自ら戦わない国は、他国からも見放される——葛城奈海さんの体験的国防論

里山保全に取り組む中、ある古老の祈りに触れたことで、日本の伝統文化・歴史を守り伝えていく使命に目覚めたというジャーナリストの葛城奈海さん。言論活動だけでなく、実際に漁船で尖閣諸島海域に渡る、予備自衛官捕の公募に応募するなど、自らの行動を以て国を守ることの大切さを訴えていらっしゃいます。
そんな葛城さんに、活動の原点となった体験、激動の時代を生きるいまの日本人へのメッセージをいただきました。

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国を守る気概を取り戻せ

〈葛城〉
戦後教育を受けて育ち、以前は国を守ることに全く関心がなかった私に転機が訪れたのは、大学の農学部を出て地元埼玉県の有志グループに加わり、里山保全に取り組んでいた時のこと。

水源確保のため、やむなく森林内の溜池周囲の木を伐採することになった際、指導役の古老が木にお米とお塩とお酒を供え、「命をいただきます。ありがとうございます」と一心に感謝の祈りを捧げたのです。

私はその神々しい後ろ姿に釘づけになり、思ったのです。国を守るというのは、国土や国民など形あるものを守ることだけをいうのではない。いま古老が身を以て示されているような自然観など、先人から連綿と受け継がれてきた大切な文化、伝統、価値観をしっかり継承していくことなのではないか。

その瞬間、国を守ることの意義が、私の中でストンと肚に落ちたのです。

私はその後、ジャーナリストとして活動を始めました。そして国防への意識を行動に移したいという思い、自分の五感を通じて体感した言葉を発したいとの思いから、2000年に市谷へ移った防衛省の新しい庁舎と市ヶ谷記念館を案内するツアーガイドを始めました。さらに予備自衛官補の一般公募が始まったのを機にこれに応募し、第一期生になりました。

こうした経緯から自衛隊を取材する機会にも恵まれるようになった私は、先述の尖閣諸島にまつわる政府の対応にも見られるような日本の矛盾点、戦後体制の闇の深さを痛感するようになったのです。

私が特に気懸かりなのが、国を守るという姿勢がいまの日本に感じられないことです。同盟国のアメリカが守ってくれるといいますが、国民が自ら守ろうともしない国を、どうして他国の人が血を流してまで守ってくれるでしょうか。

それが証明されたのが、アフガニスタンでした。昨年8月に首都カブールがタリバンによって制圧された際、ガニ大統領は国外へ逃亡し、士気を失った国軍は瓦解しました。

同国から米軍を撤退させたアメリカのバイデン大統領は、「アフガン国軍が戦おうともしない戦いで、なぜアメリカ人が戦わなければならないのか」と言いました。私たち日本人は、このバイデン大統領の言葉をしっかり心に刻んでおかなければなりません。

それと対照的なのが、いまロシアに侵略されているウクライナです。

武力では圧倒的に不利であるにも拘らず、ゼレンスキー大統領が「私はここにいる」と決して逃げない姿勢を見せたことで、ウクライナ国民は鼓舞され、海外に在住していた何万人もの国民が祖国防衛のため帰国しました。

さらにポーランドなどの近隣国、そして当初は及び腰だったドイツや、永世中立国のスイスまでウクライナを応援し始めたのです。

一国のトップが肚を括れば、ここまで状況は変わるのです。

日本という国の異常さ

ところがいまの日本は、侵略の危機に瀕している尖閣諸島の防衛に自ら積極的なアクションを起こそうともせず、首相や大臣が代わる度に「尖閣は日米安保条約第五条の適用範囲」との言質(げんち)を得ては、胸を撫で下ろしている始末です。

また、日本は他国に拉致された国民を40年以上も救出できずにいます。

拉致被害者の救出に一番熱心だと言われていた安倍政権の時ですら、自衛隊による救出作戦実施の可能性について、「日本には憲法の制約があるためそれはできない。アメリカに頼むしかない」と総理は発言していました。

先日、『平成の自衛官を終えて』というご著書を贈呈いただいた元陸上自衛官の飯塚泰樹氏は、現役中に拉致被害者の救出を成し得なかったことへの慚愧(ざんき)の念を、「任務、未だ完了せず」という副題に込められています。

その飯塚さんが米国留学時に授業で拉致問題について説明したところ、「侵略の被害に遭っている国民も助けに行かないなんて、おまえたちの存在価値はどこにあるのか?」とクラスメートから批判され、答えに窮してしまったそうです。

こんな状況がいつまでも続き、そのことを国民が大して問題視もせず受け入れている日本という国の異常さを、私たちはそろそろ自覚しなければなりません。


(本記事は月刊『致知』2022年5月号 連載「意見・判断」より一部を抜粋・編集したものです

◉葛城さんには、さらに「この屈辱的な状況をつくり出したのは何者か」「いまこそ日本人の誇りを取り戻そう」と、日本が直面する危機的状況、日本人が取り戻すべき精神について語っていただいています。記事全文は致知電子版でお読みいただけます!

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◇葛城奈海(かつらぎ・なみ)
東京都生まれ。東京大学農学部卒業後、自然環境問題・安全保障問題に取り組む。俳優やラジオパーソナリティなどを経て、平成23年から尖閣諸島海域に漁船で15回渡り、現場の実態をレポート。27年防人と歩む会会長に就任。他に皇統(父系男系)を守る国民連合の会会長。防衛省オピニオンリーダー。予備3等陸曹。予備役ブルーリボンの会幹事長。北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」でアナウンスを担当。著書に『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社)。

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