16期連続の増収! 本業以外には目もくれない 広島市信用組合のシンプル経営の秘密

預金と融資という本来の業務に特化し、16期連続の成長を続けている金融機関が広島市にあります。広島市信用組合。NHK「プロフェッショナル」でも注目を浴びた同組合の経営手法について紹介した山本明弘理事長のインタビュー記事の一部をご紹介します。

なぜシンプル経営にこだわり続けるのか

(──成長の要因をどのようにお考えですか。)

〈山本〉
これははっきりしています。地域金融機関本来の務めである預貸金業務、ことに融資に特化、集中してきたためです。
  
(──融資に特化。)

〈山本〉
そうです。いまほとんどの金融機関が投資信託や保険、株、各種デリバティブ(金融派生商品)などを取り扱っていますが、こういうことには私は素人だと思っているんです。だから一切手を出さない。大手の真似をするよりも本業である融資に徹していくほうが大事だし、お客様にも喜んでいただける、というのが私の信念なんですね。
 
だから私どもは、金融商品を取り扱わない分、毎日毎日お客様を30軒、40軒と回る。そしてそれを継続しながらお客様とのパイプを太くしています。
  
(──いわゆる足で稼ぐ営業ですね。)

〈山本〉
近年、多くの金融機関がこの足で稼ぐ仕事を非効率だといって切り捨ててしまいました。だからといって動かなくては預貸金は伸びない。代わりに出てきたのが早く目先の数字が上がる投資信託やデリバティブです。自分も取り残されまいと地方の小さな金融機関までもがこぞってそれに参入した。その結果、いろいろなところでトラブルや多大な損失を生んでいるのはご存じのとおりです。
 
その点、私どもは一見、非効率のように思える現場主義こそがすべてだと思って今日まで歩んできたわけです。
 
私自身のことで恐縮ですが、1月7日の新年挨拶は、その日だけで55軒のお取引先を訪問しました。
  
(──ああ、理事長自ら。)

〈山本〉
私どもの経営はとにかく機敏なフットワークとフェイス・トゥ・フェイスなんです。いまどの企業も現場主義、現場主義と言っていますが、問題は実際にそれをやるかどうかです。それには口だけじゃ駄目です。トップ自ら範を示さなくてはいけません。

答えは現場にある

(──融資を行う場合、その見極めというものも重要ですね。)

〈山本〉
そのとおりです。私どもはできるかぎり融資をして、企業の発展に役立てていただきたいと考えているわけですが、無条件にご融資するというわけではもちろんありません。成長が見込めなかったり、設備投資をしても意味がないと判断した場合などは、大変申し訳ないけれどもお断りすることもございます。
 もう一つ、注意しておかなくてはいけないのが、これからの時代の変化なんです。
  
(──どういうことですか。)

〈山本〉
例えば、人口減少や少子化はこれから一段と進みます。いま1億2800万人の人口が50年後には8000万人に限りなく近づくと推定されています。ということは、これから住宅需要はそんなに見込めなくなるんです。学校も幼稚園もスーパーも減っていく。ということは、例えばマンション経営に融資するとしても、相当気をつけておかないと不良債権を抱えてしまうことになるわけですね。
  
(──リスク管理が必要だと。)

〈山本〉
だから常に最悪のケースをシミュレーションしてリスク管理をやらなくてはいけません。いまは順調でも15年後、20年後におかしくなることは当然起こりうるわけです。その時、私どもがどれだけリスクを背負う覚悟があるのか。それを見極めた上で、ここまでのリスクであれば「よし融資しよう」と。
  
(──あえてリスクを背負う。)

〈山本〉
それでなかったら融資はできません。それに、業績など数字だけで一概に切り捨てることをせず、将来性などを十分考慮してできるだけの融資をして差し上げるのが私どもの務めでもありますから。その分、不良債権を限りなくゼロにして、内部留保を増やすことで万一に備えているんです。

 頼れる金融機関と申しますか、資金繰りに困った方に素早く融資をして「うわぁー、よかった。ありがとう」と喜んでいただく時の顔。それは私どもが仕事をする上で何よりの原動力です。 

(本記事は月刊『致知』2013年3月号 特集「生き方」の「経営に特効薬はない。現場での実践こそすべて」より一部抜粋・編集したものです。)

◇山本明弘(やまもと・あきひろ)
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昭和20年山口県生まれ。43年専修大学経済学部卒業後、広島市信用組合に入組。本店営業部長、審査部長などを経て平成7年理事に。11年常務理事、13年専務理事、16年副理事長。17年から現職。全国信用協同組合連合会会長も務める。著書に『足で稼ぐ「現場主義」経営』(金融財政事情研究会)。

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