書×アートで「人の想いを形にする」——書家・高橋恵里さんに聞く

書家でありながら、墨やブルーを使った文字作品を制作するアーティストとして海外にも活動の場を広げている高橋恵里さん。書家としては、第42回日本書展にて第一席の「内閣総理大臣奨励賞」を受賞。アーティストとしては、ニューヨーク・ブリュッセル・ロンドンのアートフェアに作品を出品され、自身のインスタグラム(eri.72419)等での情報発信にも取り組んでいます。そんな高橋さんに、活動に懸ける想いやこれまでの歩みについて語っていただきました。

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人の想いを形にしたい

〈――高橋さんは書家として様々な表現に挑戦し、その作品は海外でも注目されているそうですね〉

〈高橋〉 

いまは主に「右手」と「左手」、二つの軸で活動しています。右手というのは、書会に属し、書道展への作品出品や日本書写技能検定協会・東京都審査員などの活動です。つまり、書家として古典の基本をもとに正しく美しい文字を書く、また、後進の指導をするというのが右手になります。

左手というのは、そこに「自分らしさ」、自分なりの表現をプラスした活動です。具体的には、墨などを使った抽象的なデザインを書に組み合わせたり、文字にデザイン性を持たせた「アート書」に取り組んでいます。ロンドン在住のギャラリストの方との出逢いにより3年前にニューヨーク・ブリュッセル、その翌年にはロンドンのアートフェアに出品させていただきました。

〈――作品に対する海外の方の反応はいかがでしたか〉

〈高橋〉 

ニューヨークもアートフェアも初めての経験でした。初めてのチャレンジです。墨だけでなくブルーの文字作品も出品し、会場では「ブルーが綺麗」とか「何という意味(漢字)?」などと興味を持って多く声を掛けていただき、文字をアートとして観てもらえていることを実感しました。

また、日本人の祖母を持つアメリカ人男性が「自分の好きな漢字を書いてほしい」とオーダーしてくださいました。日本文化が好きで漢字も好きだと。その後「自分の信念を漢字一文字のアートにしてほしい」というオーダーもいただきました。その想いに当てはまる漢字の候補・アートとしての見た目・好みなどすべてを考え制作しました。「その人の想いを形にする」ことの役割を感じました。

海外・アートフェアに出品したブルーの文字作品「望」

〈――素晴らしいご活動です〉

〈高橋〉 

それからもう一つ、童謡を書で表現することにも挑戦しています。最初は自分らしい書をどのように表現していくか、その訓練として童謡作品をリストアップし、書き溜めていたんです。それを何かに生かすことができないかと考え、また本物の童謡を知る専門家の方にしっかり学んだほうがいいとアドバイスを受ける中で、ご縁をいただいたのが日本国際童謡館館長、歌手の大庭照子先生や日本童謡学会理事長の海沼実先生でした。

お二人の先生をはじめ関係者の方々にご指導いただきながら、これから童謡の魅力を多くの人に伝えていければと願っています。

〈――童謡は後世に伝えていかなくてはならない日本文化ですね〉

〈高橋〉 

ええ。童謡は古いというイメージがあり、そもそも知らないという人が増えています。でも、童謡を書にして、おしゃれな模様などを入れれば、若い人の目にも触れるでしょうし、「これはお母さんが歌ってくれた歌だ」なんて思い出すきっかけになると思うんです。それぞれの思い出の曲を作品に……そんなこともしたいなと思っています。

そして、いまの子供たちが現在聴いている歌も、きっとずっと先にはそれが童謡のようなものになるのではないかとも思っています。要するに「懐かしい想い出」ということです。自分自身が童謡に触れたことで、ここでもまた「人の想いを形にする」ことの大切さを感じています。

 

童謡「揺籃の歌」をアート書にした作品

 

童謡アート書「十五夜お月さん」

「書が好き」が原点

書に向き合う高橋さん

〈─―書との出逢いを教えてください〉

〈高橋〉 

4歳から書道を習いました。小学校二年の夏、引っ越した先の近所にも「書道教室」があり、妹と一緒に通っていました。どこの家庭でもよくあるように、親が子供の教育のために書道教室に通わせてくれたという感じでした。

〈――書道教室ではどのようなことを学びましたか〉

〈高橋〉 

なんとなく始めた書道をなぜここまで続けられたかというと教室の環境がすごくよかったからだと思います。学校の違うお友達、学年が違うお兄さん・お姉さんたち、先生方、たくさんの人に会ってお話しできることがとても楽しかったんです。まさに書道教室は、家以外のもう一つの「自分の居場所」でした。

一番の思い出は、友達同士で漫画本の交換をし、お稽古が終わると教室に残ってずっと漫画を読んでいたことです(笑)。それでも先生は決して怒らないんですよ。

〈――教室が楽しく、先生も優しい方だったことが、書を続けられた要因だったのですね〉

〈高橋〉 

教室に通うことがとにかく楽しい、楽しいから書のお稽古に行く、書けば先生が優しく指導し褒()めてくれる、褒められるとまた書きたくなる……というような形で、だんだん書を書くのが好きになっていきました。

〈――では、その後もずっと書の稽古を続けていかれた〉

〈高橋〉 

いえ、高校生までお稽古を続けていたのですが、両親の都合で再び引っ越すことになって、書から離れてしまったんですね。

その後は、短大進学・就職・結婚・出産・育児などいろんなことが続いて、もちろんその間、もう一度書道をやり直したいなとは思っていたんですけれども、結局ダーッと20年経ってしまった。

〈――そこからどのように再び書の道に戻られたのですか〉

〈高橋〉 

子供は息子二人なのですが、次男が幼稚園に入り、自分の時間が少しできたこと、また子供にも書道を習わせたいとの思いがあって、12年前、38歳の時に、学生時代にお世話になっていた書会の門を再び叩きました。

「内閣総理大臣奨励賞」受賞作 「道因法師碑」全臨


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◇高橋恵里(たかはし・えり)

昭和47年東京都生まれ。4歳より書を学ぶ。短大卒業後、日本企業の秘書室勤務、結婚、出産、育児を経て、20年のブランクから再び書を学び直す。現在、所属書会にて師範・日本書写技能検定協会東京都審査員。各書展への出品・海外への作品出品・アート書制作など書の幅を広げるべく研鑽を積む。墨画を吉田華宇氏に師事。

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