「挑戦すること自体に意義がある」——オプト上場までの道【デジタルホールディングス会長・鉢嶺登】

今年7月、「デジタルホールディングス」へと社名を変更し、ネット広告代理店という枠を破ってさらなる成長と挑戦の道を歩んでいる元・オプトホールディング。ネット広告業界大手の地位を築き上げた同社ですが、1994年の創業から7年間は苦しい時期が続いたといいます。創業者兼現会長の鉢嶺登氏に、経営者として歩んできた道のりを振り返っていただきました。

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恵まれているからこそ挑戦し続ける

〈鉢嶺〉
なぜ自分が経営者の道を進んだのか振り返ると、中学生の頃に読み漁った戦国武将の伝記の影響が大きいのかもしれません。彼らの生き方に触れ、自分も生まれたからには何か世の中に足跡を残せることがしたいと考えるようになったのです。そして、政治家、教師、経営者の3つの職業を思い浮かべたのですが、一番自分に合っている、実現可能性が高いものとして選んだのが経営者でした。

大学卒業後は、起業して何をしたいのかまだ定まっていなかったこともあり、「3年で独立する」と心に決めて森ビルに入社、とにかくがむしゃらに働きました。ところが、2年ほど経った頃、起業しても10年後に存続している会社はほとんどないという情報に接し、「独立しても倒産してしまうのではないか」という恐怖心が芽生えてきたのです。

悶々とする中、私は休暇を取り、客船でエジプトのナイル川を下りながら遺跡を見て回るツアーに参加しました。岸辺に近づくと、現地の人たちが手づくりのTシャツなどをビニール袋に入れて船上に投げてきます。それが気に入ればお金を投げ返すということを最初は楽しんでやっていたのですが、ふと見ると、彼らは受け取ったお金を太陽にかざしてお祈りを始めたのです。

その姿を見てはっとしました。生まれた国がたまたま違うだけで人間の生活にこれほど大きな差があるのか。日本がいま繁栄を謳歌し、20歳そこそこの自分がエジプトまで旅行できるのも、先輩方が戦後の貧しい状況から努力と挑戦を続けてきたからではないかと。そして、私たちが努力と挑戦を忘れ、のほほんと生きていれば、再び日本は衰退してしまう。自分は恵まれているからこそ、挑戦し続けなければならないと気づいたのでした。

エジプトでのこの気づきが、私を起業へと踏み切らせてくれたといってよいでしょう。

社長一人の力では企業経営はできない

〈鉢嶺〉
帰国すると、心に決めていた通り、私は3年で森ビルを飛び出し、1994年に26歳でオプト(現・オプトホールディング)を設立しました。ただ、当時はちょうどバブルが崩壊した頃で、周囲は皆、起業には反対です。それでも「挑戦すること自体に意義がある」という信念は揺らぎませんでした。

アメリカで急激に市場が伸びていたダイレクトマーケティングに着目し、最初はファクスでDMを打つサービスから事業を開始。インターネットのインフラ整備が進むのを見計らって、ネット広告代理事業を中心としたeマーケティング事業に軸足を移していったのですが、いつ潰れてもおかしくない状況が七年ほど続きました。24時間、365日、会社のことばかり考え、松下幸之助氏や稲盛和夫氏の本やCDに学び、いろいろと実践しても、なかなか成果が出ないのです。

この苦しい時期に学んだのは、偉大な経営者にも、必ず右腕、左腕と言われる人材がいる、社長一人の力ですべてができるわけじゃないということでした。そこで私は、2001年からCEO(最高経営責任者)として社風づくりや採用といった得意分野に専念することにし、現場の経営戦略や営業、財務等は信頼する役員に任せることにしました。要するに、お互いの弱みを補い合い、強みを生かすチーム経営に切り替えていったのです。

その少し前には、役員とそれぞれの夢を腹を割って話し合い、会社の発展と個人の夢を同時に実現させる「3・3・3計画」(売り上げ30億円、営利3億円、3年後の上場)をつくり、お互いのベクトルを合わせる作業を行いました。以後、「3・3・3計画」を軸にして事業計画を立て、チーム経営を徹底していった結果、当社の業績は大きく伸び始め、2004年にジャスダックに、2013年には東証一部に上場することができました。

(本記事は月刊『致知』2019年4月号 特集「運と徳」から一部抜粋・編集したものです)

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◇鉢嶺登(はちみね・のぼる)
昭和42年千葉県生まれ。早稲田大学卒業後、森ビル勤務を経て、平成6年26歳でオプト設立。12年に広告効果測定システム「ADPLAN」(アドプラン)を開発、販売開始。16年にジャスダック上場。25年に東証一部上場。著書に『ビジネスマンは35歳で一度死ぬ』(経済界)などがある。

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