2021年02月28日
京セラを一代で世界的企業に育て上げ、不可能と言われたJALの再建も成し遂げた稲盛和夫さん。その稲盛さんを師と仰ぐのがキシヤ会長の末石藏八さんと、日本経営名誉会長の小池由久さんです。お二人は、稲盛さんの教えをどのように人生・経営に生かしてきたのでしょうか。語り合っていただきました。
◉《期間限定の特典付きキャンペーン開催中》お申し込みくださった方に、『小さな幸福論』プレゼント!各界一流の方々の珠玉の体験談を多数掲載。総合月刊誌『致知』はあなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。
▼詳しくはバナーから!
「考え方×熱意×能力」
〈小池〉
先ほど国税局と闘争したことをお話ししましたが、実はその頃から私は稲盛塾長に助けていただいているんですよ。
どういうことかというと、ちょうど社長に就任した平成8年に塾長の「経営講話テープ」を購入していましてね。すぐに課税問題が浮上してきたので、私は毎日のように帰り道にテープを聞きながら、逃げ出したくなるような気持ちの自分を鼓舞しようと、貪るように何度も聞き返していました。
それから平成10年に調剤薬局事業に乗り出してしばらくすると、頼りにしていた右腕が辞めたいと言い出すなど会社の歯車が狂い始めたんですよ。
〈末石〉
何が原因だったのですか。
〈小池〉
なぜだろうかと必死に考えていたのですが、塾長が書かれた「経営の原点十二か条」の一番「事業の目的、意義を明確にする」を見て目が覚めました。
思い返せばこの事業を立ち上げたのが20億円を弁償することを目的としていて、きょうをどう生き延びるかということに凝り固まっていたことに気づいたんです。
ですからもう一度社員たちとこの事業の目的、意義というものを話し合うことができたので、最終的には右腕を含めて皆が私を応援してくれるようになったのは、本当にありがたかったですね。
〈末石〉
塾長からの学びを経営に生かしてこられたわけですね。
私が塾長から学んだことは、人生の目的は世のため人のために尽くすこと、言い換えれば「心を高める」ことで、これを自分に言い聞かせて日々実践してきました。
塾長は人生・仕事の結果を「考え方×熱意×能力」という方程式にまとめられていて、熱意と能力は0~100まであって、考え方はマイナス100からプラス100まであるとおっしゃっていますよね。
私はよくこの方程式のことを若い人たちに話しているのですが、やはり「能力」というのは個人によってどうしても差が出てくる。しかし「熱意」を持ち続けていれば、能力はそこに留まることなく高まっていくから必ず勝負に勝つ。だから自信を持ちなさいと言ってエールを送るんですよ。
〈小池〉
なるほど。では「考え方」についてはどうですか。
〈末石〉
「考え方」については「心の持ち方」と言い換えた上で、「心を高める」努力をしなさいと説明しています。ただ「心を高める」と言っても、具体的にイメージしにくいと思うんですよ。だから私が言うのは辛いこと、苦しいこと、悲しいことのうち、悲しいことは必然的にやってくるから選ばなくてもいいと。
しかし、辛いことや苦しいことは敢えてその道を選びなさいと言うんです。そうしないと、人の苦しみというものが本当の意味で分かってきませんからね。
つまり人生において、辛いこと苦しいことを、そして時に悲しいことも経験することで人間の心というのは高まっていくんだということを伝えています。
〈小池〉
それはとても分かりやすいお話ですね。
◇小池由久(こいけ・よしひさ)
昭和29年岐阜県生まれ。高校卒業後、47年会計事務所(現・日本経営)に入社。平成8年社長に就任。19年会長を経て、27年名誉会長に就任。調剤薬局チェーン・サエラ社長も兼任。