天皇陛下のおもてなし——マンリオ・カデロ駐日外交団長が教える日本精神の原点 

日本の歴史、文化を外国人の視点から見つめ、その素晴らしさを広く発信してきた駐日外交団長/サンマリノ共和国特命全権大使のマンリオ・カデロさん。日本がさらに飛躍していくためには、日本人自身が自らの美点を知り、自覚する必要があると説くカデロさんに、日本人の精神性の原点であり、象徴である天皇陛下との感動エピソードをお話しいただきました。※内容は2015年掲載時のものです

いまこそ取り戻すべき美点

〈カデロ〉
日本人の精神性の原点であり、最も象徴的なのが天皇陛下であられるのではないかと思います。

私が日本に対して一番不思議なのは、国民の多くが自国の成り立ちについて知らないことです。今上陛下が125代であられることだけでなく、初代が神武天皇であること。また、諸説あるにせよ、神武天皇を起源とすると、2670年以上も男系の子孫がずっと皇位を継承していることすら知らない学生もいます。

むしろ、諸外国のほうがその事実の重みを認識しています。だから海外では陛下のことをEmperor(皇帝)と呼ぶのです。King(王)、President(大統領)、Prime Minister(首相)より断然格上であるというのが世界の常識です。国賓として来日する各国の要人は、陛下との公式行事には最高儀礼である服装で出席します。

私は外交団長という肩書をいただいていますが、これは名誉職であり、特に何か権限を得るわけではありません。しかし立場柄、陛下にお目に掛かる機会が多いことが何よりの喜びです。

例えば、陛下が他国をご訪問される際は、訪問国の駐日大使とともに出発のお見送りと帰国のお出迎えをします。また、天皇誕生日のお茶会の儀では、各国の大使を代表して祝賀スピーチを行う大役を仰せつかっており、毎年どのような言葉でお祝い申し上げたら陛下が喜ばれるか頭を悩ませるところですが、大変光栄で身の引き締まる思いです。

そんな中でいまも心に残る思い出があります。昼の12時から約3時間、天皇皇后両陛下とご陪食をさせていただいた時のことです。食事が始まると、陛下が皇太子時代にサンマリノ共和国にいらしたことがあるとおっしゃってくださいました。私の故郷のことを話題にすれば話が弾むとお気遣いくださったのでしょう。おかげであっという間の3時間でした。

楽しく過ごさせていただきましたが、その間、部屋の中にはずっと静かに心地よい音楽が流れていました。私は音楽が大好きです。日本のオーディオはさすがに素晴らしいと思い、不躾にも陛下に質問をしました。

「この部屋に流れている音楽はとても素晴らしく感動しました。どのようなアンプとスピーカーを使われていらっしゃいますか。恐れ入りますが、拝見させていただけないでしょうか」

すると陛下はにっこり微笑まれて、カーテンを開けてくださいました。するとそこには小さなオーケストラがいたのです。

こんな素敵なおもてなしはあるでしょうか。私は感動して思わず拍手をしてしまいました。同席した他の大使も同様です。他国の王室でも生演奏でもてなすことはありますが、オーケストラを隠すようなことはせず、むしろ客人に見せるようにするでしょう。もしかすると陛下は、オーケストラが見えると、私たちが演奏の終わるたびに拍手をしなければいけないからと気遣ってくださったのではないでしょうか。

あの日のことは一生の思い出であり、改めて陛下のお心遣いに感服させられた出来事でした。


(本記事は月刊『致知』2015年2月号 特集「未来をひらく」より一部抜粋・編集したものです)


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◇マンリオ・カデロ(Manlio Cadelo
イタリア生まれ。イタリアで高等学校卒業後、パリのソルボンヌ大学留学。フランス文学、諸外国語、語源学を習得。1975年に来日、ジャーナリストとして活躍。1989年駐日サンマリノ共和国領事、2002年特命全権大使任命。2011年5月、駐日大使全体の代表となる駐日外交団長に就任。イタリア共和国騎士勲章など多くの勲章を受章。著書複数。近著に『だから日本は世界から尊敬される』(小学館新書)がある。

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