弱さを見せてもいい——フリーキャスター・清水健

 

妊娠をしながらの乳がん治療。苦難の道を突き進んだ清水奈緒さんは、息子を出産した120日後に29歳の若さで天国へと旅立ちました。夫であるフリーキャスターの清水健さんは、現在、がん撲滅のために講演活動などに尽力しています。清水さんが語るシングルファザーとしての奮闘、活動に懸ける思いとは。

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弱さを見せてもいい

(――奥様が亡くなられた後、生後4か月の息子さんを一人で育てると決意されたと伺いました。)

(清水) 

責任感からか分かりませんが、「いままで通り仕事を100%行いながら、子育ても自分で行い、周囲には迷惑を掛けない」と、意気込んでいました。

しかし、仕事をしながら生まれたばかりの子供を一人で育てるなんて、無謀だったと痛感させられました。そもそも、育児に対する知識が全くなくて一人では手も足も出なかったんです。いまなら無理なことは無理ですとはっきり言えますが、当時の僕は弱音を一切吐けなかったので非常に苦しみました。もちろん、近所に住んでいた僕の母や、既に小学生の子供がいる姉が親身になって助けてくれましたが、頼っていること自体にも罪悪感を抱いていました。

いわゆるイクメンと言えば聞こえはいいですが、常に息子を第一優先で仕事が二番。そのことに対して、仕事を蔑ろにしてしまっていないか、自分を責め続けました。

物理的に会社にいられる時間が減ったため、職場の人たちとコミュニケーションが不足し、上手くいかないことも出てきて、頑張れば頑張るほど空回りばかり。愚痴を言ったり相談ができればよかったのかもしれませんが、僕にはできませんでしたね。

(一人で苦悩を抱えられていたのですね。)

(清水) 

妻の三回忌を迎える頃、パッと立ち止まって自分を客観視した時、愕然としました。自分でも驚くほどやつれていて、64キロあった体重は44キロにまで激減していたのです。

「妻はいなくなったけど、ちゃんとパパもやるし、仕事もやるから大丈夫! 負けるものか!」、そう自分に言い聞かせていたものの、心も体も追いついていなかったのだと思います。

(――その状況をどう打開していかれたのですか?)

(清水) 

初の著書を出版し、講演の依頼が来るようになったことが大きな転機でした。

講演って、過去の自分の後悔も含めてすべてを振り返りながらお話しするので、かなりしんどいんですね。それでも自分の心と向き合い、ありのままの言葉ですべてを曝け出すと、参加者の皆さんが「よく話してくれた」「私たちも一緒だから」と涙を流してくださったんです。

それまでは格好をつけて、「しんどいけど僕は大丈夫」と、無理に笑おうとしていたんですけど、笑わなくていいんだ、弱さを見せてもいいんだと教えてもらいましたね。

(――ああ、ありのままでいいのだと気づかれた。)

(清水) 

ある講演で、周囲を憚らずに大泣きされている60代の男性がいらっしゃいました。その方もシングルファーザーで、講演が終わった後、「大丈夫だ。俺を見てみろ。辛い時期もあったけど、いま娘は元気に大学生になっているから」と応援してくださったんです。

こうした方々との交流一つひとつが、僕の支えとなっています。

(本記事は月刊『致知』2019年11月号「語らざれば愁なきに似たり」から一部抜粋・編集したものです。あなたの人生、経営・仕事の糧になるヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇清水健(しみず・けん)

昭和51年大阪府生まれ。中央大学文学部社会学科卒。平成13年読売テレビに入社。21年から夕方の報道番組「かんさい情報ネットten.」を担当し、「シミケン」の愛称で親しまれる。25年スタイリストの奈緒さんと結婚。翌年長男が誕生。その112日後に奈緒さんが亡くなる。28年一般社団法人清水健基金を設立し、代表理事に。29年読売テレビを退社し、子育てをしながら全国で講演活動を行っている。著書に『112日間のママ』『笑顔のママと僕と息子の973日間』(共に小学館)がある。

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