父親は家庭でどうあるべきか——伝説の教育者・森信三が説く父親像

毎年やってくる「父の日」。日々、仕事が忙しい中で父親としての自分を省み、家庭でのあり方を振り返ってみると、至らない部分に目がつく……そんな悩みを抱くお父さんは多いことでしょう。奥さんや子供にどう接したらよいのか、一家の長としてどうあるべきか――。
「伝説の教育者」と呼ばれ、グロービス経営大学院学長・堀義人氏ら、現代のビジネスリーダーの多くが師と仰ぐ哲学者の森信三先生〈1896-1992〉は、その明確な指針を示していました。生前の森先生の身近で長らく教えを受け、その著作の普及に尽力された寺田一清さんのお話を紹介します。

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◉父親として何を学び、何を教えるべきか。

一人の人間としてどうあるべきか――。
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父親は肚を括れ

〈寺田〉
いつの頃からか、父親の権威が失墜したといわれるようになりました。

ただでさえ男性は、仕事のため家族と接する時間も限られており、子供にとってあまり理解され難い存在です。家庭でどう振る舞うか、子供とどう接すべきか、というのは多くの男性が共通して抱える悩みといえましょう。

森先生は、

「父親は息子に対して、一生のうちに三度叱るか、それとも一度も叱らないか、どちらかに肚を括らなければならない」

と説かれています。

森信三先生

森先生は、我が子の人間教育、とりわけ基本としての躾の責任は、その9割までは日常の大半をともに過ごす母親にあり、父親の役割は、自分の人生観に基づいて人間としての生き方の方向を示すこと、言い換えれば子供に生き方の種まきをするところにあると説かれています。

そのためにはまず、我が子の一挙一動について一切小言を言わないというのが父親の根本態度であること。そこにかえって父親の威厳というのがあるとの教えです。さらに森先生は、このことはとりわけ年頃の息子に対して心掛けなければならない、と注意を促されます。

娘の場合は異性ということもあり、父親のことが息子から見るよりはよく理解できるようですが、年頃の息子というものは、いわゆる同性の反発で、父親と向き合って座ることさえ呼吸が詰まるように思うものです。にもかかわらず、事細かにいちいち叱りつけることは、息子にとっては我慢のできない事柄なのです。

たとえよくない点があったにしても、よほどのことでない限り、心中深く納めて、それに対してあれこれ言わないこと、絶対に叱らぬという決心、つまり怒らぬ覚悟が大事であり、そこに父親としての人間修業があるのです。

森先生の教えを実践して気づかされたこと

その一方で、これだけは絶対許せないという問題、放っておいたら我が子の一生に関わる問題だと察知した事柄に関しては、断乎として叱るべきが、これまた父親のあるべき態度です。

しかしそういう大事な注意は子供の一生に三度を超えてはならない。かくあってこそ、当の子供の生活においても長く忘れ得ない刻印としてその心に刻まれ、生き方の上に一大光明となると説かれているのです。

この教えに私はどれほど勇気づけられ、助けられたことでしょう。4人の息子と1人の娘を持つ私が、つい小言を言いそうになる気持ちを抑えてグッと言葉を呑み込めたこと、彼らが道を踏み外しそうになった時に断乎として引き戻すことができたのは、心の中にいつも森先生の教えがあったからです。

おかげさまで子供たちはいずれも立派に独立を果たしてくれ、いまは10人の孫と3人のひ孫に恵まれるまでになりました。長男は現在58歳で、大学医学部の教授を務めています。先日、私たち両親を旅行に招待してくれ、一緒に入った旅館の風呂で背中を流してくれたのには感激しました。

どんなに忙しくとも守るべき原則

父親は確かに理解されにくい存在ですが、男としてやるべきことをしっかりとやっていれば、その後ろ姿を通じて自ずと父親に畏敬の念を抱くようになるものです。真の権威というものは、権力を行使することによって生ずるものではなく、自分の生き様から醸し出される人格、品位、力量を通じて生じてくるものなのです。

しかしながら、仕事に忙しく、妻や子供と十分に接する時間を持てない男性は、コミュニケーションの不足から時に誤解を受けることもあるでしょう。

そこで生きてくるのが、先ほどご紹介した「鉄則2か条」です。

どんなに忙しくとも、家族に対してこれだけは守るという鉄則を立て、それを実践するのです。

「帰宅前に必ず連絡を入れる」

「週に一度は一緒に食事をする」

何でも構いません。各々の事情に合わせ、実行可能な約束事を自分で立て、それを貫いておれば、その誠意は家族にも必ず伝わるはずです。


(本記事は月刊『致知』2010年7月号 特集「道をつくる」から一部抜粋・編集したものです)

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◇寺田一清(てらだ・いっせい)昭和2年大阪府生まれ。旧制岸和田中学を卒業し、東亜外事専門学校に進むも病気のため中退。以後、家業の呉服商に従事。40年以来、森信三師に師事、著作の編集発行を担当する。社団法人「実践人の家」元常務理事。編著書に『森信三先生随聞記』『二宮尊徳一日一言』『森信三一日一語』『女性のための「修身教授録」』『家庭教育の心得21』『父親のための人間学』(いずれも致知出版社)など多数。

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