」の本から教えていただいたなあ。

大事なことは、書いてあることを否定してはダメじゃいうことですよね。

「この人はこういうことを言うとるが、私はそうは思わない」というような捉え方をしたのでは、書いてあることが自分と物理的に同一になるような世界は訪れないんですよね。

文章に書かれてあるような体験が、たとえ自分にはなかったとしても、「この人はこういう姿勢で生きてきたんだ」と信じる。そしてその生き方に近づいていくような読み方をしないとね。

人格というんは、体験の広さと深さとで、真理にどれくらい近づけたかによって形づくられるものじゃないかなあ。

この本を読んで、登場人物の生き方の一つひとつを自分事に落とし込むことによって、それができればいい人生を送れるんじゃないですかね。私にはこの本によって、そういう読み方が与えられたということです。

すべての者を生かす共生時代を生きる道標

去年、オリンピックがあって、盛り上がったように思っている人もいると思いますけどね。そのあと、いろんな不正があったことが明るみに出てきとるでしょう。

あれは、オリンピックはもう終わったということだと思います。オリンピックに限らず、誰よりも優秀であることを競うようなことには価値がないということです。

私たちの時代、角界には双葉山という大横綱がいて、69連勝したんですよ。そして、70連勝を懸けた大一番で安芸ノ海という広島出身の力士に負けるんですよね。

その時の双葉山がすごくてね、「いまだ木鶏たりえず」と言うたんだよな。

誰もが双葉山は70連勝を目指しとったと思っていたし、今もそう思うとる人が大半でしょう。

しかしね、双葉山は勝つことでなしに、「木鶏たりえる相撲」を取ることに焦点を当てとったんじゃろうね。勝つか、負けるかは問題じゃない、今も世間に蔓延っとる勝った方がいいという価値観とはかけ離れたところで相撲を取っておったんよね。

双葉山にとって70連勝ができなかったことは問題ではなく、「木鶏たりえる」状態で土俵に上がれなかったことが問題だったということですよ。

オリンピックの話を挙げたけれども、そろそろ、自分だけが勝ち続け、生き残ればいいという競争の時代は、もう終わりにしないと人類は持ちそうもないということに気づかなならんだろうね。

優秀な者だけが勝ち残るんでなしに、すべての者を生かすのが、これからの人類がしなければならない生き方ですよ。森信三先生も「恵まれない人たちが世の中を支えている」と言うたでしょう。

加えて、私は科学の時代は終わったと思っとるんです。科学というのは、人類にずいぶんと役に立って、今の発展があるんですが、かねてから一部地域やところどころにその破綻が見えるようになってきていました。

それが今は、世界中のいたる所にその破綻が現れるようになって、修復ができないような事態になっとるでしょう。元をただせば、それらも人類の生き方が招いたものですよね。それを改めんといけん時がきとるということです。

そもそも、科学というのは、日常を理解しない人たちの使う道具ですよね。どういう意味かといったら、相手を説得するために90パーセント以上の確かなものを示すというように使うのが科学であってね、世の中にあるものの大半は、51対49のようにね、どっちを選ぶかはっきり分からんようなもんばかりで、その選択の羅列が私たちの日常でしょう。

つまり、私たちは、どっちを選んでもいいんじゃないかという道を歩くようになっているんじゃないかなあ。どっちを選んでもいいんだけど、そのとき、自分の生き方にいい方を選ぶということが大切なんじぁないかと思うんですよね。

これからは、他人(ひと)のネットワークで生きるんではなしに、自分自身でネットワークをつくらんといけんのですよ。

他人のネットワークというんは、他人がつくったルールですからね。生きる上では、自分のネットワークをつくって、その中で生きるという自立性がこれからは求められるんじゃないかなぁと思うようになったんですよ。

そういう意味で、「1日1話」の本は、次の時代を私たちが生きるための指針になるバイブルなんですよね。

今の世の中を救う本で、一生懸命生きている人を生かそうとする本です。世の中を次の時代に導くために天が与えてくれた本の一つだなあという感じがしております。

もっと言えば、形態は本ですけれども、私たちの生き方をいい方向に導く道標なんだろうと感じるんですよね。それほど、生きていくのに必要なことが詰まっとる。

今までのような生き方では生き切れない時代になった今、次の時代を生きる道標が欲しかった私たちに、神さまが授けてくださったと思ってこの本を読んでるんですよ。


(本記事は坂田先生の語り下ろしです)

◎『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』
(藤尾秀昭・監修 定価=各2,350円+税)

 

◉詳細・ご購入は画像(▲)をクリック!

シリーズ累計38万部突破。『致知』に掲載された1万本以上人物インタビューと弊社書籍の中からセレクトした730本の感動実話を収録。各界一線で活躍する方の仕事術や発想法に触れることができるほか、深い人生体験に根ざした生き方の哲学も味わえます。

◇坂田道信(さかた・みちのぶ)
昭和15年広島県生まれ。県立向原高校を卒業し、農業の傍ら大工見習いとなる。46年森信三先生と出会い複写ハガキを始める。ハガキによるネットワークを確立し、講演などで全国を飛び回る一方、食への関心を深め、自宅を開放した半断食、坐禅断食の会や料理教室を開催。著書に『ハガキ道に生きる』『この道を行く』(共に致知出版社)などがある。

人間力・仕事力を高める記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

『致知』には毎号、あなたの人間力を高める記事が掲載されています。
まだお読みでない方は、こちらからお申し込みください。

※お気軽に1年購読 10,500円(1冊あたり875円/税・送料込み)
※おトクな3年購読 28,500円(1冊あたり792円/税・送料込み)

人間学の月刊誌 致知とは

閉じる