【担当編集者が語る】山中伸弥さんと野口聡一さんはなぜ、どん底から立ち上がれたのか

『致知』2022年10月号 特集「生き方の法則」の表紙を飾っていただいた野口聡一さん。3度の宇宙飛行を経て、このほどJAXAを退職し、新たな挑戦と創造のスタートラインに立たれました。本誌では、奇しくも12年務めた京都大学iPS細胞研究所所長を退任し、本懐である研究により一層邁進していこうとする山中伸弥さんとご対談いただきました。

この二人の共通点はそれに留まりません。人生のある時期に燃え尽き症候群、どん底の状態を味わいながら、見事に立ち直って素晴らしい研究成果を出してこられました。企画・司会を担当した本誌編集長より、記事内容を一部抜粋しながら紹介します。

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宇宙と細胞 ~ 極大と極小の世界を見つめて

――こちらの対談が決まった経緯を教えてください。

昨年5月に自身3回目となる宇宙飛行を終えて地球に帰還し、話題を集めていた野口聡一さんに興味を持って調べると、「人間は宇宙でいかにして安定するのか」「宇宙は人間をどう変えるのか」といった哲学的な問題をライフワークとし、ご著書やYouTubeチャンネルで積極的に発信していることが分かりました。

編集会議を重ねる中、iPS細胞の開発でノーベル賞を受賞された山中伸弥さんと組み合わせてはどうかというアイデアが生まれ、双方に取材依頼をすることになったんです。

山中さんにはこれまで何度か『致知』にご登場いただいており、ぜひお受けしますとのお返事を頂戴しました。野口さんとは面識がなかったものの、ある知り合いの経営者が主催するイベントに野口さんが登壇されると知り、その時にご挨拶をさせていただき、ご快諾賜ることができました。

――実際に取材してみて、どうでしたか。

この対談は当初、京都大学iPS細胞研究所で行われる予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、やむを得ずオンライン開催となりました。

オンラインという不安定な環境の中で、しかも多忙ゆえに1時間という限られた時間の中で、創刊44周年記念号のトップを飾るに相応しい人間学の話を引き出さなければならない。

その重圧からか、取材前は珍しく緊張で心拍数が上がっていました。ただ、事前の準備とシミュレーションを徹底していたおかげで、ポイントを押さえた深みのあるお話を拝聴することができ、お二方にも喜んでいただくことができました。

――この記事を通じて読者の皆様に伝えたいことは何ですか。

それはもう対談記事の内容、全部です(笑)。

1点だけ挙げるとすれば、お二方とも素晴らしい功績を残されていますが、その過程では、数々の逆境や挫折、失敗を味わっており、それを跳躍台として、レジリエンス(回復力・復元力)を発揮してきたということです。

「アメリカ留学後、鬱病になった時期に、8割から9割は当然うまくいかないけれども、 そのうまくいかないことの中からいろいろなチャンスが生まれると気持ちを切り替えました。まずは挑戦してみてそこで思い通りにならなくても、それを受け入れてチャンスだと捉える。iPS細胞を発見できたのもこの心構えのおかげなんです」(山中氏)

「燃え尽き症候群という長く暗いトンネルを抜け出せたポイントは、自分がやりたいことや自分の価値を他人に決めさせないということですね。自分が心の底から実現したいことや自分が達成すべき目標、それを組織や社会から与えられるのを待つのではなく、自分から自分から追いかけていくと、人生はもっと可能性が開けていく」(野口氏)

お二方がそれぞれの体験を通して掴まれた言葉に学び、自らの人生・仕事を発展させていきたいものです。

今月号の「読みどころ」をピックアップ!

今号には対談記事以外にも、ぜひ目を通していただきたい内容が満載。ここでは編集部より、2つだけピックアップしてお届けします!

1⃣「巻頭の言葉」の執筆陣に後藤俊彦氏が加入しました

これまで5年以上にわたって同欄に貴重な提言を賜ってきた千玄室氏(茶道裏千家前家元)が、2022年8月号で最後の寄稿となりました。

それに伴い、弊誌同年1月号で表紙を飾った後藤俊彦氏(高千穂神社宮司)が、新たに執筆陣に加わりました。

神社界最高位の「長老」を冠する存在であり、10年来の『致知』愛読者でもある後藤氏の貴重な提言を深く読み込みたいものです。

2⃣人気エッセイコーナー「致知随想」、今月も注目です!

毎号、分野を問わず市井で活躍されている様々な方にご登場いただいている「致知随想」。多くの方から感想が寄せられる、創刊以来の人気コーナーですが、今月号85ページに掲載されているのはテクノ・パピルス会長 春田安治さんです。

記事タイトルは「忘れ得ぬ面構え 我が友稲盛和夫君の思い出」。何と春田さんは、先日お亡くなりになられた京セラ名誉会長・稲盛和夫さんの小学校時代の同級生なのです。

これまであまり知られることのなかった稲盛さんの幼き日の素顔が、春田さんの回想によって明かされます。

以上、お手元に『致知』が届いたら、まずはこちらからチェックしてみてください!


(文責:編集部)

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