3分で読める感動実話「マザー・テレサへの質問」(元松下政経塾塾頭・上甲晃)

1万本以上に及ぶ月刊『致知』の人物インタビューと、弊社書籍の中から、仕事力・人間力が身につく記事を精選した『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(藤尾秀昭・監修)。致知出版社が熱い想いを込めて贈る渾身の一書です。本日は松下政経塾の塾頭、常務理事を経て、現在は志ネットワーク代表として活躍されている人材教育のスペシャリスト・上甲晃さんのお話をご紹介いたします。

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マザー・テレサへの質問

マザー・テレサの言葉に常々深い感銘を受けていた私は、この人に会いたいという思いを募らせ、ついに後先考えずにインドのカルカッタ(現・コルカタ)へ渡りました。

彼女に直接、どうしても聞いてみたいことがあったからです。

当時のカルカッタは人口1000万人のうち200万人が路上生活者で、至るところに生死も分からない行き倒れの人が転がっていました。全身から膿を出している人、ウジ虫の湧いている人、とても側に寄れたものではありません。

しかしマザー・テレサと仲間のシスターたちは、一番死に近い人から順番に抱きかかえて、
死を待つ人の家に連れていき、体を綺麗に洗ってあげ、温かいスープを与えて見送るのです。せめて最期の瞬間くらいは人間らしくと願ってのことでした。運よく、カルカッタの礼拝堂でマザーに面会することのできた私は、

「どうしてあなた方は、あの汚い、怖い乞食を抱きかかえられるのですか?」

と尋ねました。マザーは即座に、「あの人たちは乞食ではありません」とおっしゃるので、私は驚いて「えっ、あの人たちが乞食でなくていったい何ですか?」と聞くと、

「イエス・キリストです」

とお答えになったのです。私の人生を変えるひと言でした。マザーはさらにこうおっしゃいました。

「イエス・キリストは、この仕事をしているあなたが本物かどうか、そしてこの仕事をしているあなたが本気かどうかを確かめるために、あなたの一番受け入れがたい姿であなたの前に現れるのです」

目から鱗が落ちる思いでした。マザーの言葉を伺った瞬間、私が松下政経塾で、あんな人は辞めてほしいと思っていた塾生が、実はイエス・キリストであったことに思い至ったのです。自分はこれまで、他人を変えようとするあまりどれほど人を責めてきたことだろうか。
しかし、いくらそれを続けたところで人を変えることはできない。人生でただ一つ、自分の責任において変えられるのは自分しかない。常に問われているのは、自分から変わる勇気を持てるかどうかだ。このことに気づいた途端、心が晴れ晴れとしてきたのです。


(本記事は『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』より一部を抜粋・編集したものです)

上甲晃じょうこう・あきら
 昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。広報、電子レンジ販売などを担当し、56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年、青年塾を創設。同塾で20年以上にわたる指導を続け、1700名を超える若者たちを育ててきた人材育成のスペシャリストである。著書に『志のみ持参』『志を教える』『志を継ぐ』『松下幸之助に学んだ人生で大切なこと』(いずれも致知出版社)など多数。


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