「面接したら100%採用」——全国1位の非行少年雇用を誇る野口石油の“愛”の経営

福岡県北九州市内にガソリンスタンド3店舗を構える野口石油。ここで、160人以上に及ぶ非行少年を雇用してきたのが、会長の野口義弘さんです。ご自身が少年時代に味わった誰にも相手にされない寂しい思いを非行少年に抱かせないため、活動を続けておられます。非行少年雇用実績で全国1位の同社で行われている驚くべき採用活動の実情と地域の人々に愛される理由についてお話しいただきました。
 〈写真後列中央が野口さん。内容は掲載当時のものです〉

一生懸命さは必ず伝わる

〈野口〉
野口石油では面接をしたら絶対に断らないというのを、一つの売りにしてきました。

――面接をしたら、必ず雇うと。

〈野口〉
そうです。そもそも非行少年たちがハローワークを訪ねることなんて100%ありませんから、警察関係や保護観察所、保護司などが間に立って、面接に連れてこられるわけでしょう。

でも、たとえ嫌々ながら面接を受けさせられたにしても、そこで断られたら、彼らは自己否定感を味わうと思うんですよ。「どうせ俺なんてつまらんやつだ」って。私は子供たちにそんな思いを絶対にさせたくありません。だから、どんな子であろうと面接したら即採用します。

それから野口石油には解雇という言葉がありません。ですから、再び罪を犯すことがあっても辞めさせませんし、18歳になったらちゃんと運転免許を取らせるなどステップアップして、野口石油よりもよい会社に就職させることもしてきました。

私は非行少年たちを長年見てきましたが、いまも全国に少年院でお世話になっている子供が3600人ほどいると聞きますが、そういった子供たちが地元に帰ってきた時に、立ち直る機会を与えるのが保護観察所協力雇用主の役割なので、いまも一生懸命やっているところです。

――少年少女の教育と会社経営、野口さんはこの2つを両立してこられたわけですね。

〈野口〉
実はうちにはもう1つ全国1位があって、それがご来店されるお客様の洗車率です。名古屋にビユーテーという国内シェア約6割の洗車機メーカーによる評価ですが、だいたい一つのスタンドで月に1500台から2000台は洗車していますね。これが経営の大きな基盤になっているんですよ。

実は平成7年にスタンド経営を始めたものの、最初の半年間はずっと赤字続きでした。

当時はセルフ販売の解禁で業界再編が進んでいたことから、生き残るためにと利益率の高い洗車に力を入れることにしました。そして独自に開発した「Nポリマー」というコーティング剤を使った洗車の仕上がりが地元で評判になったことで、洗車台数が大きく伸びたんですよ。

うちは給油もセルフではないので、すべて人の手を通じて、温かみのある接客を心掛けてきました。スタッフは皆一生懸命ですから、お客様に他の商品をお勧めすると、ご褒美に買っていただけることも多いんですよ。

――地域のお客様とよい関係を築かれているわけですね。

〈野口〉
私の標語は「一生懸命」です。

実際、うちの会社では個人の能力がバラバラなので成果主義は取っていません。その代わり、例えばある商品を100万円売る能力があって70万円販売できたA君と、50万円売る能力しかないけれども40万円販売できたB君がいた場合、私はB君を評価します。つまり一生懸命さを評価すると。一生懸命さというのは、お客様にもちゃんと伝わります。

ですからうちのスタンドには、3店舗ともお客様から差し入れをたくさんいただくんですよ。おかげさまで、お菓子が途切れたことがありません。

――では差し入れの数でも、日本一かもしれませんね(笑)。

〈野口〉
そういう意味では、我われの仕事は地域の人たちから恩恵を受けて成り立っているわけで、本当に謙虚な気持ちになります。ですから、「経営はこうだ」なんていうノウハウは野口石油には1つもないんですよ。


(本記事は月刊『致知』2016年12月号 特集「人を育てる」より一部を抜粋・編集したものです)

◎『致知』2022年9月号 特集「実行するは我にあり」に野口義弘さんが再び登場!

同じく北九州市で子供たちと向き合い続けてきた、野口さんと旧知の仲であるスクールカウンセラーの堀井智帆さんと語り合っていただきました。

・「愛というのは与えっ放しでないといけない」
・「大人たちの本気が子供たちの未来を決める」
・「無償の愛は子から親に注がれている」

等々、お二人の壮絶な体験の中で掴んだ生き方の哲学は深い感動を与えてくれます。

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◇野口義弘(のぐち・よしひろ)
昭和18年鹿児島県生まれ。熊本県内の中学卒業後、九州産交に入社。ガソリンスタンド会社に勤務後、平成7年野口石油を設立、社長に就任。同年福岡保護観察所に協力雇用事業所として登録。現在、北九州市内に3か所のガソリンスタンドを経営。160人を超える非行少年たちを雇用してきた。27年吉川英治文化賞を受賞。

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