自分の健康は自分で守る──新型コロナに負けないために 国際全人医療研究所代表理事・永田勝太郎

洋の東西を問わず様々な治療法を探求し、様々な病に苦しむ人々の治療に向き合った来た国際全人医療研究所代表理事の永田勝太郎さん。永田さんは新型コロナウイルスの感染拡大が表面化した当初から、日々の生活習慣で「免疫力」を上げ、ウイルスから身を守る自己防衛の大切さについて情報を発信してきました。いまこの基本が徹底できているかを振り返り、感染予防はもちろん、未来への布石として健康体づくりに努めたいものです。

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自分の健康は自分で守る

〈永田〉
中国から始まった新型コロナウイルスの感染拡大が世界の深刻な脅威となっています。新型コロナウイルスにはワクチンも、特効薬もありません。日本でも全国各地で感染者が連日のように報告され、私たちの日常生活・経済活動にも大きな影響が出てきました。新型コロナウイルスに対し具体的にどう対処すればよいのか、不安を抱いている方は多いことでしょう。

政府は、新型コロナウイルスの蔓延を食い止めようと様々な対策や情報発信を行っています。しかし、イベントの中止や学校の臨時休校、時差出勤、マスクの着用や手洗い・うがいの奨励、新薬の治験といった取り組みの多くが、新型コロナウイルスをいかに叩き潰すか、感染をいかに広げないかという公衆衛生の視点・立場に偏っており、不十分と言わざるを得ません。

一方、私のような臨床医は、患者さん一人ひとりの健康を具体的にどう守るか、高齢者や持病のある方などのウイルスへの免疫力をどう強くするかを常に考え、治療していかなければなりません。私たちの周りには様々なウイルスが存在していますが、免疫力がしっかり備わっていれば基本的に罹患することはないからです。

ですから、新型コロナウイルスに関しても、公衆衛生的な取り組みと同時に、一人ひとりの免疫力を高めるための議論と情報発信をもっと積極的に行っていくことが必要でしょう。

ウイルスへの免疫力を高めるといっても、特別なことをする必要はありません。まずそれぞれが自分の生活環境を整えることが免疫力を高める第一歩になります。

外出の際にはマスクをつけ、こまめに手洗い・うがいを行うと共に、暖房で室内を温める、お風呂にゆっくり浸かるなどしてとにかく体を冷やさない、加湿器を活用して湿度を60%ほどに保つ。ウイルスは体温が下がって免疫力が落ちている時に感染しやすく、乾燥した場所で蔓延しやすいからです。気温が低く、乾燥した土地である北海道で新型コロナウイルスが広がっているのはそのためです。

また、これは当たり前のことですが、睡眠不足は免疫力を低下させるので、毎日しっかり睡眠をとってください。睡眠時間の目安は、7~8時間です。

それから、免疫力アップに欠かせないのが日々の食事。なるべく体を冷やさず、温めるものを選んでください。例えば、スープや味噌汁、煮込み料理(カレー、シチュー、豚汁など)がお勧めです。冷えたビールはいまの時期は控えたほうがよいでしょう。お酒が飲みたい時には、日本酒の熱燗や焼酎のお湯割りにすれば体が温まります。醤油や納豆といった発酵食品は免疫力に関係する腸内細菌を整えてくれます。キノコ類も免疫力を高める食材です。

さらに、果物や生野菜などビタミンB、ビタミンCが多く含まれた食材を積極的に摂取することも大切です。ビタミン類は、サプリメントで補っても構いません。

ちなみに、抗生物質などで細菌を殺す、外科手術でがんを取り除くといった西洋医学の治療を「瀉法(瀉剤)」と呼ぶのに対し、漢方薬やサプリメントによって、人間が本来持っているエネルギーや免疫力を高めることを「補法(補剤)」と言います。この補法を日々の生活の中に取り入れていくことも、新型コロナウイルスから身を守るために欠かせません。

長年の臨床研究を基に私も開発に携わり、臨床現場で患者さんに用いている補剤・サプリメントとしては、「エネスポ(すっぽんのアミノ酸・卵・オイルと牡蠣のタウリンの合剤)」「コルマータQ10V(還元型コエンザイムQ10と発酵紅参エキスの合剤)」があります。急速に免疫力を高めたい方にはお薦めの補剤です。

セルフコントロールの時代へ

そして最後は、適度な運動をして血流をよくすることです。

外に出なくともできる効果の高い運動がお相撲さんの「四股」です。激しく体を動かさなくとも、ゆっくり何度か四股を踏めば、血の巡りがよくなって体も温まり、免疫力が高まります。

また、深呼吸(腹式呼吸)をして肺の換気をすることも感染症には有効です。深呼吸は誰にもできる健康法ですが、患者さんに伝えても実践する方は少ない。それは、日々当たり前に行っている呼吸に健康効果があるとは思わないからでしょう。高いお金を支払って特別な治療をしなくても、人間には自ら治癒力を高め、病気を防ぐ仕組みが備わっているのです。

高齢化などで医療費が年々膨れ上がっている状況では、現在の健康保険制度がこれからも続く保証はどこにもありません。突然、「明日から医療費は全額自己負担です」という状況になる可能性もゼロではない。

しかし、日本人はあまりにも自身の健康に対する意識が低く、「病気になったら病院にいけばいい」と医療機関に頼りすぎています。例えば、一部上場企業の経営幹部に向けた講演会の際、「かかりつけ医をお持ちの方はいますか?」と投げかけると、一人も手が挙がらないのです。最も健康に留意しなければいけない経営幹部の方々でもこの状況です。

私たち一人ひとりが自分の命と健康は自分自身で守り、創るという意識を持ち、病気に対する知識や見識を各自が努力して高める。学校現場でも、早い段階から自分の健康をどう守るか、病気に対する様々な情報に惑わされない情報リテラシーを身につける教育をしっかりと行っていく。

これが今回の新型コロナウイルスだけでなく、様々な病気に対する最大の予防対策なのです。自分の健康は自分で創る、その大切さをこれからも強く訴えていきたいと思います。


(本記事は月刊『致知』2020年5月号 連載「意見・判断」より一部抜粋・編集したものです)

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◇永田勝太郎(ながた・かつたろう)
―昭和23年千葉県生まれ。慶應義塾大学経済学部中退後、福島県立医科大学卒業。千葉大学、北九州市立小倉病院、東邦大学、浜松医科大学医学部附属病院心療内科科長、日本薬科大学統合医療教育センター所長を歴任。平成18年ヴィクトール・フランクル大賞受賞。著書に、『人生はあなたに絶望していない』(致知出版社)など多数。

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