2026年04月02日
世のため人のため、善きことを思い、善きことを行う。この信念のもとに京セラを世界的優良企業に育て上げ、第二電電(現・KDDI)の創業に挑戦し、日本航空を不死鳥の如く甦らせた稲盛和夫氏。その腹心として長年、氏に仕えた大田嘉仁さんと、評伝の執筆を通じて稲盛氏の実像に迫ってきた北 康利さんに、稲盛和夫という人物の大成の要因、人間としての原点を語り合っていただきました。
(本記事は月刊『致知』2021年4月号 特集「稲盛和夫に学ぶ人間学」より一部を抜粋したものです)
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「JALの奇跡」を生んだリーダー教育
〈北〉
大田さんは、稲盛さんと共に再建に取り組まれたお立場から、JALの奇跡が起こった要因をどう捉えていらっしゃいますか。
〈大田〉
必ず再建できるという希望を、トップや幹部だけでなく、派遣社員の方々に至るまで抱いて、皆でベクトルを合わせて一所懸命努力したこと。そこにアメーバ経営という全員参加の経営手法を導入したことが奏功したと思います。
JALの方々の中には、稲盛さんなら何とかしてくれるという期待もあったと思いますが、航空業のことを何も知らない稲盛さんが会社を滅茶苦茶にしてしまうんじゃないかという不安や恐怖心のほうが最初は強かったと思うんです。
ところが稲盛さんと接する中で、幹部の方々は驚いたわけですよ。成功者というのはもっと傲慢で、一方的だという先入観があったのに、稲盛さんにはそういうところが微塵もない。人はどうあるべきかということを繰り返し説き、自身も常に自らの言動に対して誠実に真摯に向き合っている。
JALの幹部の方々は、そういう稲盛さんのようになりたいと思うようになり、せめて自分の部署だけでもしっかりまとめられる人間力を身につけたいと努力するようになる。
部下の方々は、そうして人が変わったように成長していく上司を見て、自分も同じようになりたいと考える。そのような連鎖が起きたように思います。
〈北〉
皆さんの意識を変えていく上で、最も奏功したのは何でしたか。
〈大田〉
最初に始めたリーダー教育だと思います。月に17回も開催して、稲盛さんがその中で5回講義しました。当時の大西社長をはじめ52名の幹部の方々に、リーダーのあり方、人間としてのあり方、上に立つ者として社員をいかに導いていくか等、いわゆるフィロソフィについて話しました。
体調が悪い時には「血を吐くつもりで話しているんだ」と語られていましたが、稲盛さんの鬼気迫る講義によってJALの方々の意識は大きく変わっていったのです。
◇大田嘉仁(おおた・よしひと)
昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年日本航空会長補佐専務執行役員に就任(25年退任)。27年京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任(29年顧問、30年退任)。現職は、MTG取締役会長、学校法人立命館評議員、鴻池運輸取締役、新日本科学顧問、日本産業推進機構特別顧問など。著書に『JALの奇跡』(致知出版社)がある。
◇北 康利(きた・やすとし)
昭和35年愛知県生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券業務企画部長等を歴任。平成20年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。『白洲次郎 占領を背負った男』(講談社)で第14回山本七平賞受賞。著書に『日本を創った男たち』(致知出版社)『思い邪なし 京セラ創業者稲盛和夫』(毎日新聞出版)など多数。近著に『乃公出でずんば 渋沢栄一伝』(KADOKAWA)がある。
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