母・芙沙子さんを「この子はプロでやっていける!」と確信させた、杉山愛さんの驚きの言動

プロテニスプレーヤーとして世界を舞台に活躍し、多くのファンに愛された杉山愛選手。その躍進を支えたのが、実の母である杉山芙沙子さんでした。我が子を育てる傍ら、他の一流選手を育てた親たちにも興味を向けられた芙沙子さんは、後に一流選手になるために必要な人間的資質を見つけたと言います。それは一体、どんな共通項だったのでしょうか。

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17歳の杉山愛さんが見せた人間的成長

〈杉山〉
子供が一流選手になるためには、資質というものも当然必要になってきます。特に世界を視野にいれた場合、ある程度高いスキルが求められるわけですが、それだけでは闘っていけないこともまた事実です。

そこで問われるのが何かと言うと、人間力です。人を思いやれる心とか、人に感謝できるといった人間的資質も磨いていかなければなりません。

実際、若手アスリートの親御さんから話を聞いたところでは、自分の子供が10代の頃にどこかの大会で優勝できたから「この子はプロに行ける」と思った方は誰もいませんでした。何が決め手になったかというと、もっと人間的な部分で「あっ、この子はプロの世界でやって行ける」と思う瞬間があったというのです。

愛の場合もそうでした。これは彼女が2年間通信制高校で勉強していた時のことです。提出したレポートが戻ってきた際、先生のコメント欄には「このレポートはおまえが書いたんじゃないだろう」という趣旨のことが書かれていました。

当時はまだメールがなかったので、国際郵便の時代でした。彼女は世界のツアー大会を回りながら、疲れて眠い時でも一所懸命レポートを書いていたのを見ていただけに、「これはないだろう」と思い、彼女に見せるか見せないか悩んだことがありました。

結局、見せることにしたのですが、それを見た彼女がひと言「ママ、この先生、可哀想だね。きっと何人もの人に裏切られてきたんだよね」と口にしたのです。そして「きっといいレポートだなと思ったら、何年か前の先輩のものだったり、どこかのコピペだったり、きっといろんな目に遭ったんだよ。可哀想な先生だね。まぁいいじゃん」と。

私は驚きました。これだけきちっと相手の立場に立ってコメントができること。その先生がどう評価しようと自分で書いたことに間違いはないわけで、大局的に問題ないことを無視できる判断力。当時の彼女は17歳でしたが、私はこのコメントを聞いて「これなら、この子はきっとプロでやっていける!」と感じたのです。自分の子供ながら、きっと魅力的な選手になるだろうなと思ったものです。

目標を決めて、コツコツ積み重ねていく

これも人間的な資質に関することですが、普段の生活が競技を大きく左右することも確かです。

例えば玄関のシューズを揃えるとか、ランドセルをいつも同じ場所に片づけるといったことができない子供は、自分の頭を整理した行動を取ることが難しいので、試合でも実力を発揮できません。

人間は毎日がよい日ではなく、調子のよい日があれば悪い日もあります。当然、調子の悪い日に試合があたることもあるわけで、そういう時にも実力を発揮できるかどうかは、普段の生活にかかっているというわけです。

「自分は毎日、本を15分読むんだ」という具合に、どんな小さなことでも毎日これをやるんだと目標を自分で決めて、コツコツ積み重ねていくと、その子に自信が生まれるということもあります。小さなことの積み重ねは、やがて目に見えない自信に繋がっていくのです。

「負けず嫌い」という言葉がありますが、これもまた一流選手にとって大事な人間的な資質と言えるでしょう。もっとも、選手たちにとっての「負けず嫌い」というのは、人に対して「負けず嫌い」なのではありません。むしろ彼らは自分自身に対して「負けず嫌い」なのです。

これは最近気づいたことなのですが、選手たちが悔しがったり涙を流したりするのは、試合で相手に負けたからではなく、自分に課した目標と結果とのギャップを真摯に受け止められているからなのです。

つまり「あいつには負けたくない」と言っているうちはまだまだで、本当の「負けず嫌い」の人間というのは、相手との比較がないのでどこまでも伸びる可能性があるというわけです。


(本記事は『致知』2016年1月号 特集「リーダーシップの神髄 」を一部抜粋・編集したものです)

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【著者紹介】
杉山芙沙子(すぎやま・ふさこ)
昭和24東京都生まれ。聖心女子大学卒業。テニスコーチとして、娘の杉山愛選手をはじめ、多くのジュニア選手を育成。NPO法人パームインターナショナル湘南代表理事。

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