突然の訃報——森信三師と森迪彦先生、親子二代に通底する生き方から学ぶもの

左が兼氏敏幸氏(「実践人の家」理事長)、中央が故・森 迪彦氏(「実践人の家」常務理事)、右が浅井周英氏(「実践人の家」参与)

マスコミには出ないと言われながら、月刊『致知』創刊7年目の1985年に初登場、以後も折に触れて貴重な教えを賜った哲学者・森信三先生。昨年(2022年)2月、没後30年を機に、取材のため森哲学を現代に伝承する「実践人の家」の三氏(写真)にお集まりいただいたのも束の間、その一人であるご子息の森迪彦(みちひこ)先生がご病気のためお亡くなりになりました。

突然のお別れから今月で早1年――感謝の祈りを込め、弊誌の現編集長による追悼文を改めて配信いたします。


以下は原文ママ

悲しい知らせ

『致知』20224月号(31日発行)特集「山上 山また山」の制作がいよいよ佳境に差し掛かった215日、あまりにも悲しい知らせが届きました。

その約2週間前に取材をさせていただき、本号鼎談「森信三が目指した世界」にご登場いただいた「実践人の家」常務理事・森迪彦先生が逝去された、との訃報です。

森迪彦先生と本誌との出逢いはいまから17年前。20054月号連載「致知随想」にて初登場を飾り、その後3度にわたって特集ページの鼎談にて貴重なお話を賜りました。

SBIホールディングス社長・北尾吉孝氏やグロービス経営大学院学長・堀義人氏をはじめ、数多くの経営リーダーやビジネスマンから師と仰がれ、本誌の精神的源流にもなっている哲学者・森信三師。その三男として、偉大なご尊父が遺した思想哲学の伝承活動に、長年にわたり尽力されてきました。享年80。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

渾身のラストメッセージ

昨年8月号にて森信三師の高弟・寺田一清氏の追悼座談会を企画した折、森迪彦先生にお声掛けしたものの、ちょうど喉に癌が見つかり、治療に専念したいからと辞退されました。

年が明け、森信三師の没後30年の節目に際し、再度取材のご依頼をしたところ、「引き受けたい気持ちは強いけれども、体調に不安があるので、新たに実践人の家の理事長に就任された兼氏さんを推薦します」とのお返事でした。

こうして23日、森信三師の高弟・浅井周英氏と兼氏敏幸氏の対談取材が都内ホテルで組まれました。ところが、です。直前に連絡があり、迪彦先生も取材に同席されるというではありませんか。

当日、迪彦先生は兵庫から上京し、車椅子姿で会場に現れ、渾身の力を込めて自らの思いの丈を語ってくださったのです。

いま振り返ると、重篤な病に侵されているにも拘らず、無理を押して日帰り出張をし、本誌の質問に真摯に答えてくださった迪彦先生は、まさに命懸けで、『致知』読者に向けた遺言ともいうべきラストメッセージを私たち編集部に託すような気魄で、取材に臨んでくださったのでしょう。魂が震えずにはいられません。

森信三師の人生は幼少期から晩年に至るまで逆境の連続であり、4月号特集「山上 山また山」の言葉の如く、その都度逆境を乗り越え、命ある限り前進された方でしたが、ご子息の迪彦先生の人生もまた、天寿を全うする最期の瞬間まで命を燃やし続けた歩みそのものでありました。

『致知』20224月号の鼎談「森信三が目指した世界」にて、迪彦先生は最後にこう締め括られました。

「人生は山あり谷あり、そういうものとして様々な出来事、逆境や試練に向き合い生きていく。これからも、その思いで父の目指した世界をまた自分も目指し、力の限り父の教えを多くの方に伝え続け、よりよい世の中に貢献していきたい。それが父の没後30年を迎えた今の私の心からの願いです」

迪彦先生のご遺志を受け継ぎ、これからも月刊『致知』の編集・発行・普及活動を通して、森信三哲学の実践と伝承に邁進していく所存です。

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〝その人の生前における真実の深さに比例して、その人の精神は死後にも残る〟

◉『致知』2023年3月号 特集「一心万変に応ず」
森信三先生 没後30年、森迪彦先生のご逝去から1年……
記念出版に思いを寄せる直弟子二人が語り合う

 森信三師の没後30年の節目に当たる昨年11月、弊社より発刊され大きな反響を呼んでいる『森信三 運命をひらく365の金言』。森師の謦咳に接し、同書にそれぞれ「まえがき」「推薦の言葉」をお寄せいただいた浅井周英さんと坂田道信さん(ハガキ道 伝道者)の心に、いま去来するものは何か。同書を手にした感動や、大切な思い出を語り合っていただきました。

〝きっといま頃 森先生は、森信三哲学の伝承に努められた寺田一清(いっせい)さん、ご子息の迪彦(みちひこ)さんと手を取り合って喜ばれていると思います〟
 浅井周英(「実践人の家」参与)

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