美空ひばりが最後に歌った「川の流れのように」の意味

9歳で歌手デビューを果たし、歌手人生で世に出したヒット曲は数知れず。日本歌謡界の女王・美空ひばりさんの生き方を、小林正観さんのお話から学びます。一瞬一瞬を大切に生きたその姿勢は、皆さまの人生をよりよくするヒントになるでしょう。

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美空ひばりが最後に歌った歌

美空ひばりさんはずっと歌を歌ってきました。自分のわがままで何をしたいとはほとんど言いませんでした。こうせざるを得ない状況でやるはめになったことを、そのまま淡々と、ああだこうだ言わないでやってきただけ。

その結果として病気になって、さあ、あと少しで死ぬかもしれないという状況になったときのことです。秋元康という人が『川の流れのように』という歌詞を書いて他の歌手の歌で出す予定となっていました。

美空ひばりはその歌詞を見て、「この歌を私にちょうだい」と言いました。万感の思いを込めて「この歌を歌いたい」と思ったのです。そのときは、もう命が風前の灯火でした……。

死ぬ半年ほど前から、美空ひばりは舞台に自分の足で立つことができませんでした。だから緞帳(どんちょう)が下がっている状態のところに車いすで連れていってもらって、そこで何人もの人の手を借りて立たせてもらった。立たせてもらったら車いすは下がって、立った状態で緞帳が上がりました。

すると、歩けないはずだった美空ひばりが2時間ものステージで歩き回って歌ったのです。心臓を調べた医者が驚きました。2000㏄しか肺の中に空気が入らないのに3600㏄ぐらいの肺活量で歌っている。これは理解ができないと言いました。

息が続く。「ああ一」

と音を伸ばすためには3600㏄の肺活量が必要なのに、この人の肺には2000㏄しか空気が入らない。どうして3600㏄の空気が出てくるのかわからない。

「奇跡としか考えられない」と、その医者は言いました。

この死を間近にして美空ひばりが最後に歌った歌が「川の流れのように」です。

「あした」という日は永久に来ないのです

自分の意思で、自分のわがままで生きてきたのではない。いつの間にか知らないうちに女王に祭り上げられて、すごい人ということになったけれども、彼女は自分のやりたいことを押しとおすために人をかきわけ押しのけて女王にのし上がったのではありません。

やらされることを「はいはい」と言ってやってきたら女王と言われるようになって、歌謡界の最高峰に立っていた。

それを思い出したときに、美空ひばりは本当に万感の思いを込めて『川の流れのように』を歌ったのだと思います。

皆さんにちょっと質問します。

今日寝て起きたらいつでしょう?

今日寝て起きたら「あした」と思った人がいるかもしれませんが、今日寝て起きたら「今日」です。

「あした」という日は永久に来ない。今日の今この瞬間が私たちの目の前に存在するだけで、「あした」という日は永久に来ません。

今日の今この瞬間に目の前のこと、人、物を大事にしない人は、「あした来る人を大事にすればいいや」と思っている間に、目の前の人がいなくなってしまうのです。

「ああ、あの人を大事にしてあげればよかった」

と、その去っていった人を一生懸命おもんばかっているうちに、目の前にいた人が「じゃあね」と言って、また去っていくわけです。そういうふうに、ずっと思い出、過去を追いかけている。今日の今この瞬間だけ。

私たちはものすごく大きな広がりの時間・空間の中で生きているように勘違いしていまずけれど、私たちが生きているのは、この瞬間瞬間、この刹那刹那だけ。

だから、大事にできる人は目の前に存在する人だけ。

そして、大事なこと、人、物というのは、きのう存在したわけではなく、あした存在するわけでもなく、今目の前に存在する。そのことが自分の人生の中で最も大事なことなのです。

だから、「大事な人」はいない。すべての人が大事だとわかってくるわけです。


〈本記事は致知出版社刊『宇宙を味方にする方程式』(小林正観・著)より一部抜粋したものです〉

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◇小林正観(こばやし・せいかん)
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昭和23年東京都生まれ。中央大学法学部卒業後、旅行作家となる。学生時代より人間の潜在能力や超常現象、神秘学などを研究。著書に『宇宙を味方にする方程式』『宇宙を貫く幸せの法則』(致知出版社)など多数。

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