少年時代の渋沢栄一が学問の師・尾高藍香から学んだこと

歴史に名を残す偉人の背後には、その師となる偉人がいるもの。日本の資本主義の父・渋沢栄一も例外ではありません。渋沢が幼少期から薫陶を受けた尾高藍香(惇忠)は日本近代化の礎となった「富岡製糸場」を築いた人物ですが、その訓えは後々まで渋沢の学問と人生に深い影響を与えました。

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渋沢が学んだ〝真の古典の読み方〟

〈田口〉 
渋沢栄一もまさにそういう(古典を古典として読むのではなく、水先案内人として読むような)読み方をした人物ですが、彼に学問を授けた師が尾高藍香(惇忠)です。5歳頃から約10年間、薫陶を受けており、この人が渋沢栄一の人格の根を養ったと言っても過言ではありません。

〈渋澤〉 
尾高藍香のお母さんと渋沢栄一のお父さんが姉弟ですから、尾高藍香と渋沢栄一は従兄弟です。

〈田口〉 
さらに渋沢栄一の妻である千代夫人は尾高藍香の妹なので、義兄に当たる。二重の縁戚になっています。

尾高藍香は富岡製糸場の初代場長を務めた経営者として有名ですが、どこがすごいのかというと、まず明治時代に入る1020年前に既に「脱封建」を主張していることです。1863年に渋沢栄一は尊皇攘夷思想のもと、高崎城の乗っ取り計画を立てましたよね。その議決書はすべて尾高藍香が書いたんですけど、そこには門閥政治は絶対いかんと。郡県制を敷いて民主主義国家をつくれと書いてあるんです。

〈渋澤〉 
非常に先見の明があった。よくそれだけの大構想を立てられたものですよね。

〈田口〉 
加えて、渋沢栄一は明治時代になって大蔵省の役人となり、フランス育ちの人なんですかというくらいに、西洋の財政金融制度を非常に把握できたわけですね。これは渋沢栄一の自伝『雨夜譚』に書かれていますけど、外国人を集めて勉強してみたら、尾高藍香が昔、自分に教えてくれたことばかりだったと。

郡県制にしろ、西洋の財政金融制度にしろ、尾高藍香はそれをどこから学んだのかというと、『貞観政要』なんです。古典を古典として読まずに、来るべき日本の理想国家像を描く一つの道筋として、彼は古典を読んでいた。ここに真の古典の読み方がありますよ。

〈渋澤〉 
示唆に富んだお話です。

〈田口〉 
その尾高藍香が富岡製糸場を軌道に乗せるわけですね。当時の養蚕技術では年に1回しか生糸が採れなかったものの、尾高藍香は飼育法を研究し、年に2回採れるようにした。明治新政府の稼ぎ頭は絹ですから、それを倍採れるようにしたということは、尾高藍香が当時の国家の財政的な基盤をつくったと言ってもいいんですよ。

そういう人が渋沢栄一の先生だったことは忘れてはいけません。


(本記事は『致知』2020年11月号 特集「根を養う」より一部を抜粋・編集したものです)


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致知出版社編集部ブログ

◇渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)
天保11(1840)~昭和6(1931)年。現在の埼玉県深谷市血洗島に生まれる。一橋家に仕え、慶応3(1867)年パリ万国博覧会に出席する徳川昭武に随行し、欧州の産業、制度を見聞。明治2(1869)年新政府に出仕し、5年大蔵大丞となるが翌年退官して実業界に入る。第一国立銀行を開業し総監役、頭取となった他、王子製紙、日本郵船、東京瓦斯、帝国ホテル、東京電力など多くの企業の創立と発展に尽力した。 

◇田口佳史(たぐち・よしふみ)
昭和17年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、日本映画社入社。47年イメージプランを創業。著書に『ビジネスリーダーのための老子「道徳経」講義』『人生に迷ったら「老子」』『横井小楠の人と思想』『東洋思想に学ぶ人生の要点』など多数。最新刊に『佐久間象山に学ぶ大転換期の生き方』(いずれも致知出版社)。

 ◇渋澤健(しぶさわ・けん)
昭和36年神奈川県生まれ。44年父親の転勤で渡米。テキサス大学卒業後、UCLAでMBA取得。JPモルガン、ゴールドマン・サックスなどでの勤務を経て、平成13年シブサワ・アンド・カンパニーを創業。20年コモンズ投信を設立。渋沢栄一の玄孫。著書に『渋沢栄一 人生を創る言葉50』(致知出版社)など多数。

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