中国に❝爆買い❞される北海道の大地、日本の領土を守れ!(宮本雅史)

領土問題や歴史問題など、様々な課題を抱える日本と中国。いまその中国による日本の土地の買収がものすごい勢いで進められていると言います。日本は目に見えない戦争を仕掛けられている――そう警鐘を鳴らす産経新聞東京本社編集委員の宮本雅史さんに驚くべき実態を語っていただきました。

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「爆買い」される北海道

いま、日本の領土が中国資本に「爆買い」されています。とりわけ北海道では、ここ数年森林や水源地などが100ヘクタール単位(東京ドーム約21個分)で買収されるなど、極めて深刻な事態が激しい勢いで進行しているのです。

いくつかその例をご紹介しましょう。「蝦夷富士」と呼ばれる羊蹄山の麓に広がる喜茂別町には、広さ210ヘクタールにも及ぶ「中国人のための中国人によるゴルフ場」があります。現地を訪れ、従業員に話を聞くと、「ここは中国人オーナーの別荘地で、プレーに来るのはオーナーの知人の富裕層だけだ。ただ、どのような人がプレーに来ているのかは把握していない」と言います。

喜茂別町の役場に電話で問い合わせてみたところ、同地を買収した中国企業は当初、ゴルフ場を核にした高級リゾートを造成すると話していたが、それきり何の音沙汰もないそうです。

その喜茂別町の北方に位置する赤井川村には、国道沿いの白井川渓谷に広がる森林地帯約270ヘクタールの土地に、ホテルやキャンプ場がありますが、ここも昨年、シンガポール系企業に買収されました。赤井川村も、喜茂別町同様、重要な水源地です。

買収直後、現地を訪れてみると、国道沿い約1・5キロメートルに広がる森林が壁になり、外から施設内の様子を見ることはできませんし、入口には柵があり入ることができませんでした。

釣り堀に餌をまいていた男性従業員に声を掛けると、キャンプ場やホテルは閉鎖しているが、釣り堀だけは営業している。オーナーには会ったことはないが、中国人かもしれない、と言います。

なぜこの場所を買収したのかと尋ねてみると、「この地域は労働人口が少ないから雇用が足らないため、前の持ち主だった地元の企業も手放したと聞いています。どうして買収したのか……」、そのように言って首をひねっていました。

札幌にある現地法人に確認してみると、今後は、ホテル経営を引き継ぎ、10年ほどかけて30億円程度を投資し、美術館や別荘地の造成を計画しているが、いつ着工するのか未定だといいます。

実は今年7月、再度訪ねたのですが、国道をはさんだ反対側の広大な森林地帯が買い増しされて、立入禁止の看板が立っていました。それに、7月下旬からキャンプ場を再開するという告知が張り出されていたので、知人にお盆の時期に覗いてもらったのですが、閉鎖されていたそうです。一体、何をしようとしているのか不可解です。

それから、日高山脈の麓の平取町豊糠地区は、平成23年に、中国と関係が深いといわれる日本企業にほぼ村ごと買い占められました。

しかし、この地区は、昨年に新しい道路ができるまでは、対向車が通行できるかどうかという細い道しかなく、冬には積雪により陸の孤島になってしまう袋小路状態の集落です。なぜそうした場所を買収したのか、疑問を感じた住民が関係者に中国資本の存在を確認すると、真顔で「命に気をつけろ」と忠告されたといいます。

ゴルフ場にせよ、キャンプ場にせよ、中国資本に買収された土地に共通しているのは、周囲が森林に囲まれ施設内の様子が分からないこと。近くに水源や農地があるなど、自己完結型の生活が営めるということです。地元の住民からは、「中国人を中心とした閉鎖的な集落ができるのではないか」という懸念が広がっています。

チャイナタウンがあちこちに

平成27年秋、1000ヘクタール(東京ドーム213個分)を超える、占冠村の総合リゾート施設「星野リゾートトマム」が中国資本に買収されました。買収を手掛けた復星集団は、その直前にも隣町のリゾート地「サホロリゾートエリア」を買収しています。非常に短期間のうちに、日本が誇る2つのリゾート地が中国資本の傘下に入ってしまったのです。

オーナーが中国企業になったことで、星野リゾートトマムやサホロリゾートエリアには、中国人観光客が急増しているといいます。ある政治関係者は、「今後、観光地の中国化が進み、利用するのは中国人がほとんどという事態になり、その場所が大型のチャイナタウン化するのは時間の問題だろう」と懸念しています。

そして、中国資本は高級住宅街にも進出しています。北京の映像制作会社が、札幌にマンション開発や不動産売買などを手掛ける会社を設立したのですが、同社は札幌を中心として手広く開発やビジネスを展開しています。

昨年2月には、大倉山ジャンプ競技場などで知られる札幌市中央区の宮の森地区に三階建てのマンション二棟の建設を表明しました。しかし、最近話題の「民泊」としての利用を懸念した地元の住民から反対の声が上がり、ちょっとした騒動となりました。

今後も中国資本による住宅地の買収が進めば、ある日、目を覚ますと、隣の土地に日本語を話せない人が立っていて、「きょうからここは私たちの土地です」と、突然家が建ち始める。そのような事態も十分に考えられます。

広大な森林地帯や農地などではなく、住宅やマンションの一室など、中国人個人が日本の不動産を買っている場合の目的は、中国人が日本の「永住権」を取得するためだという見方があります。

これは複数の不動産関係者が証言してくれたのですが、ある中国人は、90日間滞在できる観光ビザで沖縄から入国、北海道に移動し、仲介者の協力で会社を設立して会社名義で土地を購入。中国に一旦帰国し、今度は中長期在留ができる「経営・管理ビザ」で入国し、1年、3年、5年とビザを更新することで、最終的には永住権を申請する方針だといいます。

日本で不動産を持っていれば永住権を得やすいというのは、不動産を買う中国人の間で半ば常識化しているそうです。

そのような中国資本の動きに対して、北海道は平成24年に、水源地の売買については申告制にしましょう、という条例を制定しました。しかし、これは「3か月前に事前に届けなさい」というだけで、買収自体を規制できるわけではありません。

そもそも、日本には、外国資本の不動産売買を規制する法律もルールもありません。さらに登記も義務づけられていないことから、転売されれば誰が所有者なのか把握できなくなります。そのため、昨年末現在で中国資本に買収された土地は「東京ドーム500個分」と言われていますが、実数は1桁、2桁多いと分析する人もいます。

そのような日本のあり方は、諸外国と比べて異常です。アメリカでは、安全保障上の懸念がある買収案件などは、法律に基づき、大統領が拒否することができます。韓国にしても、安全保障に関する買収案件については事前の許可申請が必要です。

日本も領土を守るための法整備を急がなければ、取り返しのつかない事態になってしまいます。


(本記事は月刊『致知』2017年11月号 連載「意見・判断」から一部抜粋・編集したものです)

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◉『致知』2022年9月号《関連情報》
 強大化する中国、隣国ウクライナに侵攻を続けるロシア……この日本をいかにして守っていくべきか? 国家防衛の第一線で任務にあたってきたお二人に、現実を直視した議論・提言をいただきました。

◇宮本雅史(みやもと・まさふみ)
昭和28年和歌山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、産経新聞社入社。平成2年ハーバード大学国際問題研究所に訪問研究員として留学。5年ゼネコン汚職事件のスクープで新聞協会賞を受賞。司法記者クラブキャップ、警視庁記者クラブキャップ、社会部編集員、那覇支局長などを経て、現職。著書に、『報道されない沖縄 沈黙する「国防の島」』(KADOKAWA)『爆買いされる日本の領土』(角川新書)などがある。

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