宇野昌磨、浅田真央を育てた名コーチ・山田満知子が語る「伸びる人と伸びない人の差」

宇野昌磨、浅田真央、伊藤みどりら数々のフィギュアスケート選手を育ててきた山田満知子コーチ。小谷実可子さんなどを育て、日本のアーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)を牽引してきた金子正子さん。半世紀近く指導に携わる中で掴んだ、「伸びる人と伸びない人の差」を実感を込めてお話しいただきました。

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勉強やスキルよりも大切なもの

金子) 

私は条件が悪い中で工夫するということは、選手についても同じことが言えると思います。素質や才能のある子は簡単にできてしまうから、あまりじっくり考えることがないんですね。才能があるのに伸びないという選手は、大体深く自分を考えることができない子が多い。

(山田)

はっきりいって頭が悪いのはダメですね。学校の勉強じゃないですよ。一を言って十を知るじゃないけど、コーチがいま何を考えているかとか、きょうは何を練習したらいいかとか、こちらが何も言わなくても察することができる。そういう勘がいい子が伸びますね。

(金子) 

同感です。それと素質が足りなくても、それでもシンクロが好きだという選手が私は好きです。

例えば、私はスタイルが悪いから並の練習をしていてはダメだ、だからコーチに三言われたら七やろう、というような選手。スタイルが良くて素質がある選手はどんなコーチが指導しても育つから私はあまり興味が湧かない。誰が見てもこの子がチャンピオンになるとは思わないだろう、という選手を育てるところに指導者の腕の見せどころがあると思うんです。そういう選手に限って、こちらが「もうやめなさい」と言うくらい練習するんですね。能力がなくても、そういう子は伸びてきますし、やりがいがあります。

(山田) 

私の場合、チャンピオンにするとか、メダリストにするとか、実はそれほど興味がないんです。

うちに習いに来て、3しか能力がない子を5とか7とかにすることはできても、もともと10の才能を持っている天才にはかなわない。五輪に出てくる選手なんてみんな天才ですよ。その天才たちがさらに天才的に努力をして、やっとメダルに手が届くかどうか。そういう厳しい世界です。

(金子) 

あとは石にかじりついてでも世界一になるというくらいの信念と執念、そしてそれと同じくらい強い気持ちで競技を愛していないと、やはり世界の頂点には立てません。しかし、そういう気持ちを持たせるのも、私たちコーチの腕だと思いますね。

(山田) 

世界の頂点に立てるのは天才の中の超天才だけ。たまたまみどりや真央はなれましたけど、なれない人がほとんどなんですよ。

そりゃ私も2番より1番のほうがいいですよ。でも、たとえ5番でも、みんなから「あの子、いい子だったね」「あの人の演技って素敵だったね」と言われるスケーターがいいなと私は思います。だってジャネット・リンだって3位ですよ。誰も1位の人なんて覚えちゃいない(笑)。彼女のスケートのいろいろなシーンに人間性が出て、それがいつまでも私たちの心に残っているんです。

だから私はジャンプができないとか、スピンが下手とか、そういうことではまず怒らない。礼儀とか躾のほうが多いかな。反抗期の時、生意気だったり、先生にプンみたいな態度でいる子には「ちょっと待ったぁ!」と。「私はあなたより年上で、しかも先生でしょう。いまの受け答えはないでしょう」とはっきり言います。要するに生き方の注意のほうが多いですね。

(金子) 

先生の競技もそうですが、世界の大会に出ればジャッジはみんなが外国人ですから、いわば敵方のジャッジですね。でもその人たちから見ても、「あの選手って素敵!」と思わせる力がないと、最終的には高い点数が出ないと思います。実力が競っている時なんて、特にそうです。技術だけじゃない、その人から滲み出る人柄がジャッジや観衆を魅了するのです。

(山田) 

みどりはハートの強さと優しさが混ざった演技をするスケーターでしたし、真央は素直で自然体の愛らしい演技をする子。それってそのまま彼女たちの性格ですよ。人間性が全部スケートに出ているんですね。

(金子) 

私は選手たちが競技生活に打ち込み、世界のトップを目指す中で、素敵な女の子たちになってほしいなと思って育ててきました。技術はもちろん、挨拶もそう、礼儀もそう、プール磨きもすべてそのためなんですね。

シンクロをやるのは若い間のほんの十数年、長くても20年です。シンクロだけできればいいというのではなくて、競技生活が終わった時に、シンクロやってきてよかった、このコーチの下に習いに行ってよかったと感じてほしいと思いますね。

(山田) 

そのとおりですよ(拍手)。だって競技人生より、残りの人生のほうがずっと長いんだもの。

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(本記事は『致知』2006年4月号 特集「根を養う」より一部抜粋・再編集したものです。人間力・仕事力を高める記事が満載の『致知』、詳細はこちら!)

◇山田満知子(やまだ・まちこ)
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昭和18年愛知県生まれ。7歳でスケートを始め、35年16歳でインターハイ、国体を制覇。金城学院大学卒業後、38年20歳でプロのインストラクターになる。アルベールビル五輪銀メダルの伊藤みどり、昨年の世界ジュニア選手権優勝の浅田真央らを育てる。

金子正子(かねこ・まさこ)

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昭和19年東京都生まれ。高校でシンクロを始め、東京家政学院大を経て、42年から東京シンクロクラブコーチ。63年ソウル五輪銅メダルの小谷実可子らを指導。

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