女性の品格を磨くための「人生の心得55か条」

作家で武士道研究家として知られる石川真理子さん。厳格な武家の娘として躾を受けた
明治生まれの祖母と、12歳までともに暮らしました。明治から昭和にかけて激動の時代を逞しく生きた祖母の生き方、言葉を思い出すにつけ、戦後日本の女性が忘れてしまった「人としての心得」「女性としてのあり方」が散りばめられていることに気づいたと言います。武士の娘だった祖母の55の言葉厳しくも温かく、人生の滋味に溢れています――。

夫婦円満の秘訣

緊張と並々ならぬ覚悟で嫁いだ祖母は、自分の夫となった男性に対して少なからぬ衝撃を受けました。家業を継いだにもかかわらず、ぶらぶらと遊び歩いてばかりの放蕩息子。帰宅しないこともしばしばで、謹直な父親を見て育った祖母にとっては「こんなあるじが世の中に存在するのか」と別世界の人間を見ているような気分だったのです。

「最初は驚いてばかりだったけれど、だんだんと腹が立ってきましてね。いったい私はなんという人間に嫁いでしまったのだろうかと目の前が真っ暗になりました」結婚してみないと分からないことは、たくさんあるものです。考えてみれば結婚前は外で会うわけですから、どちらも「よそゆきの姿」、格好のいいところを見せ合っているのです。けれど、結婚後は家でくつろぐだらしない姿ばかりを目にするようになります。いやなところが目について、文句の一つも言いたくなります。

また、同じ行動でも結婚することによって受け止め方も変わってきてしまいます。金銭感覚一つとっても、結婚前は「気前のいい人」になるかもしれませんが、結婚後は「無駄遣いの多い浪費家」となるでしょう。恋人時代には「遊び上手な人」だったのが、夫となれば「無責任な遊び人」になってしまうかもしれません。結婚することによって相手に対する信頼が揺らいでしまうようなことは、案外、いくらでもあるのでしょう。

それにしても、祖母の結婚相手、つまり祖父は、お坊ちゃん育ちの明治男、まさに「放蕩息子」だったようです。「信頼してかかろう」という祖母の決意も、にわかに揺らぎだしました。しかし、あんなに喜んでいた父母を悲しませるわけにはいきません。祖母は一人悩みました。やがてふと気づいたのです。

「ああ、そうか、と思いましての。私はいつの間にか悪いところばかりを
見るようになっていたことに気がついたんですよ。夫はふらふらしていますが、ともに過ごすときにはよくいろんなことを私に語って聞かせました。夢のようなことだ、バカバカしいと思えばそれまでです。でも、この人はなにやらおもしろいことをやって生きていきたいと切望しているのだ、それは悪いことではない、むしろ楽しいことではないか、とも思えるのです。ならばこれが夫の素晴らしいところ。 私はそれを支えるべきだと思いました。すると心が少しすっきりしての。夫を穢すようなことばかり思ううち、心が澱んでいたのでしょう。結局、夫を穢すことは自分を穢すことでもあったのです」

“人は鏡”といいます。人を穢すことは、ほかでもない、自分自身を穢すことにもなります。まして夫婦という、一対の関係であれば、なおのことでしょう。

「君子は人の美を成す人の悪を成さず小人はこれに反す」
(立派な人は他人の美点を表しすすめて成し遂げさせ、他人の悪い点は成り立たぬようにするが、小人はその反対だ)

相手の良いところを見ようと努力することは、やはり大切なことでしょう。つい悪いところを見てしまいがちな夫婦であれば、意識して良いところを見て、良いように解釈するのが円満のコツであるにちがいありません。それは結果的に自分のためになるように思います。

  * *

働く女性として、妻として、母として、
それぞれの立場立場において
女性の品格を磨くための「人生の心得55か条」とは――。

※この続きは特典書籍『女子の武士道』をご一読ください。https://online.chichi.co.jp/item/1048.html

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