「一期一会」をモットーに新素材開発を目指して—— アキレス社長・伊藤守

2003年に開発され、累計7000万足超を売り上げている子供向けスポーツシューズ「瞬足」。メガヒット商品「瞬足」を生んだアキレスの現社長・伊藤氏に、入社までの経緯から「瞬足」ヒット後の素材・商品開発に懸ける思いまで、幅広く語っていただきました。

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人との縁で人生が開けた

〈伊藤〉

「せっかくなので、一度会社にいらしてください」

人事課長のそのひと言がなければ、私は当社に入社することもなく、全く別の人生を歩んでいたことでしょう。

私は子供の頃から化学への関心が高く、大学院まで進んで研究活動に熱中していましたが、あいにく当時は第2次オイルショック後の就職難。内定獲得に苦戦する中で、社名に「化学」の2文字があるというだけで応募したのが興国化学工業(現・アキレス)でした。ところが、研究発表で自宅を留守にしていたために面接日の通知に気づかず、後から慌ててお詫びの電話を入れたところ、冒頭の人事課長のひと言で再度面談の機会を与えられ、幸運にも採用に至ったのでした。

1年後、就職に苦労した私を気に懸けてくださっていた大学の恩師から「いい会社があるから受け直してみないか」と、高待遇の一流企業を紹介されました。しかし、既に当社の温かい人間関係や、切磋琢磨できる仲間に深い愛着を抱いていた私は、改めてこの会社でやっていく肚を決めたのです。

こうした経緯でビジネス人生をスタートしたこと、そしてその後の人生でも思わぬ縁から道が開ける体験を重ねてきたことから、私は一期一会を座右の銘に、人との出会いを大切にして今日まで歩んでまいりました。

入社して最初の配属先は、研究職を希望していた自分の意に反して営業部門でした。会社から課された厳しい目標に応えて好成績を上げていたものの、大学院まで打ち込んでいたものづくりへの思いは断ち難い。異動を直訴したところ上司から強い反対に遭いましたが、同窓の副社長の計らいで入社5年目に研究開発部門へ移ることになりました。

当時おそらく、他部門からの予定外の増員に上司も困惑したのでしょう。しばらく好きなことをやってよいと言われ、新しい素材の開発に取り組むことにしましたが、いくら実験を繰り返してもなかなか思わしい結果が得られません。しかし、離席中に偶然起きた化学反応によって、運よく電気を通すプラスチック、導電性ポリマーを開発することができたのです。

人を巻き込み自分の思いを貫け

〈伊藤〉

当社は明治40年、殿岡利助が栃木県の足利で立ち上げた織物の製造販売業に始まり、繊維に樹脂を重ねる手法で、軍靴やゲートル、ゴムボート等々、数々の画期的な商品を生み出してきました。そうした中で事業の1つの柱に育ったのがシューズ部門です。

ヒット商品が1つ出ても、後が続かなければ部門は安定しません。一時は事業の縮小も検討される中で、常に新しいものを求めてもがき、苦しむ中から生まれたのが、子供向けスポーツシューズ「瞬足」でした。

運動場のトラックのコーナーで転びにくくするために考案された左右非対称の靴底のシューズの開発は、当初は社内でも賛否が分かれました。しかし、これまでにない新しい試みには前向きに取り組むべきだという結論に至り、社内外の多くの人々を巻き込んで商品化に尽力した「瞬足」は、幸いにも起死回生のメガヒットとなったのです。

その後もシューズ部門は、海外ブランドや国内のプライベートブランドの台頭で一層厳しい競争に晒されています。平成24年に社長に就任した私は、何のためにアキレスという会社があるのかという原点に返り、これまで培ってきた素材開発力を総動員して、当社でなければできない商品の開発に尽力しています。同時に、車輌の軽量化と燃費向上に寄与する優れた内装材の開発にも取り組むなど、将来を見据えて事業の裾野を広げていくことにも挑戦しています。

(本記事は『致知』2019年5月号連載「私の座右銘」より一部を抜粋・編集したものです。)

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◇伊藤 守(いとう・まもる)

昭和29年山形県生まれ。51年山形大学工学部卒業。54年東京工業大学大学院修士課程修了。興国化学工業(現・アキレス)入社。平成14年執行役員。16年取締役。その後常務、専務を経て、24年社長に就任。

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