マニュアルには書かれていない、感謝を伝える方法——浜屋社長・小林茂

小林茂社長

金属資源から家電や家具雑貨まで、一般家庭や企業から排出される多種多様な商品のリユース、リサイクルに携わり、循環型社会の実現に貢献している株式会社 浜屋(はまや)。その事業はアジア、アフリカ、中東、中南米など世界40か国以上の国々まで広がっています。
いくつもの職を転々とした後、ゼロから同社を立ち上げた小林茂さんが体験から掴んだ感謝のコツ、経営発展の要諦には味わい深いものがあります。

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自分で考え、行動すれば仕事は面白くなる

〈小林〉
アジア、アフリカ、中東、中南米など世界40か国以上の国々に日本からのコンテナが届くと、僅か2時間で商品が完売する――。中身はすべて、日本では要らなくなった家電製品です。

少し修理して磨けば問題なく使えるものばかりで、日本を出る時は不要品の山でも、途上国に着くと宝の山に様変わりするのです。

1991年に埼玉県で創業した浜屋は家電のリユース・リサイクルの専門商社で、今日まで手探りで事業を拡大してきました。そのため、現在年商130億円のビジネスに育ったことは、運に恵まれたとしか言いようがありません。

そもそも、初めから環境問題に関心があったわけではないのです。

高校卒業後、26歳で結婚するまで15種類以上の職を転々とし、遂に「勤め人が務まらないなら自ら稼ぐしかない」と憂鬱な思いで、鉄くず回収の仕事(買い子)を始めたのがスタートでした。1980年のことです。

仕事を始めるとすぐに、誰にも命令されないで自分でやる仕事の面白さにのめり込むようになりました。その頃の私は半日で一日の稼ぎ分の鉄くずを集めると、残りの時間は必ず工場回りをし、お得意様の開拓に奔走しました。

工場と取り引きができると定期的に回収ができて収入が安定するためですが、結果、1~2年で同業の仲間が驚くほどの得意先を獲得できたのです。

ポイントは、たとえ暴言を吐かれても聞こえないふりをして笑顔で帰る。工場内にゴミが散らかっていたら拾うなど。すると、どんな断られ方をしても気持ちの上で再度訪問しやすくなり、こうした心掛けを継続したことで取引先が増えていきました。

自分で考えて自分で行動すれば仕事は面白くなる。社員にも、主体性を持ち仕事に取り組むよう伝えているのはその思いゆえです。

自分ならどっちの店に売りたいか

個人事業を10年ほど続けた後に会社を設立し、資源を集める買い子から、集められた資源を転売する側へ徐々に事業転換を行いました。その商売の基礎は、私の買い子時代の経験が基になっています。

いまでも新入社員に1時間半かけて直接私が伝えているのですが、

「お客様は浜屋を喜ばせるために浜屋に売りに来てくれている」、

これが私の人生を貫く信念です。もちろん、皆生計を立てるために稼いでいるのですが、潜在意識の中で、浜屋を喜ばせたいという考えは少なからず皆が抱いていると思うのです。

例えば、近くてもぶっきら棒なお店と、遠くても番頭が必ず喜び、商品を褒めてくれるお店、買い取り金額が同じだった場合どちらに行きたいか。私はたとえ余計に時間が掛かったとしても、いい品物が手に入った時には、必ず褒めてくれるお店に行きました。

また、買い取り屋の主人の喜ぶ顔見たさで、それまでの倍近くの商品を集められるようになったこともあります。自分のためだと百の力しか出せなくても、人のためだと120、200の力が出せるようになるのです。

閉店間際にお客様が来ると、どうしても文句を言いたくなるものですが、そうではなく、笑顔で「焦って運転すると危ないので、次回から余裕をもっていらしてください」と労をねぎらって差し上げる。遠方からお越しいただいた方には「遠くからわざわざお越しいただき、ありがとうございます」とひと言声を掛ける。

お客様は皆、浜屋を喜ばせるために来ているため、私たちが感謝すれば、お客様はさらに喜んでくださり、月に1回だった来店回数は、2回、3回と増えていくのです。

これは単なる商売のコツではありません。たとえ笑顔の練習をしたとしても、その根底に感謝の気持ちがなければ、お客様に伝わらないのです。

マニュアルでは人を感動させることはできない

私がまだ買い取りの現場にいた頃、こんなこともありました。

栃木にお住まいで、県内に同業他社があったにも拘(かかわ)らず、週に1回程度、時間をかけて当社に商品を売りに来てくれる方がいました。

私は時間もガソリン代もかけてわざわざ来てくださる方にいつも感謝の思いを抱いていましたが、公正が当社のポリシーのため、その方だけ高額で買い取ることもできません。

何か違う形で恩返しをしたいと思っていたある日、その方が初めて小さな娘さんを連れて来店されました。私は咄嗟(とっさ)に閃き、娘さんのためにケーキを購入して、大変喜ばれたことがありますが、これは機転が利いてできたのではありません。常々、お礼がしたいと思っていたため、咄嗟のチャンスですぐに行動に移せたのです。

マニュアルにあるような事務的な挨拶や笑顔では、お客様を感動させる行動はできない。この一件を通じてそう痛感し、お客様に感謝を伝えることを社員に徹底させるようになりました。

当店が誇れることの一つは、お客様の数が非常に多いことですが、社員が主体的に実践方法を模索し続けてきた結果だと思います。

私のビジネス人生を振り返ると、ろくな英語も話せないままに単身で諸外国に飛び、販売契約を取りつけたり、リーマン・ショックの際には資金繰りに苦しみ、黒字倒産の危機に直面するなど、常に綱渡り状態でした。それでも、

「お客様(買い子もバイヤーも)は浜屋を喜ばせるために浜屋に来てくれている」

という信念を貫き通せたからこそ、乗り越えることができたのだと思います。

おかげさまで現在、社員数は320名になり、店も全国に17店舗に増えました。当社には私以上に能力の高い社員も大勢います。

それでも「我以外皆我師」の心構えで、今後も謙虚さと感謝の気持ちを忘れず、事業に専念していきたいと思います。

▲活気あふれる浜屋社員の皆さん。写真は2019年、月刊『致知』をテキストにした勉強会を導入する企業が集って開催された「社内木鶏全国大会」で、見事〝感動大賞〟に輝かれた際の一枚。

(本記事は月刊『致知』2019年2月号 連載「致知随想」より一部を抜粋・編集したものです)

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