アーティスト・小松美羽さんに聞く〝魂を磨く〟描き方

2020年8月、コロナ禍の中で放送され話題となった『24時間テレビ』。豪華出演者に交じって一際異彩を放っていたのが、アーティストの小松美羽さんです。番組のTシャツデザインを手がけた他、放送の最中に背丈を超すキャンバスと向き合い、迫力あるライブペインティングを実演され感動を呼びました。祈りや「大和力」を背景に神獣とその世界を描き上げる小松さんは、どのような半生を過ごし、唯一の表現に辿り着いたのか。近年国際的にも評価を高める気鋭のアーティストの言葉に迫ります。

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発信しているのは「日本らしさ」ではない

――小松さんの絵は国内に留まらず、海外にも熱烈なファンが大勢いらっしゃると伺いました。

〈小松〉
私は根本的に「大和力(やまとちから)」というものをすごく大切にしているのですが、それを様々な場で発信しているためか、〝日本らしさを世界に発信している〟と勘違いされることがあります。

しかし、「大和力」とは単に〝日本らしさ〟ではなく、日本が古来持っている、様々な文化を組み合わせまとめ上げていく力や方法のことを指しているんです。文化や宗教、歴史など、異なる背景を融合する力が「和」であり、その複数形が「大和」だと考えています。

今年8月に放映された『24時間テレビ43』(日本テレビ)の「チャリTシャツ」のデザインを手掛けましたが、中央にいる2体の狛犬の上に鳩を描きました。

これはイスラエルでの体験を元に描いたものです。イエス・キリスト様がヨルダン川で洗礼を受け、3回沐浴をしたといわれる場所に足を運んだ時、ヨルダンとイスラエルの国境を白い鳩が自由に飛んでいったんですね。

国境や差別意識などは人間が勝手につくり出したものであって、動物は何も囚われていない。その姿こそまさに私が表現したいアートそのものだったのです。

――国境を越えたアートですね。

〈小松〉
アートには言語は不要ですからね。

昨年、台湾を本拠とするバーチャルリアリティ(VR/仮想現実)の世界的な先駆企業(HTC CORPORATION)とVR作品を手掛けた際は、「INORI~祈祷~」をテーマにしました。

祈るという行為はどの宗教の人でもでき、貧富の差も関係ありません。どんな状況であろうとも意識さえあれば祈ることができるわけです。そういう人間の根本を深く見つめた作品を仕上げていきたいと常に強く感じています。

コロナ禍でより絵と向き合うようになりましたが、私がいま取り組まなければいけないのは、その人の魂を見ることだと思っています。肌の色や貧富の差は関係なく、人の内面に光を当てていくこと。絵には飾られた場所を守ったり、見た人を感化したりする力が備わっているので、そうした思いを込めて一点一点描いています。

技ではなく魂を磨く

――いつ頃から祈りや死生観をテーマに絵を描かれるようになったのでしょうか?

〈小松〉
それはもう小さい頃からです。私は長野県で生まれ育ったのですが、幼少期からずっと神獣の存在を身近に感じていたんです。兄妹と近くの森や千曲川で遊んでいる時、不思議なことによく〝山犬さま〟が現れ、迷子になりそうな私を家まで導いてくれていました。

そうした出逢いもあって、聖なるものの存在や目に見えない世界を信じるようになり、自然の流れで狛犬や獅子といった神獣たちを絵で表現したいと思うようになったのです。

  〔中略〕

私の絵を通じて皆に見えない世界を感じてもらいたい。自分だけのちっぽけな心を越えた、大きな世界を知ってもらいたい。そんな思いを込めて制作しているので、瞑想をしたり宗教観を学んだりしながら、自分の魂を磨くことを心掛けていました。

――魂を磨く。

〈小松〉
私は目に見えない世界や神獣を描かせていただいているのに、知識として何も知らなかったということに28歳頃にようやく気づきまして、タイに瞑想の修業に行ったり、ヘブライ文学博士の手島佑郎(ゆうろう)先生の私塾に毎月通って勉強するようになりました。他にも仏教の住職さんや神道の宮司さんにも教えを請うようにしています。

中でも、タイの聖者から教えていただいた

「魂は成長するもので、大切なのは肉体を磨くことではなく、魂を磨くことである」

との言葉はとても心に残っています。

心身を研ぎ澄ますためにそれまでも自分なりにいろいろと取り組んではいましたが、それは肉体や技術的な成長で、〝魂の成長〟を全く意識していなかったとハッとしました。絵が上手になるよりも、祈りのレベルを上げなければいけないと気づかされたのです。


(本記事は『致知』2020年11月号 連載「第一線で活躍する女性」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇小松美羽(こまつ・みわ)
1984年長野県生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。20歳の時に制作した銅版画「四十九日」がプロ活動への足掛かりに。2014年出雲大社へ絵画「新・風土記」を奉納。2015年有田焼の狛犬「天地の守護獣」が大英博物館日本館へ永久展示。2019年VR作品『INORI~祈祷~』が第76回ヴェネツィア国際映画祭VR部門にノミネート。2020年日本テレビ『24時間テレビ43』の「チャリTシャツ」のデザインを担当。国際的な評価は高く、多方面でその存在感を増し、日本の美術界へ衝撃を与えている。著書に『世界のなかで自分の役割を見つけること』(ダイヤモンド社)など。

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