サントリーHD社長・新浪剛史が大事にしていた2つの教え

日本を代表する企業の一つ、サントリーに招聘され、創業家以外から初となる社長に着任した新浪剛史さん。これまで経営危機に陥ったローソンをV字回復させるなど、輝かしい実績を残してきた新浪さんですが、その原点には人の何倍もの努力、そして三菱商事時代に先輩から学んだ2つの教えの実践があったといいます。

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朝一番に出社し、夜は最後に帰宅しろ

〈新浪〉
入社当時、先輩から教わり実践していたことが2つあります。

1つ目が休日の使い方について。

なぜ週2日の休みがあるか知っているか? それは、1日は勉強し、1日は趣味のためである

そう学んでから、土曜日は毎週神奈川県立図書館に通い、10時から18時まで勉強に打ち込みました。社内留学制度を活用して、ハーバード大学に留学するためにTOEFLGMATの試験勉強の他、論文対策で経営書を読み漁り、世界の動きを追っていました。

一方、日曜日は会社のバスケットボールチームに入り、練習や試合に明け暮れていました。このようにメリハリある生活を送っていたため、根を詰めすぎずに勉強も継続できたのだと思います。

2つ目が「朝一番に出社し、夜は最後に帰宅しろ」との教えです。

朝は7時には会社に来て、海外から送られてくるテレックス(メールやFAXがない時代に使われていた通信機器)を切り、先輩の机に置くのが日課でした。当然目を通しても内容を理解できないわけですが、早朝から出社していると、先輩から「何か分からない点はないか」と聞いていただけるようになり、そうした機会を逃さず質問することで、着実に知識をつけていきました。

当時の先輩たちはテキパキと仕事をする人が多く、帰宅時間は一番遅かったとはいえ19時半頃だったように思います。仕事後にはよくチームリーダーから「ちょっと一杯いくか」と声を掛けていただき、そこで砂糖部が赤字に陥った理由を教えていただいたり、部の改革のために元組織学会会長の野中郁次郎先生らが記した『失敗の本質』を読むよう勧められたりしました。

「朝一番に出社し、夜は最後に帰宅しろ」とは、最近の働き方改革に一見反するようですが、自ら成長の機会を増やすことで確実に実力を養うことができました。

3度の挑戦で手にした海外留学

〈新浪〉
社内の留学制度に初めて挑戦したのは27歳の時でした。毎年約100人の応募に対して合格者は僅か3人。先述の通り毎週土曜日の努力の成果もあり、1次の筆記試験は通過できたものの、2次の役員面接が受からない。人としての成熟度が足りなかったのか、2度目の挑戦も役員面接で落ちました。

受からなかった場合を考慮し、3度目は内密に直接ハーバード大学の試験を受けました。その上で社内の面接に挑んだところ、「新浪はようやく落ち着いた」と評価され、合格することができたのです。その後ハーバードからも合格通知を得ましたが、社内には自費留学制度がなかったにも拘らず、外部の試験を受けたことに対して、「新浪は会社を辞めてハーバード大に行くつもりだったんだ」と非難されました。

そのため32歳でMBAを取得し帰国してからも、順風満帆に歩めたわけではありません。辞めていきそうなじゃじゃ馬は扱いにくかったのか、受け入れてくれる部署がなかったのです。幸い、以前お世話になった先輩の部に迎え入れていただいたことで事なきを得ました。そこは国内スーパーに冷凍食品を販売する事業でした。

経営学を勉強したことで、いつかは事業を立ち上げたいという気持ちがあったため、紆余曲折を経て、三菱商事で企業内起業家として病院給食や社員食堂事業を手掛けることになりました。そこで7年間もがき苦しみながらも事業を上場させるという成功を収めることができ、その経験がローソンの経営改革という仕事に繋がっていったのです。

振り返ると、二十代は好奇心の塊でした。大きな野望や志があったわけではありませんが、日々好奇心に突き動かされ努力しているうちに、色々な方々と出逢い、そして支援を得ることでハーバードに留学することができ、ローソンの社長を務め、現在サントリーの経営を任せていただいています。

若いうちは将来像が明確に描けずともいいと思います。好奇心に従って様々な挑戦をする。壁にぶつかり失敗を繰り返し、経験を積むことで自らの進むべき道を見出していくことができるのです。


(本記事は『致知』2020年2月号 連載「二十代をどう生きるか」から一部抜粋・編集したものです)

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新浪剛史(にいなみ・たけし)
昭和34年神奈川県生まれ。56年三菱商事入社。平成3年ハーバード大学経営大学院を修了しMBA取得。14年ローソン社長に就任。26年サントリーHD社長に就任。

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