羽生善治×桜井章一「運を手にする秘訣」

麻雀代打ちの世界で20年間無敗の伝説を持つ桜井章一さん。桜井さんはなぜ麻雀の世界に入り、どのように勝利哲学を掴んできたのか――羽生善治さんとの対談で、その原点を語っていただきました。

悪い手の時にどう頑張るか

〈羽生〉
桜井さんは、どんな思いでいまの道に進まれたのですか。

〈桜井〉
僕が若い時は何の目標もなかったですね。大学の仲間は皆どこかに就職しようとして一所懸命会社の面接を受けてたけど、自分はどこにも行きたいとは思わなかったから、面接は一切受けたことがないんです。既に麻雀代打ち稼業で稼いでいたから、お金には困っていなかったんですけどね。

ただ、そんじょそこらの人間にはなりたくねぇなっていう思いだけはありました。そうして1年くらい経って外を歩いていたら、何か男の匂いのする人がいたわけ。

その人はたまたま貿易会社を経営されてたんだけど、この人の傍にいてみたい、この人の傍で男ってどういうものかを学びたいと瞬時に思った。それで10年間、秘書のような形で無給で働かせてもらいながら、麻雀の代打ちを続けたんです。

〈羽生〉
麻雀はどういうきっかけで始められたのですか。

〈桜井〉
暇だったからです(笑)。大学には入ったけど、卒論をやりたくなかったし、大学で学んだものは全部捨てて生きてみようと思っていました。だから暇で、仲間が出掛けるのに着いて行ったら、そこがたまたま雀荘だったというだけでね。

ところが、人が打っているのを後ろで見ていたらすぐにやり方が分かって、なんだ、麻雀ってやつには通り道があるじゃないか。その通り道で勝負はもうある程度決まってるんだなっていうのが見えたわけですよ。

それから麻雀が面白いと思ったのは、将棋と違って最初に大きなハンディを負って始まる時があるんです。4人で100メートル走るとして、一人が10メートルだけ走ればおしまいという位置にいるのに、僕は配牌が悪くて100メートル走らなきゃいけない時がある。

でも、そういう勝つのはちょっと不可能だろうというところから、打ち方次第で5分のところへ持って行けるんです。気がついたら誰も後ろにいないとかね。そこには運の要素がたくさん入っていて、どんな下手な子でも優勝できるのが麻雀なんです。

〈羽生〉
そういう様々な流れとか風向きを、感じ取れる人と取れない人がいると思うんですけど、何が違うんでしょうか。

〈桜井〉
普通は感じ取れないです。というのは、麻雀をやる人のほとんどが損得っていう入り口から入ってくるからです。もしかしたら得するかもしれないなって。そうやって出ていく時には損して帰っていく。結局負けている人のほうが多いでしょ。

だけど、僕の場合は最初から麻雀の通り道というのが見えたから、もうゲームでもギャンブルでもない。得だけするものなんですよ。

そうなると勝負どころで面白いのは、やっぱり自分の都合が悪い時。だからわざと運を落としたりするんです。こういうふうに打ってると、次は悪いことが起こるぞとか、それを繰り返しているとドツボにはまるぞとか、そういうのをあえてやって、そこからまたスタートする面白さがあるわけ。そういう遊びの中での鍛錬は、若い頃に随分していましたよ。

〈羽生〉
だから麻雀は、いい手が回ってきた時だけ頑張るんじゃなくて、本当は悪い手の時にどう頑張るかが面白いところでね。将棋でもそうじゃありませんか。圧倒的に不利な状況から何とか突破口を見出して勝負をひっくり返したという体験を、羽生さんは何回もなさってるはずですよ。

(本記事は『致知』2017年10月号 特集「自反尽己」より一部を抜粋・編集したものです。『致知』には人生、経営に役立つ一流の方々のご体験談が満載!詳細・ご購読はこちら

桜井章一 勝運をつかむ100の金言

◇桜井章一(さくらい・しょういち)
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昭和18年東京都生まれ。大学時代に麻雀を始め、裏プロとしてデビュー。以来、代打ちとして引退するまで20年間無敗、「雀鬼」の異名を取る。引退後は「雀鬼流麻雀道場 牌の音」を開き、麻雀をとおして人間力を鍛えることを目的とする「雀鬼会」を主宰。著書に『負けない技術』(講談社)など多数。最新刊に『桜井章一 勝運をつかむ100の金言』(致知出版社)。

◇羽生善治(はぶ・よしはる)
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昭和45年埼玉県生まれ。6歳で将棋を始める。小学6年生で二上達也九段に師事し、奨励会(プロ棋士養成機関)に入会。中学3年生で四段となり、史上3人目の中学生プロ棋士に。平成8年7大タイトルを独占し、史上初の7冠に。現在、7タイトル戦のうち6つで永世称号の資格を保持。通算タイトル獲得数単独1位。著書に『決断力』(角川書店)など多数。

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