2021年12月29日
大学サッカー界において、2019年に史上初となる全5冠制覇の偉業を成し遂げた明治大学サッカー部。2015年に監督に就任した栗田大輔さんは、長年会社員として勤める傍ら、小中学生向けのクラブチームを設立・運営するなど、異色の経歴の持ち主です。そんな栗田さんが指導の上で大事にしてきた「勝者のメンタリティー」についてお話いただきました。
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「勝ち」には法則がある
〈栗田〉
高卒でプロに進む選手もいる中で、明治大学に進学したからには、求められるレベルが変わってきます。大学はそもそも自主的に学ぶ場であり、学生の本分は勉強です。従って、授業の出席や単位に関しては厳しく指導しています。
学費を授業数で割ると、一つの授業は3500~4000円ほど。学生たちはちょっと疲れると授業をサボりがちですが、それは両親が必死に働いたお金をどぶに捨てるも同然。大学に進学しサッカーができていることなど、当たり前に思いがちのことにも感謝を忘れず、自分がなぜ明治大学に来たのかを自分自身に問いただし、大学4年間の意味を自分なりに考え、日々努力を積み重ねられる選手は必ず自分の手で人生を切り拓いていきます。
こうした私の思いや部の方針は、日々の練習やミーティングだけでなく、企業の経営計画発表会のように年度初めに語る場を設け、毎年繰り返し伝えています。
とはいえ、いくら人間性を磨いたところで、実力が伴わなければ元も子もありません。長年指導していると、こういう時に勝ち、こういう時には負けるという法則が肌感覚で分かるようになってきました。それを私は勝者のメンタリティーと表現しています。
一、チームに迷いがないこと。全員の矢印が同じ目標に向かい、オン・ザ・ピッチ(コート上)だけでなく、オフ・ザ・ピッチでも日本一を追求し、どのチームよりも厳しく皆が集中力を高めているチームは絶対に負けません。
二、よい準備ができていること。目標から逆算して今週やるべきことが明確になっているか、試合を想定して練習できているか。
意識のレベルとスキルが揃った時は、試合前から勝利の確信を得ることがあり、ロスタイムでの逆転や交代選手の大活躍など、奇跡のようなことが連発するから不思議なものです。
選手にはよく「才能×努力×考え方」と伝えます。どんなに才能があってもその人が天狗になって自分の実力を過信したり、妬みや僻み、愚痴をこぼしていれば実力は絶対に伸びません。これは多くの先人が証明しているところです。
努力は目には見えませんし、努力自体は「足し算」で、日々積み重ねるしかありません。それでもある時急に成長し、気づきを得て道が開けるのは、それまでの努力が才能や考え方と掛け合わさり、相乗効果が生まれるからです。
(月刊『致知』2021年11月号「努力にまさる天才なし」より一部を抜粋したものです)
◎この他にも、「一流を超一流にするもの」「社会人経験から学んだ統率力でチームを牽引」など、勝ち続ける人材、組織をつくる要諦を語っていただいています。栗田監督の記事を掲載した『致知』2021年11月号「努力にまさる天才なし」の詳細はこちら
◇栗田大輔(くりた・だいすけ)
昭和45年静岡県生まれ。幼少期からサッカーを始め、高校サッカー界の名門・清水東高校から明治大学へ進学。卒業後は清水建設に入社。会社では現在、ソリューション営業部・スポーツビジネス担当の部長を務める。平成17年に横浜市で小中学生を対象にしたクラブチーム「FCパルピターレ」を設立。25年に明治大学サッカー部のコーチ、26年に助監督、27年に監督に就任。28年には創部95年で総理大臣杯初優勝。31年度は各大会で5冠を達成。監督就任から6年で10個のタイトルを獲得、プロサッカー選手を50名以上輩出している。著書に『明治発、世界へ!』(竹書房)がある。