2022年08月31日
京セラ、KDDI、JALという3つの世界的企業を率いた稀代の名経営者・稲盛和夫氏。これまでの著作や講演の中で語られた言葉の数々は、多くの方に勇気を与え、行く道を照らす光となってきました。このたび発売された『稲盛和夫一日一言』には、その膨大な著作のみならず、市販本には収録されていない、講話やスピーチなども渉猟し、選び抜いた366の金言が収録されています。本日はその一部をご紹介いたします。
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稀代の経営者・稲盛和夫が贈る「魂に響く言葉」
人生方程式① 熱意と能力
人生・仕事の結果=考え方
この方程式は、平均的な能力しか持たな
い人間が、偉大なことをなしうる方法はな
いだろうか、という問いに、私が自らの体
験を通じて答えるものである。
まず、能力と熱意は、それぞれ0点から100点まであり、
それが積でかかると考える。
すると、自分の能力を鼻にかけ、努力を怠った人よりも、
自分にはずばぬけた能力がないと思い、誰よりも情熱を燃やし
努力した人のほうが、はるかに素晴らしい結果を残すことができる。
人生方程式② 考え方
この能力と熱意に、考え方が積でかかる。
考え方とは、人間としての生きる姿勢であり、
マイナス100点からプラス100点まである。
つまり、世をすね、世を恨み、まともな生き様を
否定するような生き方をすれば、マイナスがかかり、
人生や仕事の結果は、能力があればあるだけ、
熱意が強ければ強いだけ、大きなマイナスとなってしまう。
素晴らしい考え方、素晴らしい哲学を持つか持たないかで、人生は大きく変わってくる。
「ど真剣」な人生
いつも燃えるような意欲や情熱を持って、
その場そのとき、すべてのことに
「ど真剣」に向かい合って生きていくこと。
その積み重ねが私たち人間の価値となって、
人生のドラマを実り多い、充実したものにするのだ。
動機善なりや、 私心なかりしか①
大きな夢を描き、それを実現しようとするとき、
「動機善なりや」と自らに問わなければなりません。
自問自答し、動機の善悪を確認するのです。
また、仕事を進めていくうえでは、
「私心なかりしか」という問いかけが必要です。
自己中心的な発想で仕事を進めていないかを自己点検しなければなりません。
動機が善であり、私心がなければ、結果は問う必要はありません。
必ず成功するのです。
動機善なりや、 私心なかりしか②
第二電電(現KDDI)設立前、約6カ月もの間、
毎日、どんなに遅く帰っても、たとえ酒を飲んでいようとも、
必ずベッドに入る前に、「動機善なりや、私心なかりしか」と自分に問い続けました。
通信事業参入の動機が善であり、そこに一切の私心はないということを確認して、
ようやく手を挙げたのです。
「プラス方向」の考え方
仕事や人生を実り多きものにしてくれる、
正しい「考え方」をご紹介したい。
・ 常に前向きで、建設的であること。
・ みんなと一緒に仕事をしようと考える協調性を持っていること。
・ 明るい思いを抱いていること。
・ 肯定的であること。
・ 善意に満ちていること。
・ 思いやりがあって、やさしいこと。
・ 真面目で、正直で、謙虚で、努力家であること。
・ 利己的ではなく、強欲ではないこと。
・ 「足るを知る」心を持っていること。
・ そして、感謝の心を持っていること。
将来を担うべき若い人々が、このような「考え方」を持って
一所懸命に働くことを通じ、素晴らしい人生を歩まれることを
心から願っている。
チャンスをつかむ人
素晴らしいチャンスは、ごく平凡な情景の中に隠れている。
それは強烈な目標意識を持った人の目にしか映らないものだ。
今日よりは明日、 明日よりは明後日
継続が大切だといっても、それが「同じことを繰り返す」ことであってはなりません。
継続と反復は違います。昨日と同じことを漫然と繰り返すのではなく、
今日よりは明日、明日よりは明後日と、少しずつでいいから、
必ず改良や改善をつけ加えていくこと。
そうした「創意工夫する心」が成功へ近づくスピードを加速させるのです。
強烈な願望を持つ
願望を成就につなげるためには、並に思ったのではダメだ。生半可なレベルではなく、強烈な願望として、寝ても覚めても四六時中そのことを思い続け、考え抜く。頭のてっぺんからつま先まで全身をその思いでいっぱいにして、切れば血の代わりに「思い」が流れる。それほどまでにひたむきに、強く一筋に思うこと。そのことが、物事を成就させる原動力となる。
心に描く
心が呼ばないものが自分に近づいてくることはなく、現在の自分に起こっているすべての現象は、自分の心の反映でしかありません。
私たちは、怒り、恨み、嫉妬心、猜疑心など否定的で暗いものを心に描くのではなく、常に夢を持ち、明るく、きれいなものを心に描かなければなりません。そうすることで、実際の人生も素晴らしいものになるのです。
(本記事は『稲盛和夫一日一言』〈弊社刊〉より一部抜粋・編集したものです)
◇稲盛和夫(いなもり・かずお)
昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ(現在は閉塾)。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』(いずれも致知出版社)など。
◇追悼アーカイブ◇
稲盛和夫さんが月刊『致知』へ寄せてくださったメッセージ
「致知出版社の前途を祝して」
平成4年(1992)年
昨今、日本企業の行動が世界に及ぼす影響というものが、従来とちがって格段に大きくなってきました。日本の経営者の責任が、今日では地球大に大きくなっているのです。
このような環境のなかで正しい判断をしていくには、経営者自身の心を磨き、精神を高めるよう努力する以外に道はありません。人生の成功不成功のみならず、経営の成功不成功を決めるものも人の心です。
私は、京セラ創業直後から人の心が経営を決めることに気づき、それ以来、心をベースとした経営を実行してきました。経営者の日々の判断が、企業の性格を決定していきますし、経営者の判断が社員の心の動きを方向づけ、社員の心の集合が会社の雰囲気、社風を決めていきます。
このように過去の経営判断が積み重なって、現在の会社の状態ができあがっていくのです。そして、経営判断の最後のより所になるのは経営者自身の心であることは、経営者なら皆痛切に感じていることです。
我が国に有力な経営誌は数々ありますが、その中でも、人の心に焦点をあてた編集方針を貫いておられる『致知』は際だっています。日本経済の発展、時代の変化と共に、『致知』の存在はますます重要になるでしょう。創刊満14年を迎えられる貴誌の新生スタートを祝し、今後ますます発展されますよう祈念申し上げます。
――稲盛和夫