台湾有事は起こり得るのか、日本はいかに抑止力を高めるか——番匠幸一郎×兼原信克

左が番匠氏、右が兼原氏

まさにいま世界の安全保障を巡る環境は激変の時を迎えています。日本はいかに防衛力・抑止力を高め、危機の時代を生き抜いていけばよいのか。国際情勢、安全保障に精通する元陸上自衛隊西部方面総監・番匠幸一郎さんと元国家安全保障局次長・兼原信克さんのお二人に、日本が直面する厳しい現実、台湾有事への備えについて語り合っていただきました。

抑止力をいかに高めるか

〈兼原〉
……本当にその通りで、日本はいま世界の安全保障の最前線、一丁目一番地にいる。このことをよく認識しておかなくてはなりません。

それで台湾有事が現実に起こるかどうかですが、習近平が3期目に突入し、これからまた5年間頑張っていこうといういまのタイミングではないでしょうね。しかし、3期目が終わる2027年、あるいは4期目が終わる2032年のタイミングで台湾侵攻に踏み切る可能性が高い。

というのは、その頃には習近平の独裁が行きすぎて、プーチン大統領のように、周りに誰も意見できる人間がいなくなるからです。また、その頃はアメリカを軍事力で超えているかもしれない。そこで習近平が「台湾に行くぞ」といえば、本当に台湾侵攻が始まってしまう。

だから、一番のリスクは、このまま習近平が2030年代まで主席の座に留まっていることですよ。

〈番匠〉
中国は、「台湾は自分たちの一部である」とずっと言い続けているわけです。これはウクライナ侵攻とも似ていて、プーチン大統領もロシアとウクライナは民族的に一体だと言ってきました。独裁的な指導者には、言ったことを本当に実行してしまう怖さがあるんですよ。

台湾有事も、中国が専制的な独裁国家である限り、あるかないかを議論するより、「ある」ことを前提に備えをしていくことが必要です。

とはいえ、台湾有事が日本とどれだけ関係してくるのか、イメージがつかない方もいらっしゃるかもしれません。台湾は遠く離れた国のように思えますが、実は日本の与那国島から約110キロの距離なんですね。もう目と鼻の先ですよ。その台湾で有事が起これば、日本が関係ないということはあり得ない。

〈兼原〉
台湾有事は、即・日本有事であると認識することが必要です。

〈番匠〉
では、日本はそうした状況に対し具体的にどうすればよいのかということですが、私は有事が起こった時はもちろんのこと、有事をどう起こさせないかという視点が非常に重要だと思っているんです。要するに、抑止力をどう高めるかです。

そのためには様々な対策をやらなければいけませんけれども、一つには、与那国島から石垣島、宮古島、沖縄本島、奄美諸島、九州に至るまで、本州と同じくらいの長さの1600キロもある南西地域の防衛態勢をより磐石なものにする必要があります。

南西諸島に部隊を置き、対艦ミサイルや対空ミサイルといったそれなりの兵器を備えることで、中国が台湾に手を掛けづらい状況をつくる。とにかく、攻める側の中国が嫌がること、攻めにくいと感じることをどんどんやっていく。

それからもう一つは、同盟国であるアメリカ軍の来援基盤をしっかり構築することです。中国が台湾有事において最も嫌がるのは、アメリカが参戦することですから、アメリカが台湾を支援するための基盤を日本が整備することは、侵略の敷居を高める、かなり大きな抑止に繋つながることは間違いないでしょう。


(本記事は月刊『致知』2022年9月号 連載「意見判断」から一部抜粋・編集したものです)

◉『致知』2022年9月号「実行するは我にあり」には、番匠幸一郎さんと兼原信克さんの緊急対談を掲載。本対談では、

「外交と防衛は安全保障の車の両輪」
「日本は安全保障の一丁目一番地」
「海洋核トマホークを復活させよ」
「核シェアリングの議論は待ったなし」
「現実を直視した防衛議論を」

など、緊迫化する国際情勢の分析、日本がとるべき具体的な防衛政策など、世界と日本のいまを理解するヒントが満載です。ぜひご覧ください。詳細・ご購読はこちら致知電子版でも全文がお読みいただけます】

◇番匠幸一郎(ばんしょう・こういちろう
昭和33年鹿児島県出身。55年防衛大学校卒業。平成12年米国陸軍戦略大学卒業。第三普通科連隊長兼名寄駐屯地司令、第一次イラク復興支援群長、幹部候補生学校長、陸上幕僚監部防衛部長、陸上幕僚副長、西部方面総監などを歴任し、27年退官。30年まで国家安全保障局顧問。現在は拓殖大学客員教授、全日本銃剣道連盟会長を務める。共著に『核兵器について、本音で話そう』(新潮新書)など。

◇兼原信克(かねはら・のぶかつ
昭和34年山口県生まれ。東大法学部卒業後、外務省入省。国際法、安全保障、ロシア(領土問題)が専門分野。条約局法規課長(現国際法課長)、北米局日米安全保障条約課長、国際法局長などを歴任。国外では米国、韓国の大使館や政府代表部に勤務。第二次安倍政権で内閣官房副長官補(外政担当)、国家安全保障局次長を務める。平成元年退官。著書に『日本の対中大戦略』(PHP新書)、共著に『核兵器について、本音で話そう』 (新潮新書)『国難に立ち向かう新国防論』(ビジネス社)など。

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