維新の立役者・吉田松陰に学ぶ「本当の元気」の出し方(川口雅昭)

川口先生幕末維新の精神的指導者だった吉田松陰は、29歳で亡くなるまで「元気いっぱい」生き抜いた人でした。松陰の元気の秘密はどこにあったのでしょうか。松陰研究一筋の川口雅昭さん(人間環境大学教授/掲載当時)が熱を込めて語られています。

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鬼神も避く気概で生きる

〈川口〉
「断じて之(これ)を行へば、鬼神も之を避(さ)く。大事を断ぜんと欲せば、先づ成敗(せいはい)を忘れよ」

できるとかできないとかいうことを度外視して思いを決行し、国難に殉じた松陰の気魄が伝わってくるような一文です。

これも、折に触れて私を勇気づけてくれた言葉の一つです。松陰の研究に本腰を入れ始めた頃、恩師の井上久雄先生から、私はこう言われました。

「君が本気で松陰を研究しようと思うのなら、最低30年は続けなさい。30年で完成するとは言わないが、少しは花が咲くだろう」

以来45年、花が咲くどころか、謎や疑問ばかりが膨らんできます。例えば、松陰の人物像に迫るには、その言葉を精緻に読み込んでいく必要があります。年端もいかない子供に「心ある立派な大人になりなさい」と教えたかと思えば、高杉晋作には「君と付き合うのは、救国の策を考えるためだ」と語り「段平(刀)をぶっさげて突入せよ」と叫ぶ。

相手の立場やその時の場面において様々な表情を見せる松陰。その本当の姿を掴むにはまだまだ道半ばですが、鬼神も避く気概でこれからも松陰の真実に迫っていこうと思っています。

「本当の元気」が出るのはどんな時?

私が特に現代の若者に掴んでほしいのは、私心を捨てて公のために生きる侍の精神がかつての日本に息づいていたこと。そして、そういうDNAを私たちもまた受け継いで生きているという事実です。

人間は、自分のことばかりに意識が向いている間は元気が出ません。国のため、誰かのためを思って志高く歩んでいくところに本当の元気が生まれるものです。

(本稿の)冒頭、私は日本人の自信のなさ、元気のなさについて触れましたが、では松陰がなぜあれほど元気いっぱいに生きられたのか、その理由をよく考えていただきたいのです。
 
だからといって松陰はいつも血気盛んだったわけではありません。国情を憂えて火の玉のように熱く燃える時があるかと思えば、野山獄にいた時には先賢の書を師として心静かに内省の日々を送っています。

しかし、どのような環境でも松陰は愛する日本国の将来を思い、国のために何か役に立ちたいという誠の心を忘れることがありませんでした。松陰の闘魂はそういう静かな内省の中で培われていったものなのかもしれません。

「大義」という言葉を教えられずに育ったいまの若者には、松陰という人物はなかなか理解しがたい部分もあるでしょう。しかし、それだけに松陰の人生や言葉は、現代人が気づかない人生のヒントに溢れています。

松陰に真に学ぼうという若者が一人でも多く生まれることを私は願ってやみません。


(本記事は月刊『致知』2016年11月号 特集「闘魂」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇川口雅昭(かわぐち・まさあき)
昭和28年山口県生まれ。広島大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。山口県立高校教諭、山口県史編さん室専門研究員などを経て、平成12年より人間環境大学教授。編著に吉田松陰一日一言』『「孟子」一日一言。著書に吉田松陰名語録』『吉田松陰』『吉田松陰 四字熟語遺訓』『吉田松陰に学ぶ 男の磨き方』『吉田松陰修養訓(いずれも致知出版社)。

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