【竹中ナミ×髙橋政代】新しい発想をどう生み出すか

最新の科学技術を活用した障がい者支援に20年以上にわたって奮闘してきたプロップ・ステーション理事長の竹中ナミさん。現役の眼科医として目の悩みを抱える人々に向き合うとともに、iPS細胞を網膜に移植する手術を世界で初めて実現し、再生医療をリードする髙橋政代さん。ともに道なき道を切り開いてきたお二人に、新しい発想を生むヒントをお話しいただきました。

情報に白黒つけない

〈竹中〉
政代さんは、目の治療の新しい世界を切り拓いてきたわけですが、その発想力は一体どこから来るものなの?

〈髙橋〉
一つは情報に自分で白黒つけないということでしょうか。
 
多くの人が、この人はよい人悪い人、これは正しい正しくないとか、最初から物事に白黒をつけて判断してしまいがちなんですが、それだと情報が全部削ぎ落とされて、大事なことを見落としてしまう可能性があるんですね。障がい者も同じで、多くの人が最初から障がいがある人、障がいがない人と分けてしまうから、大事なことが全部削ぎ落されてしまう。

〈竹中〉
まさにそうですね。

〈髙橋〉
だから、私はよくラボで「情報はグレーで集めなさい」と言っているんです。この論文のこのデータは何割正しい、これは何割正しくないという感じで情報を集めていくと、次第にグレーの濃淡が重なっていって、ある時、これは正しいと思える、白く抜けているところがびゅーっと見えてくる瞬間があるんですよ。
 
やっぱり、科学者の神髄は初めから白黒つけずに疑うことであって、最も疑うべきは自分自身の考えなんですね。この考え、仮説は正しいかどうかをあらゆる角度から批判してみないといけない。

〈竹中〉
それは政代さんの研究者としてのセンスやね。センスの悪い人は、なかなかそれができない。

〈髙橋〉
あと、学生には「専門領域が二つあるといいよ」といつもアドバイスしています。違うものを組み合わせると、必ず新しいものが生まれるんですよ。私の場合でも、脳の基礎研究をする研究所に専門の違う眼科医がいったから新しい発想が生まれた。話題になったピコ太郎さんの「PPAP」と一緒だと思います。ペンとアップルをくっつけるんです(笑)。

〈竹中〉
私はそれを人と人、人間でやりたいのよ。私は自分のことを「人と人とを繋ぐメリケン粉」「翻訳マシーン」って言っているんだけど、人と人とが繋がることで違うもの、新しいものが生まれてくる、それがすごく好きなんよ。

〈髙橋〉
人と人が繋がった時、最も大きな可能性が生まれますよね。

〈竹中〉
チャレンジドという言葉一つでも、チャレンジド自身が言う時、親や企業の人、政治家が言う時、それぞれ意味が微妙に違います。でも、人は意味が食い違ったまま会話していることが多い。

【「チャレンジド」とは「障がいを持つ人」を表す新しい米語「the challenged (挑戦という使命や課題、挑戦するチャンスや資格を与えられた人)」を語源とし、障がいをマイナスとのみ捉えるのでなく、障がいを持つゆえに体験する様々な事象を自分自身のため、社会のためポジティブに生かしていこう、という想いを込め、プロップ・ステーションが1995年から提唱している呼称】
 
それをいかに翻訳し、人と人とを繋げて、よりよいもの、新しいものを生んでいくか。その力はこれからも磨いていきたいですね。
 
だから私は、本来、リーダータイプではなくて、徹底したコーディネータータイプなんですよ。

〈髙橋〉
いや、ナミねえはリーダータイプに見えますけど(笑)。

〈竹中〉
まあ、私は風呂敷を広げまくるから、そう見えるだけ(笑)。

(本記事は月刊『致知』2019年2月号 特集「気韻生動」から一部抜粋・編集したものです。いまの時代に求められるのは「人間力」――人生や仕事、人材育成のヒントが満載!月刊『致知』の詳細・ご購読はこちら

髙橋政代(たかはし・まさよ)
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昭和36年大阪府生まれ。京都大学医学部卒業、京都大学医学部付属病院での勤務を経て、平成7年アメリカ・ソーク研究所に留学。帰国後、眼科医として患者と向き合いながら、京都大学医学部付属病院探索医療センター助教授、独立行政法人理化学研究所と所属を替え、最先端医療の研究に取り組む。

竹中ナミ(たけなか・なみ)
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昭和23年兵庫県生まれ。神戸市立本山中学校卒業。24歳の時に重症心身障がい児の長女を授かったことで、障がい児医療・福祉などを独学。障がい者施設での介護などのボランティア活動を経て、平成3年就労支援活動「プロップ・ステーション」を創設。障がい者のパソコンの技術指導、在宅ワークなどのコーディネートを行う。11年エイボン女性年度教育賞、14年総務大臣賞受賞。著書に『ラッキーウーマン』(飛鳥新社)などがある。

 

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