世界最速でミシュラン3つ星を獲得。天才シェフ・米田肇の独立秘話

世界最短でミシュラン3つ星を獲得した料理人の米田肇さん。一見、順風満帆に見える道のりにも、度重なる逆境と並々ならぬ努力があったといいます。

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開店から僅か1年5か月での快挙

――35歳で独立するという目標を実現されたのですね。

〈米田〉
独立と言っても、お店を始める場所も一緒にやるスタッフもまだ見つけていない状態。少し前にがんを患っていた父が急死してしまったこともあったので、実家のある関西に戻りました。

その時、私は既に結婚していて息子はゼロ歳。現在の場所が見つかるまでの15か月間は仕事ができず悶々とした日々が続きました。

2008年5月12日にオープン日が決まると、2か月でスタッフを採用して、開店準備を整えましたが、皆素人ばかり。料理を教える以前に、お水を足すタイミングを指導するところからのスタートでしたので、毎日がストレスの塊でした。

加えて、私自身もシェフや経営の経験がなかったため、オープンから半年は1週間で7時間くらいしか寝ませんでした。料理に限らず経営や語学など、毎日5冊くらいの本を持ち歩いては、エレベーターに乗っている隙間時間などを利用して勉強ばかりしていました。

――そんな状況の中、開店から僅か1年5か月で3つ星を獲得できた要因は何でしょうか。

〈米田〉
初めから3つ星を目指していたので、スタッフと一緒に東京の3つ星レストランを全部回り、共通点をとことん分析しました。そこで気づいたのは、3つ星のお店は品質レベルが格段に違うということ。皆でどこを改善したらいいかという研究を重ね、自分たちの料理に「このクオリティーなら3つ星の水準を確実に越えている」という自信を持つことができた2か月後に、本当に3つ星をいただけたんです。

ただ、3つ星を獲得してからのほうが大変でした。

――詳しくお聞かせください。

〈米田〉
おかげさまで連日昼夜ともに満席で、1日に400本もの電話が鳴り続けました。朝6時から準備を始め、終わるのは深夜2時、3時。スタッフが少しでも失敗すると「ここを3つ星のお店だと思って仕事をしているのか!」と叱ってしまい、私もスタッフも疲弊していきました。

ちょうどその頃、フランス料理を続けるのにも疑問を抱くようになっていたんです。自分の美意識はどこから来るのかと根源を探し求めたところ、幼い頃から食べていた日本食に辿り着きました。日本食については無知だったので京都に学びに行くと、そこで日本料理の奥深さや千利休の美意識の高さなどに感激したんですね。

自分の求めているものは日本にはないと思って海外に行ったにもかかわらず、こんなにすごい料理が身近にあった。孫悟空が觔斗雲に乗って天高く飛んだと思ったら、実はお釈迦様の手のひらから出ていなかったという話と同じくらいの衝撃でした。


(本記事は月刊『致知』2018年4月号 特集「本気 本腰 本物」から一部抜粋・編集したものです)

◉『致知』2022年5月号に米田肇さんが再び登場!! 同じくミシュラン三ツ星に輝く「カンテサンス」オーナーシェフ・岸田周三さんとの対談です。若くしてチャンスを掴んできた二人のプロフェッショナルの語り合いは、料理の枠を超えて仕事の本質を教えてくれます。詳しくは下の記事から!

『致知』2022年5月号 対談「ミシュラン三ツ星に選ばれ続ける店はどこが違うのか」
米田 肇(HAJIMEオーナーシェフ)× 岸田周三(カンテサンスオーナーシェフ)

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◇米田肇(よねだ・はじめ)
昭和47年大阪府生まれ。大学卒業後、エンジニアを経て料理の道へ。平成20年大阪府に「HAJIME」を開業。その1年5か月後に世界最短でミシュラン三つ星を獲得。25年「アジアのベストレストラン50」に選出されるなど、世界的な評価を得ている。

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